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第17話
閑話 ガーデンパーティー1
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また別の日、セナリアンは義妹・アローラの嫁いだワンスア侯爵邸のガーデンパーティーに参加していた。忙しかったら来なくていいですからねと、アローラには念押しされたが、出来ればアローラのためにも、そしてある人を誘って貰っていたために、参加できて良かったと思っている。
男性陣は欠席のため、義母・ルラーラと共にやって来て、母・ルシュベルと遭遇すると、あれとあれとあれが美味しかったから食べなさいと言われて、母のおすすめ料理を取ってもらっていた。
「セナ様」
「まあ、キャリル様」
「この前はありがとうございました」
「お手紙いただきましたわ」
「直接も言いたかったのです」
「ふふふ、そういうことでしたのね」
「キャリル、早く紹介して頂戴」
キャリルはカルバン・ロゾートの妻で、セナリアンが何度か商品をマージナルを通じて、カルバンに渡した縁で親しくなっていた。隣には麗しい女性が地団太を踏みそうな勢いで立っていた。
「こちら私の義姉で、ポーリットと言います。是非、セナ様にお会いしたいと」
「義姉ということはサバス・ロゾート様の奥様ですね」
「ええ、お会いしたかったのです!キャリルにパイを頂いて、もう虜になってしまいまして。先程も、あちらにあるのを頂きました」
「まあ、嬉しいですわ。美味しいでしょう?止まらないでしょう?あそこにおります、ルージエの母が大のお気に入りでして」
ルシュベルは名前が聞こえたようで、ウィンクしており、二人も会釈した。
「そうなのですね!もう本当に美味しくって。この前なんて、子どもたちと食べようと楽しみに買って置いたのですが、うちのそのサバスが気付いたら、ボリボリ食べてましてね」
「まあ、サバス様が?」
「サバスは大きいでしょう?もう気付いた時にはパイが豆粒のように口にひょいひょい運ばれて」
サバスとカルバン兄弟は剣術に長けていることは同じだが、見目は全く似ておらず、サバスは大男という名がぴったりの大変逞しい男性である。普通のお皿があんなに小さかったかしら?普通のフォークが子ども用だったからしら?と錯覚を起こすタイプの人種だ。
「ふふふ、お義姉様ね、その姿に発狂したんですって!」
「あら」
「だって、子どもたちと楽しみにしていたのに、あのサバスが…」
ポーリットはドレスをぎゅっと握りしめており、思い出して怒りがぶり返したのであろう。
「お義兄様、慌てて買いに行ったんですって」
「それはまあ、ありがとうございますでいいのかしら?」
「もうすっかりサバスがお得意様ですわ」
「ふふふ、有難いですわ」
「それで、キャリルから期間限定のお味が出ると聞きまして」
キャリルからのお礼状の返事にまた期間限定の味が出ることを記していた。
「ええ、期間限定の味を発売しますの。ちょうど明後日から栗、りんご、桃味の詰め合わせが出ます」
「キャー美味しそう!サバスに買いに行かせないと」
「明後日は私も参りますので、取り置きして置きますわよ」
「いいのですか?では、どうしようかしら、二つ、いえサバスの乱を案じて三つお願いしてもいいかしら」
「ふふふ、もちろんですわ。サバス様にお渡ししますわ」
「ありがとうございます」
「こちらこそ」
「あと、クリームも素晴らしいですわ。軽い手触りなのに、肌が生き返るようで」
キャリルに渡したのは保湿クリームである。乳白色がクリームの基本であったが、セナリアンはどうも伸びが悪く、べたつくのが気に食わなかったのだ。
他のクリームとの差別化のために透明にし、保湿力はそのままに軽い仕上がりになっている。香りも選べるようにし、甘いピーチ、さっぱりレモン、そして香りなしの三種類。後は得意の季節限定を出すつもりである。キャリルには三種類入ったセットを三つほど、カルバンに渡してもらっていた。
