上 下
140 / 228
第20話

心労が絶えない兄弟7(マルフレン王国)

しおりを挟む
 セナリアンとルブラン、アガットは別の仕事が入ったので、代わってビスタ。

「この娘、フーミナはどうする気なのかしら?婿養子の愛人になるつもり?でも婚約者がいるのよね?結婚して、不貞を続ける気?」
「愛人ではあるが、愛しているのは私だから、自分が侯爵夫人のように振舞えると思っているのではありませんか?」
「じゃあ、婚約者は?」
「解消になってもいいと思っているのでしょう。彼の愛人の方が利があると。あとは、あのお嬢さんに勝ちたかった、それかその男が好きなのかもしれませんが…」
「嫌な女ですね」
「なるほどね、自己欲が強いのね」

 ルブランの言うことが信じられないのではなく、その思考が信じられない。

 そしてこちらも三日後を迎えた。

 パードルは具合が悪いとキャンセルの連絡を貰うと、やったと言わんばかりに、案の定フーミナを誘い、二人はデートに向かった。

「今日はキュリートに奪われてしまうと思っていたけど、嬉しいわ」
「奪われるなんて、あれは僕らのための存在と言っただろう?」
「そうよね、爵位が高いだけの娘。一人娘じゃなかったら、貰い手なんてないでしょう。ご両親に感謝しなきゃ」
「本当にな、まあ私たちの役に立ってくれるんだから、優しくしないとダメだぞ」
「やだー!いつもしているわよ」

 ふざけた会話をしており、とっとと部屋に行ってくれないかとげんなりしていたが、そろそろ二人きりになろうと言い出し、イチャつき始め、探偵が簡単に写真を撮れたのも頷ける。

 そして公爵家が庇って認めなかったことで、大丈夫だと思っているのか、あまり隠す様子もない。

 二人は部屋に入ると、早速乳繰り合い出し、待ちに待った展開となった。

 そして行為を始めると、パードルが果てる前に部屋にゾワっと一斉にデラサード侯爵、キュリート、マーラ、サインズ公爵夫妻、前公爵夫妻、フーミナの親であるクータ子爵夫妻が現れた。

 わざわざ連れて来たマーラには全てを見続けさせていたが、キュリートはセナリアンが見えない聞こえないように遮断していた。

 そして、婚約解消は既に成立している。

「な、何だ!」
「きゃあああああ」

 状況を分かっていないのは、パードルとフーミナだけである。さすがに行為は萎えてしまって、中断した。

「パードル、もう庇えないわ…」

 崩れ落ちたのは祖母である前公爵夫人だった。ずっと孫の情事を見させていたのだ。隔世遺伝で自分によく似たパードルを一番可愛がっていた。

 だが、いくら可愛い孫でも見たいものではなかったのだろう。

 部屋に入る頃には既に、セナリアンに強制連行させられたサインズ公爵夫妻、前公爵夫妻、クータ子爵夫妻。動くことを封じられ、姿を消した状態で、二人の情事を見せられて、ぎゃあぎゃあ叫んでいた。

「どうしてパパとママが?」
「フーミナ!お前は何てことを!」
「早く服を着なさい!」

 クータ子爵夫妻も、娘の行為を止めたくても動けず、もはや立っていられない様子で、崩れ落ちていた。積極的に行為に励む娘を見るとは思わなかったのだろう。

「クータ子爵夫妻、ご安心ください。お嬢さんはもう沢山の男性とされていますので、裸を見られることも慣れてらっしゃいますから。ねえ、そうよね?」
「何を言っているの!そんなことないわ」
「マック・ボーダー、ボリル・ジョン、タイラ・オイナ、タスク・ハンギー、ナシュ・タック、あとホーリー子爵と、カイダー商会のテウス・カイダー」
「っな、デタラメよ」
「大丈夫ですよ、ルパート・サレスク伯爵令息には、きちんと慰謝料を請求できるように進言しますので」
「そんな…」
「パードル・サインズも同様です。全員に請求出来るようにいたしますから」

 ビクッとしたマーラではあったが、バレていないと思っており、パードルとフーミナの情事もスカートを握り締めて耐えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。

salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。 6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。 *なろう・pixivにも掲載しています。

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...