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第18話

彼女の友人1

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 母・ルシュベルの風邪がうつった父・ミミス、結局二人して風邪を引いたルージエ侯爵夫妻。熱は下がったものの、ノエルの出席するパーティーに代わりにと頼まれたのは、身体が空いていたセナリアン。

 急遽ではあったが、着ていないドレスなら山ほど持っている。どのドレスにしようかしらと探していると、丁度やって来た義母・ルラーラが任せなさいと仕上げてくれたので、助かりますと着飾って貰うことにした。

 マージナルには急遽だったのだが、私も行きたいと駄々をこねられたが、今日は遅くまで仕事となっている上にそもそも誘われていない。

 セナリアンはノエルと主催であるネラック侯爵夫妻に挨拶した。ネラック侯爵夫妻とはあの、怪しい香水を使っていたカンザベナ男爵令嬢に惑わされたご子息・マイルズ、婚約は継続中の様で、ルービッシュ・ミードルも婚約者として参加している。

 ノエルは友人のところに行くというので、お酒と何か食べようと向かっていると、見知った顔を見付けた。

「リクア!!来てたの?嬉しい!会うのは久しぶりね!」
「セナ様!何で?」
「それがルージエの両親がね、風邪引いちゃって。ノエルのお供なの」
「あらま、大丈夫なの?」
「もう熱は下がっているんだけど、顔色が悪いのを連れて来るのもどうかでしょう」

 セナリアンの学友リクア。アドノと結婚して、現在は時期フランクリン子爵夫人で、一児の母でもある。話し言葉は友人であるが、名前だけは一目が気になるからと、セナ様と呼んでいる間柄である。セナリアンの正体もリクアもアドノも知っており、同級生で知っているのはこの二人だけである。

「で、渋い顔してどうしたの?アドノは?」

 周りを見渡してもアドノがいない。

 聞いてくれるかと切り出したのは、実はアドノの妹・サーラの婚約者が伯爵令嬢の取り巻きと化しているというのだ。それでアドノはサーラとダンスを踊り、リクアは伯爵令嬢の付近をじっと伺っていたそうだ。

 どの子なの?と聞くと、リクアはピンクのドレスに茶色い髪で茶色い瞳の令嬢だと言い、令息に囲まれているため目立っていた。

「えっ、あの子なの?」
「そう!」
「随分なんというか、素朴なのね…」

 セナリアンは人を見かけで判断する類ではないが、常に護衛と友人という男性を侍らしていると聞いていたので、驚いた。艶めかしく豊満な令嬢を想定していたのに、何ともよくいる少女であった。

「仕掛けがあるの」
「仕掛け?魔術は使っていないようだけど?」
「俺が守ってやるって、庇護欲をそそるんですって。しな垂れかかったり、瞳を潤ませて上目遣いで、うるうると」
「あんな病気でもなさそうな大きな子に?」

 セナリアンにとって庇護欲は子どもと動物と、病気や不遇な目に遭った大人と限定されている。痩せてもいないし、ちゃんと自分の足で立てる令嬢と呼べる、年齢の子がしたところで威力があるとは思えなかった。

 リクアが言うにはミディアーナ・トーパス伯爵令嬢は、一人っ子で、家で家族や使用人にお姫様のように育てられて、令嬢の友人はいないため苦言を呈す者がおらず、使用人も目立つような美人は置かないことで、自分を引き立たせているらしい。邸で何をしているんだ?という話である。

「不貞は…しているけど、サーラ嬢の相手はあの後ろの子爵家の彼よね?」
「えっ、うん。不貞、してるの?」
「彼はしてないけど、横の二人と彼の隣はしてるわね」
「最低っ!婚約者がいるはずよ」
「知り合いだったら教えて差しあげたら?」
「凄い力ね」
「互いが側にいればだけどね。あの子、相当身持ちが悪いわね」

 セナリアンは関係を持った相手が側にいれば、魔力の関係なのか、繋がりを視ることが出来る。
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