人気が出れば、容器を安価なものに変えて、お手頃価格の商品も出す予定である。
「ありがとうございます。ご紹介くださったんですね」
「もちろんですわ、お義姉様はこの調子なので、どんどん人気になりますわ」
「香りも素晴らしいのよ。ほんのりで」
「嬉しいですわ、無香も良いですが、気持ちも大事ですからね」
「ええ、そうなのですが、実はですね、サバスがあんな図体で、肘がカサカサするというものですから、塗ってみたらと言ったのですよ。そうしたら、よりにもよってピーチを選んでおりましてね」
「お義姉様、想像がつくのですが…」
キャリルはポーリットを怪訝な目で見つめている。
「ええ、そうなの!サバスからほんのり甘い香りがするのよ!無性にイラっとしましたわ。せめてレモンなら良かったのにと」
「ふふふ、それはそれは。サバス様からピーチの香り、ふふふ」
それは家族は良いが、周りが反応に困ってしまう香りであろう。
「セナリアン様のご主人ならお似合いでしょうけど、うちのサバスですから」
「カルバンも駄目でしょうね」
「そうね、カルバンも…う~ん、駄目ね」
「ふふふっ、でもマージナルも駄目ですわ、何だかくどいでしょう」
「「ああ~」」
セナリアンは興味のあるものや必要なものを手広く作っている。それをグロー公爵家は美容品、ルージエ侯爵家は食品、コルロンド子爵家は薬品と見合ったところで売り捌いている。
それを信用できる方にのみ渡して、口コミで広がっている。そもそも薬品は売り込みはほとんど必要なく、コルロンド家というだけで信用に値する。そしてグロー家とルージエ家の女性陣は十分な宣伝になる。
あのパイはルシュベルが久しぶりに新しいお菓子が食べたいと言うので、大食いのファナに試作品を食べさせまくって作ったものである。パイなのでボロボロと砕けないように周りは固めに焼き、ご婦人が大口を開けず一口で食べれる絶妙な大きさで、ジャムやクリームを挟んだものだ。
ルージエ家には専用のキッチンがあり、ルシュベルに試食させると、とびっきりの笑顔を見せたので、これは売れると思ったのだ。
本日もアローラのごり押しかもしれないが、デザートに並んでいる。
男性陣は欠席のため、義母・ルラーラと共にやって来て、母・ルシュベルと遭遇すると、あれとあれとあれが美味しかったから食べなさいと言われて、母のおすすめ料理を取ってもらっていた。
「セナ様」
「まあ、キャリル様」
「この前はありがとうございました」
「お手紙いただきましたわ」
「直接も言いたかったのです」
「ふふふ、そういうことでしたのね」
「キャリル、早く紹介して頂戴」
キャリルはカルバン・ロゾートの妻で、セナリアンが何度か商品をマージナルを通じて、カルバンに渡した縁で親しくなっていた。隣には麗しい女性が地団太を踏みそうな勢いで立っていた。
「こちら私の義姉で、ポーリットと言います。是非、セナ様にお会いしたいと」
「義姉ということはサバス・ロゾート様の奥様ですね」
「ええ、お会いしたかったのです!キャリルにパイを頂いて、もう虜になってしまいまして。先程も、あちらにあるのを頂きました」
「まあ、嬉しいですわ。美味しいでしょう?止まらないでしょう?あそこにおります、ルージエの母が大のお気に入りでして」
ルシュベルは名前が聞こえたようで、ウィンクしており、二人も会釈した。
「そうなのですね!もう本当に美味しくって。この前なんて、子どもたちと食べようと楽しみに買って置いたのですが、うちのそのサバスが気付いたら、ボリボリ食べてましてね」
「まあ、サバス様が?」
「サバスは大きいでしょう?もう気付いた時にはパイが豆粒のように口にひょいひょい運ばれて」
サバスとカルバン兄弟は剣術に長けていることは同じだが、見目は全く似ておらず、サバスは大男という名がぴったりの大変逞しい男性である。普通のお皿があんなに小さかったかしら?普通のフォークが子ども用だったからしら?と錯覚を起こすタイプの人種だ。
