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第20話
心労が絶えない兄弟1(マルフレン王国)
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マルフレン王国。サーガリア大陸のヨバス王国の右上に位置する、エメラルダ王国の友好国の一つなのだが、魔法省としても、よく問題が起きるのがこの国である。
「マルフレン王国から魅了が検出されたとのことです」
「あああ…また王と王弟の嘆く顔を見なければならないのですね。寒くなってきましたから、人肌恋しくなったのかしら」
「関係ないとも言い切れないね。しかし、なぜあの国はこんなに問題が起きるのでしょう」
以前はエメラルダ王国に助けてという連絡があったが、頻繁に魅了、洗脳、支配などといった精神系の悪質な事件が頻発するため、現在は魔法省に連絡を入れて貰うようになっている。
「はあ…でも魅了魔法ならあれが使えますね」
「ええ、ちょっと臭くはなりますけど、効果は抜群ですからね」
マルフレン王国に着くと、もう既に王・ルードと王弟・エマリオはしなしなで『助けてください、助けてください』と涙を流している。
セナリアンの見慣れた光景である。
ただ、王の嘆きも最もである。王と王弟は真面目で、すこぶる頑張っているのを知っている。なのにも関わらず、問題が起きる。
二人は既に妻がいないということで、察してあげて欲しい。
セナリアンはしなしなの兄弟を横目に、地図を広げて、国中に探索を掛けると、発生源は学園であった。それを聞くと、兄弟は学園~!!と嘆いている。
「学園、ちょっと臭くなってもいいですか」
「「へっ?」」
「魅了に香りを付けると、人が寄り付かなくなるんですよ!ふふふっ、別の国で効果は実証済みですの」
「何の香りなんでしょう」
「動物の糞の匂いのするチーズの香りです」
「「動物の糞!!」」
この兄弟は双子なんではないかというほど、声を重ねて来る。
「なぜその香りなんですか」
「えーっと、死を予感させる香りはよくないでしょう?血とか、死臭とか。でもそのチーズは売っているし、好む人には食べられている。別に悪いものではないでしょう?」
「そ、そうですね、臭いんですか」
「ええ、臭いの!発酵されているのか、薄っすらでも何だか、むせてしまうほど、近くにはいたくない香りなの。魅了魔法の特定と、掛かった者は寄り付かなければ薄れるし、周りへの注意喚起にもなる」
「なるほど、臭いのくらい我慢してもらいましょう!」
「そうだな」
セナリアンが学園に術を掛けると、少々臭くなり、発生源特定はあっさり終わったのだが、それでは終わらないのがマルフレン王国。別の問題も発生していたのだ。
「はああ…さすがマルフレン王国」
「何かありましたか」
「男性を侍らすのがお好きなお国のようで」
「えええ…そんなこと起きてるの?報告あった?なかったよね?」
「無いですよ…」
「三件、同時多発しております。二件は魅了で間違いないです」
二件は魅了を感知しているが、一件は男性を侍らしてはいるが、魅了は関係ないと思われ、ただ風紀を乱している。
「三件も!?およよよ…なぜこの国はこんなに愚かなのであろうか」
「三件…」
「儂が悪いのか、家臣が悪いのか、国土が悪いのか」
「運が悪い!」
「おぉぉ…辛いよぉ、辛いよぉ」
「兄上…私だって辛いですよぉ…」
二人は抱き合い、涙を流しており、王族がこれでいいのかと思うが、嘆きたくもなる運の悪さだ。
「魅了令嬢二人は現在、臭い匂いを漂わせて、放置しておりますが、既に人は離れて行っております」
「臭いと近付きたくなくなりますからね」
「鼻が詰まってもいない限り、効果的ですね」
「この二人は、魔法省に任せてくれますね?」
「もちろんですとも!」「煮るなり焼くなり、どうぞ」
一件目は、よくある高位貴族狙いの魅了を使った男爵令嬢。
二件目は、好きな人に振り向いて欲しくて魅了を使った子爵令嬢。
魅了が多い!ホイホイと二人も釣れたのだ。魔法省で上級犯罪者として裁かれることとなる。どうやって取得したかも掴む必要があり、同じ性質のものであるため、同一人物だろうと思っている。現在、魔法省が調査に動いている。
