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第19話
綻びのない国なんてない12(ノイザール王国)
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「では、色を付けてあげましょう」
セナリアンは動物の糞の匂いのチーズの香りの術を解かず、追加で魅了に色を付けた。イヴァンは絶対ピンクとか可愛い色ではないなと横で思っていた。
そもそも、チュリルには匂いを付けていることを一切言っていないのだ。
「あなたは魅了を使っていないのですね?」
「はい、私、魅了なんて持っていません」
チュリルの身体からの濃いイエローの煙のようなものがもわもわ出始めている。イヴァンはやっぱりなと思った色だった、イエローかブラウンだろうと予想していた。
魔術師長は身を乗り出して、ほうほうという顔で凝視している。
「ほら、出た」
匂いも合わさって、ますます臭く感じる。
「何これ…」
チュリルもさすがに自身から出ていることもあって、疑わざる得ない。
「それが魅了です。分かり易く色を付けました。いかがですか」
「嘘、本当に…でも光属性は大事なんです」
また濃いイエローの煙がチュリルの身体から出ている。とても分かり易い。本来なら、赤とか、青とかにすればもっと分かり易いのだが、臭そうな色を選んでいる。
「ほら、また出ている」
「どうして…私は何もしていません。本当です」
そう言うと、また濃いイエローの煙がチュリルの身体から出ており、意思を通そうとしていることがよく分かる。
「ならば、拘束ということでいいですね?」
「えっ」
「拒否したので、拘束して、魔法省の牢に入っていただきます。そこで罰を与えて、魅了を封じます」
「待ってください!国王陛下も、王太子様も困るでしょう?そうでしょう?」
「魅了は禁術だ」「私は一切困りません」
陛下も納得しており、王太子に至っては早くしてくれという表情である。だって臭いから。
「そんなっ、他に方法はないんですか?」
「無人島で暮らすなら、封じなくてもいいですよ」
イヴァンはこの臭いまま煙が出るまま無人島に放り込む気だと察した。誰かに出会っても、臭い上に煙の出る女など近付かないだろう。
「えっ、無人島…」
「魅了は人の思考を惑わせます。あなたのせいで、掛った者がいることを考えないのですか。だから自分本位だと申し上げたのです」
「そんな…私のせいで」
「そうです、国王陛下も掛かってらっしゃるのです。無意識でなければ、禁術使用で、死罪でしょうか」
「っひ」
「そのレベルなんですよ。あなたは自身の価値を失いたくないと思っているようですが、大して変わりませんよ」
「でも、光属性は…」
「魅了は若さを使っていると言われていますから、早く止めることをお勧めします」
「えっ…分かりました、お願いします」
セナリアンは手をかざし、魅了封じの術式をチュリルに行った。詠唱もしないので、あっという間である。
「はい、終わりました」
「これで大丈夫なんですね、良かった」
「光属性だけを扱えますか?」
「あっ、はい。やってみます」
チュリルは恐る恐る掌を上に向けて、発動しようとしたが、出なかった。
「やはり光属性に付随していたようですね」
「でも価値は変わらないと」
「ええ、だってあなた大した力がないもの。全属性持ちということだけが売りだったんでしょうけど、それもちまちま使う分にはいいけど、弱すぎるわ。全て使おうと考えるなら、おすすめの職種はメイドか乳母です」
「何で私が、そんな仕事に」
「立派な仕事よ!あなたが馬鹿にする立場ではないはずです」
子爵令嬢や、子爵夫人でメイドや乳母をしている者は多いはずだ。
「馬鹿にはしていません。でも私は、あの」
「私があなたの貪欲な気持ちを代弁して差し上げましょうか?あなたは今日ここに呼ばれて、王太子殿下がいたことで、婚約が決まったのだと思った。そうでしょう?」
「あり得ない…」
王太子は心底気持ち悪い、不愉快だという表情を隠さずに低い声で言った。