「ふふふ、お義姉様ね、その姿に発狂したんですって!」
「あら」
「だって、子どもたちと楽しみにしていたのに、あのサバスが…」
ポーリットはドレスをぎゅっと握りしめており、思い出して怒りがぶり返したのであろう。
「お義兄様、慌てて買いに行ったんですって」
「それはまあ、ありがとうございますでいいのかしら?」
「もうすっかりサバスがお得意様ですわ」
「ふふふ、有難いですわ」
「それで、キャリルから期間限定のお味が出ると聞きまして」
キャリルからのお礼状の返事にまた期間限定の味が出ることを記していた。
「ええ、期間限定の味を発売しますの。ちょうど明後日から栗、りんご、桃味の詰め合わせが出ます」
「キャー美味しそう!サバスに買いに行かせないと」
「明後日は私も参りますので、取り置きして置きますわよ」
「いいのですか?では、どうしようかしら、二つ、いえサバスの乱を案じて三つお願いしてもいいかしら」
「ふふふ、もちろんですわ。サバス様にお渡ししますわ」
「ありがとうございます」
「こちらこそ」
「あと、クリームも素晴らしいですわ。軽い手触りなのに、肌が生き返るようで」
キャリルに渡したのは保湿クリームである。乳白色がクリームの基本であったが、セナリアンはどうも伸びが悪く、べたつくのが気に食わなかったのだ。
他のクリームとの差別化のために透明にし、保湿力はそのままに軽い仕上がりになっている。香りも選べるようにし、甘いピーチ、さっぱりレモン、そして香りなしの三種類。後は得意の季節限定を出すつもりである。キャリルには三種類入ったセットを三つほど、カルバンに渡してもらっていた。
人気が出れば、容器を安価なものに変えて、お手頃価格の商品も出す予定である。
「ありがとうございます。ご紹介くださったんですね」
「もちろんですわ、お義姉様はこの調子なので、どんどん人気になりますわ」
「香りも素晴らしいのよ。ほんのりで」
「嬉しいですわ、無香も良いですが、気持ちも大事ですからね」
「ええ、そうなのですが、実はですね、サバスがあんな図体で、肘がカサカサするというものですから、塗ってみたらと言ったのですよ。そうしたら、よりにもよってピーチを選んでおりましてね」
「お義姉様、想像がつくのですが…」
キャリルはポーリットを怪訝な目で見つめている。
「ええ、そうなの!サバスからほんのり甘い香りがするのよ!無性にイラっとしましたわ。せめてレモンなら良かったのにと」
「ふふふ、それはそれは。サバス様からピーチの香り、ふふふ」
それは家族は良いが、周りが反応に困ってしまう香りであろう。
「セナリアン様のご主人ならお似合いでしょうけど、うちのサバスですから」
「カルバンも駄目でしょうね」
「そうね、カルバンも…う~ん、駄目ね」
「ふふふっ、でもマージナルも駄目ですわ、何だかくどいでしょう」
「「ああ~」」
セナリアンは興味のあるものや必要なものを手広く作っている。それをグロー公爵家は美容品、ルージエ侯爵家は食品、コルロンド子爵家は薬品と見合ったところで売り捌いている。
それを信用できる方にのみ渡して、口コミで広がっている。そもそも薬品は売り込みはほとんど必要なく、コルロンド家というだけで信用に値する。そしてグロー家とルージエ家の女性陣は十分な宣伝になる。
あのパイはルシュベルが久しぶりに新しいお菓子が食べたいと言うので、大食いのファナに試作品を食べさせまくって作ったものである。パイなのでボロボロと砕けないように周りは固めに焼き、ご婦人が大口を開けず一口で食べれる絶妙な大きさで、ジャムやクリームを挟んだものだ。
ルージエ家には専用のキッチンがあり、ルシュベルに試食させると、とびっきりの笑顔を見せたので、これは売れると思ったのだ。
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