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お気に入りに入れていただいている皆様、誠にありがとうございます。
清書が出来ましたので、
また順次投稿させていただきます。
よろしくお願いいたします。
「マルフレン王国から魅了が検出されたとのことです」
「あああ…また王と王弟の嘆く顔を見なければならないのですね。寒くなってきましたから、人肌恋しくなったのかしら」
「関係ないとも言い切れないね。しかし、なぜあの国はこんなに問題が起きるのでしょう」
以前はエメラルダ王国に助けてという連絡があったが、頻繁に魅了、洗脳、支配などといった精神系の悪質な事件が頻発するため、現在は魔法省に連絡を入れて貰うようになっている。
「はあ…でも魅了魔法ならあれが使えますね」
「ええ、ちょっと臭くはなりますけど、効果は抜群ですからね」
マルフレン王国に着くと、もう既に王・ルードと王弟・エマリオはしなしなで『助けてください、助けてください』と涙を流している。
セナリアンの見慣れた光景である。
ただ、王の嘆きも最もである。王と王弟は真面目で、すこぶる頑張っているのを知っている。なのにも関わらず、問題が起きる。
二人は既に妻がいないということで、察してあげて欲しい。
セナリアンはしなしなの兄弟を横目に、地図を広げて、国中に探索を掛けると、発生源は学園であった。それを聞くと、兄弟は学園~!!と嘆いている。
「学園、ちょっと臭くなってもいいですか」
「「へっ?」」
「魅了に香りを付けると、人が寄り付かなくなるんですよ!ふふふっ、別の国で効果は実証済みですの」
「何の香りなんでしょう」
「動物の糞の匂いのするチーズの香りです」
「「動物の糞!!」」
この兄弟は双子なんではないかというほど、声を重ねて来る。
「なぜその香りなんですか」
「えーっと、死を予感させる香りはよくないでしょう?血とか、死臭とか。でもそのチーズは売っているし、好む人には食べられている。別に悪いものではないでしょう?」
「そ、そうですね、臭いんですか」
「ええ、臭いの!発酵されているのか、薄っすらでも何だか、むせてしまうほど、近くにはいたくない香りなの。魅了魔法の特定と、掛かった者は寄り付かなければ薄れるし、周りへの注意喚起にもなる」
「なるほど、臭いのくらい我慢してもらいましょう!」
「そうだな」
セナリアンが学園に術を掛けると、少々臭くなり、発生源特定はあっさり終わったのだが、それでは終わらないのがマルフレン王国。別の問題も発生していたのだ。
「はああ…さすがマルフレン王国」
「何かありましたか」
「男性を侍らすのがお好きなお国のようで」
「えええ…そんなこと起きてるの?報告あった?なかったよね?」
「無いですよ…」
「三件、同時多発しております。二件は魅了で間違いないです」
二件は魅了を感知しているが、一件は男性を侍らしてはいるが、魅了は関係ないと思われ、ただ風紀を乱している。
「三件も!?およよよ…なぜこの国はこんなに愚かなのであろうか」
「三件…」
「儂が悪いのか、家臣が悪いのか、国土が悪いのか」
「運が悪い!」
「おぉぉ…辛いよぉ、辛いよぉ」
「兄上…私だって辛いですよぉ…」
二人は抱き合い、涙を流しており、王族がこれでいいのかと思うが、嘆きたくもなる運の悪さだ。
「魅了令嬢二人は現在、臭い匂いを漂わせて、放置しておりますが、既に人は離れて行っております」
「臭いと近付きたくなくなりますからね」
「鼻が詰まってもいない限り、効果的ですね」
「この二人は、魔法省に任せてくれますね?」
「もちろんですとも!」「煮るなり焼くなり、どうぞ」
一件目は、よくある高位貴族狙いの魅了を使った男爵令嬢。
二件目は、好きな人に振り向いて欲しくて魅了を使った子爵令嬢。
魅了が多い!ホイホイと二人も釣れたのだ。魔法省で上級犯罪者として裁かれることとなる。どうやって取得したかも掴む必要があり、同じ性質のものであるため、同一人物だろうと思っている。現在、魔法省が調査に動いている。
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