「―――っ、だって陛下が望んでらっしゃるのよ!光属性はなくなったけど、仕方ないことなのでしょう。分かってくれるでしょう」
セナリアンは動物の糞の匂いのチーズの香りの術を解かず、追加で魅了に色を付けた。イヴァンは絶対ピンクとか可愛い色ではないなと横で思っていた。
そもそも、チュリルには匂いを付けていることを一切言っていないのだ。
「あなたは魅了を使っていないのですね?」
「はい、私、魅了なんて持っていません」
チュリルの身体からの濃いイエローの煙のようなものがもわもわ出始めている。イヴァンはやっぱりなと思った色だった、イエローかブラウンだろうと予想していた。
魔術師長は身を乗り出して、ほうほうという顔で凝視している。
「ほら、出た」
匂いも合わさって、ますます臭く感じる。
「何これ…」
チュリルもさすがに自身から出ていることもあって、疑わざる得ない。
「それが魅了です。分かり易く色を付けました。いかがですか」
「嘘、本当に…でも光属性は大事なんです」
また濃いイエローの煙がチュリルの身体から出ている。とても分かり易い。本来なら、赤とか、青とかにすればもっと分かり易いのだが、臭そうな色を選んでいる。
「ほら、また出ている」
「どうして…私は何もしていません。本当です」
そう言うと、また濃いイエローの煙がチュリルの身体から出ており、意思を通そうとしていることがよく分かる。
「ならば、拘束ということでいいですね?」
「えっ」
「拒否したので、拘束して、魔法省の牢に入っていただきます。そこで罰を与えて、魅了を封じます」
「待ってください!国王陛下も、王太子様も困るでしょう?そうでしょう?」
「魅了は禁術だ」「私は一切困りません」
陛下も納得しており、王太子に至っては早くしてくれという表情である。だって臭いから。
「そんなっ、他に方法はないんですか?」
「無人島で暮らすなら、封じなくてもいいですよ」
イヴァンはこの臭いまま煙が出るまま無人島に放り込む気だと察した。誰かに出会っても、臭い上に煙の出る女など近付かないだろう。
「えっ、無人島…」
「魅了は人の思考を惑わせます。あなたのせいで、掛った者がいることを考えないのですか。だから自分本位だと申し上げたのです」
「そんな…私のせいで」
「そうです、国王陛下も掛かってらっしゃるのです。無意識でなければ、禁術使用で、死罪でしょうか」
「っひ」
「そのレベルなんですよ。あなたは自身の価値を失いたくないと思っているようですが、大して変わりませんよ」
「でも、光属性は…」
「魅了は若さを使っていると言われていますから、早く止めることをお勧めします」
「えっ…分かりました、お願いします」
セナリアンは手をかざし、魅了封じの術式をチュリルに行った。詠唱もしないので、あっという間である。
「はい、終わりました」
「これで大丈夫なんですね、良かった」
「光属性だけを扱えますか?」
「あっ、はい。やってみます」
チュリルは恐る恐る掌を上に向けて、発動しようとしたが、出なかった。
「やはり光属性に付随していたようですね」
「でも価値は変わらないと」
「ええ、だってあなた大した力がないもの。全属性持ちということだけが売りだったんでしょうけど、それもちまちま使う分にはいいけど、弱すぎるわ。全て使おうと考えるなら、おすすめの職種はメイドか乳母です」
「何で私が、そんな仕事に」
「立派な仕事よ!あなたが馬鹿にする立場ではないはずです」
子爵令嬢や、子爵夫人でメイドや乳母をしている者は多いはずだ。
「馬鹿にはしていません。でも私は、あの」
「私があなたの貪欲な気持ちを代弁して差し上げましょうか?あなたは今日ここに呼ばれて、王太子殿下がいたことで、婚約が決まったのだと思った。そうでしょう?」
「あり得ない…」
王太子は心底気持ち悪い、不愉快だという表情を隠さずに低い声で言った。
「―――っ、だって陛下が望んでらっしゃるのよ!光属性はなくなったけど、仕方ないことなのでしょう。分かってくれるでしょう」
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