上 下
148 / 228
第21話

踊る阿呆に付ける薬はない1

しおりを挟む
 陛下の生誕祭だけはセナリアンも毎年自身として出席している。

 そのためグロー公爵家はセナリアンを飾り立てる!と男女問わず臨戦態勢だった。

 当のセナリアンは忙しいこともあって、お任せしますわと丸投げしてしまっていたが、濃い色派と淡い色派に分かれてしまった。

 淡い派の義母はマージナルにあなたの色ばっかりじゃつまらないわとまで言われて、濃い派はマージナルが私の妻だと言えば、私の娘よと大喧嘩、さらに本当の娘も母親に付いてしまい、父は何でも似合ってしまうからなとうっとり想像しているようだった。使用人も私はこちらだと様々な意見が出てしまい、揉めに揉めていた。

 そこへふらっと帰って来た、セナリアンがこの生地を頂いたのと出して来たのが、夜空に星が刺繍された記事であった。それを見た瞬間、皆がそれにしましょう!と謎の団結が起こった。セナリアンはよく分からないけれど、折角だからいいかと気にも留めなかった。

 という訳で、セナリアンはあの素晴らしい生地を義母と義妹とデザイナーで作った素晴らしく神々しいドレスを着ている。おかげでちょっと話し掛けるのに躊躇するレベルとなっており、マージナルはほくほくしている。

「今日も、美しいね、我が奥様は」
「あなたが言うと嫌味に聞こえるらしいわよ」
「そんなことはない!セナが一番綺麗だよ」
「はあ…」

 歓談になり、セナリアンはマージナルにそろそろと言うと、彼は挨拶回りに行き、出席の立場でもセナリアンは巡回を行うことにしている。両脇には護衛ではなく、執事風のジョンラと侍女風のファナである。ファナはセナリアンとジョンラに隠れてめちゃくちゃ食べており、ウキウキである。

 今回の一番は刻んだトマトのソースが掛かっているチキンの乗っているバケットだったようで、皿一面全て食べてしまっていたが、ファナは陛下にどれが美味しかったか教えて欲しいという任を賜っているので、怒られることは無い。ただあまりに無くなっていくので、セナリアンとジョンラは「消えた(わね)」と呟いたという。

 そんな訳でお散歩という巡回をしていると、「東の方角で男女の揉め事」との情報が入り、しかも一人はアローラだという。義妹のためももちろんだが、今日は血を浴びるようなことは出来ないため、セナリアンが受け持つこととなった。

 近付いていくと男性が四人と女性が二人が対峙しており、セナリアンは身の危険の程度は既に察知済みである。要約した情報によると夜のお相手をしろということらしい。しかも旦那だけじゃ物足りないだろう?みんなやっていることで、常識なんだぜ、可愛がってやるから来いよと恥ずかしいことを言っているらしい。

 魔力差のこともあるにも関わらず、愛人や一晩限りのお遊びなどをするものもいるのだが、国王が一夫一妻の通り、推奨されている訳でも無く、ただの浮気である。政略結婚で双方が納得して、愛人を持つというのが、まだ建設的である。

「馬鹿ね」
「ええ、阿呆ですね」
「とんちき野郎ですね」
「愚かね」
「頭に寄生虫が入り込んだんですかね」
「それは寄生虫に失礼だわ」
「本当ですね!」
「むしろ頭に何もないのでは?」
「「その通りね(ですね)」」

 さてと思っているとアローラではないご婦人が「祭事の日にあなたたち愚かだと思わないの!」「偉そうに言っているけど、本当に満足させたことがあるの?」「女は早く終わって欲しい時も演技をするのよ」「私は主人に大変満足しておりますので」と捲し立てており、三人はほうと意見を一致させた。

「ははは、強気な女を抱くのもいいだろうな。早く来いよ」

 リーダー格の男が彼女の腕を取った瞬間だった。

「ねえ、何をしているの?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お気に入りに入れていただいている皆様、誠にありがとうございます。

清書が出来ましたので、
また順次投稿させていただきます。

この次の話が長くなりそうなので、
こちらは5話くらいで終わります。

よろしくお願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。

salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。 6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。 *なろう・pixivにも掲載しています。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

何を間違った?【完結済】

maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。 彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。 今真実を聞いて⋯⋯。 愚かな私の後悔の話 ※作者の妄想の産物です 他サイトでも投稿しております

処理中です...