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第19話
綻びのない国なんてない5(ノイザール王国)
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「そうでしょうか、あまりにご実家に力が無いから、嫁の力を借りるしかない。でもアトラ王国の王家には取り合って貰えず、仕方なく貴族で裕福な娘を娶ったのかしら?王女様では自分の言いなりにならないっていう理由もあるかしら?」
「いい加減になさい!」
「ええ…亡くなった王妃様の十分の一にも満たない持参金しか持って来なかったくせに?今でも偉そうな顔しているんでしょう?」
「私は国王の母親です!」
「でも元を辿れば側妃に求められたのは、あなたマンドレー・ハニックではない、そうでしょう?」
「っ、何を言ってるの!」
前王は側妃を決める際、以前、黒髪で翡翠色の瞳の女性に暗闇で助けられた、彼女が結婚や婚約をしていないのなら彼女を迎えたいと願ったのだ。
前王は幼い頃に事故で閉じ込められたことがあり、暗闇が苦手であった。
急に明かりが消え、その際に偶然居合わせた女性に手を引いてもらったそうだ。顔つきが分からなかったのは目が慣れても暗かったこと、明るくなってすぐ去ったので、目が慣れず髪色と瞳の色しか分からなかったこと、二人の女性は顔も声もよく似ていたことが原因だった。
「該当者は二人おり、あなたは自分だと言った、まあ、王家も了承したのだから、今となってはだけど。嘘つきは昔からなのね」
該当者のもう一人、本物は元側妃の姉であった。それを両親とこの妹が奪ったのである。実はこの妹はその様子を見ていたメイドを脅して聞き出しており、だからこそあの時あったことを話すことが出来たのだ。
「私よ!私が選ばれたの!」
「大きな声で、前王妃とはいえ、下品ですよ」
「っな!」
「よく言われたのではなくて?王妃様は素晴らしい方だった、側妃様は品がない、しなやかさがない、すぐ大きな声を上げると、違いますか?今でも身に付いていない」
「どうしてあなたにそこまで言われなきゃいけないのよ!」
イヴァンはよく言われていましたと言ってやりたかったが、グッと我慢した。
「選ばれていたのはお姉様です。あなたは偽物。しかも正妃には身体が丈夫なこと以外勝てない。だから、自身の立場を危惧して、息子とためという名目で、冤罪を仕掛けたのよね?」
「冤罪なんかじゃないわ!あの子は息子を殺そうとしたの!」
「証拠、出しましょうか?」
イヴァンはピクっとしたが、既に証拠も集めていたのか。父と異母弟を見るが驚いている様子はない。むしろ他の者たちだけが驚いている。
「そんなものあるわけないじゃない」
「あるんですの、心を痛めた優しい方が最期にと残してくれていたんですよ」
セナリアンはいつもの善意の第三者からだと嘘を言って、大きな水晶を出した。その中にはマンドレーがイヴァンの部屋の机の中に、紙の包みを入れている様子が映し出された。
「これは手紙よ」
イヴァンはマンドレーから手紙なんて貰ったことはない。
また場面が代わり、今度はマンドレーが誰かと話している。
『イヴァンがフィラスに王太子の座を奪われそうになっているから、殺そうとするかもしれない。だから、皆でフィラスを守って欲しいの』
『そうでしょうか?あちらは公爵家の後ろ盾もありますよ』
『私の言うことが信じられないって言うの!毒を盛るかもしれないじゃない!あの子を部屋を調べるべきよ!』
また場面が代わり、今度はマンドレーの独り言である。
『どうして皆、言うことを聞かないのよ!私は側妃じゃない!王妃なのよ!殺されそうになっていると言っていうのに、折角、毒薬を潜ませたのに。早くしないと』
『折角、お姉様を踏み付けて、側妃になって、王妃にまでなったのに!お父様もお母様も私をもっと支援しないからでしょう!』
謁見の前は、前王と現王以外は顔が引き攣り、誰も何と言えばいいのか、声を出せないという表情である。
「いい加減になさい!」
「ええ…亡くなった王妃様の十分の一にも満たない持参金しか持って来なかったくせに?今でも偉そうな顔しているんでしょう?」
「私は国王の母親です!」
「でも元を辿れば側妃に求められたのは、あなたマンドレー・ハニックではない、そうでしょう?」
「っ、何を言ってるの!」
前王は側妃を決める際、以前、黒髪で翡翠色の瞳の女性に暗闇で助けられた、彼女が結婚や婚約をしていないのなら彼女を迎えたいと願ったのだ。
前王は幼い頃に事故で閉じ込められたことがあり、暗闇が苦手であった。
急に明かりが消え、その際に偶然居合わせた女性に手を引いてもらったそうだ。顔つきが分からなかったのは目が慣れても暗かったこと、明るくなってすぐ去ったので、目が慣れず髪色と瞳の色しか分からなかったこと、二人の女性は顔も声もよく似ていたことが原因だった。
「該当者は二人おり、あなたは自分だと言った、まあ、王家も了承したのだから、今となってはだけど。嘘つきは昔からなのね」
該当者のもう一人、本物は元側妃の姉であった。それを両親とこの妹が奪ったのである。実はこの妹はその様子を見ていたメイドを脅して聞き出しており、だからこそあの時あったことを話すことが出来たのだ。
「私よ!私が選ばれたの!」
「大きな声で、前王妃とはいえ、下品ですよ」
「っな!」
「よく言われたのではなくて?王妃様は素晴らしい方だった、側妃様は品がない、しなやかさがない、すぐ大きな声を上げると、違いますか?今でも身に付いていない」
「どうしてあなたにそこまで言われなきゃいけないのよ!」
イヴァンはよく言われていましたと言ってやりたかったが、グッと我慢した。
「選ばれていたのはお姉様です。あなたは偽物。しかも正妃には身体が丈夫なこと以外勝てない。だから、自身の立場を危惧して、息子とためという名目で、冤罪を仕掛けたのよね?」
「冤罪なんかじゃないわ!あの子は息子を殺そうとしたの!」
「証拠、出しましょうか?」
イヴァンはピクっとしたが、既に証拠も集めていたのか。父と異母弟を見るが驚いている様子はない。むしろ他の者たちだけが驚いている。
「そんなものあるわけないじゃない」
「あるんですの、心を痛めた優しい方が最期にと残してくれていたんですよ」
セナリアンはいつもの善意の第三者からだと嘘を言って、大きな水晶を出した。その中にはマンドレーがイヴァンの部屋の机の中に、紙の包みを入れている様子が映し出された。
「これは手紙よ」
イヴァンはマンドレーから手紙なんて貰ったことはない。
また場面が代わり、今度はマンドレーが誰かと話している。
『イヴァンがフィラスに王太子の座を奪われそうになっているから、殺そうとするかもしれない。だから、皆でフィラスを守って欲しいの』
『そうでしょうか?あちらは公爵家の後ろ盾もありますよ』
『私の言うことが信じられないって言うの!毒を盛るかもしれないじゃない!あの子を部屋を調べるべきよ!』
また場面が代わり、今度はマンドレーの独り言である。
『どうして皆、言うことを聞かないのよ!私は側妃じゃない!王妃なのよ!殺されそうになっていると言っていうのに、折角、毒薬を潜ませたのに。早くしないと』
『折角、お姉様を踏み付けて、側妃になって、王妃にまでなったのに!お父様もお母様も私をもっと支援しないからでしょう!』
謁見の前は、前王と現王以外は顔が引き攣り、誰も何と言えばいいのか、声を出せないという表情である。
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