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第17話

姉の子ども2

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 セナリアンの言った通り、一年経っても、二年経っても妊娠せず、しかもその間にセナリアンは第一子・ルセルを出産したことも重なり、リリアンネはセナリアンと同等ではあるが、セナリアンは魔術師になっているだけだと思っている。

 ゆえにセナリアンは産めたのに、私には問題があるのかとヒステリックにもなった。母・ルシュベルが宥めて、コントロールも学ばせはしたが、なかなか思うような結果にはならなかった。セナリアンにも再度相談したが、今さら魔術師の訓練は無理だろうと、殿下の魔力に慣れて来るはずだから、時と運に任せるかしないと告げた。さすがに子を授かる力はセナリアンにはない。

 そしてギリギリ三年目にしてやっと授かり、セナリアンが思っていた状態に陥った、リスルートの手引きで、リリアンネが眠っている時に赴いて、リリアンネの魔力だけでは足りないので、自分の魔力を足しながら魔力の循環をした。

 しかも自分も妊娠していることが分かり、リスルートはさすがに身重なのにすまないとは思ったが、セナリアンにやってもらうしかない。果物がいいと聞いたので、セナリアンに貢いでいた。

 何も知らないリリアンネは循環させた翌朝は、調子がいいなどと言うので、さすがに出産が終わり安定したら、必ずコントロールをきちんと学ぶように約束をさせた。

 ただリリアンネ、細かいことに集中できない質で、才能がなかった。ルージエ家もリリアンネは魔術に幼い頃から興味がなく、セナリアンに全振りしていたので、子どもも一人生まれたので、付け焼刃では無理なのかと思うことにし、やらせることは止めなかったが、期待はやめることにした。

 そしてセナリアンは両親にもう一つ忠告していた。

「殿下とリリアンネの結婚を、前にひとつ言っておきます」
「えっ、何かな」「な~に?」
「私は、リリアンネが愚かなことをすれば、情はないとお思いくださいませ」
「…ん、分かっている」「ええ、分かっているわ」

 真面目な話だったと二人は背筋を伸ばした。何か起きた場合、セナリアンは陛下、もしくは正しい方に付く。いくら姉でも遠慮することはできない、それがセナリアンの背負った宿命なのだ。

「ただ、裁かなければならない場合になったとして、お父様とお母様はお好きにしてください。寄り添うも良し、切り捨てるも良しです」
「分かったわ、私も支持します。セナはセナの思うようにしなさい。やっぱり告げるつもりはないのね?」

 ルシュベルも普段は穏やかではあるが、さすがコルロンドの血筋である。

「ええ、私が先に死ねば教えてもらって構いません」
「どう思うのかしらね、ショックかしら」
「バカにしていたのかしらと思うかもしれませんね」
「えっ、そんなこと思わないよ」

 父は慌てているが、母は何やら考え込む姿勢になってしまっている。

「前にあったんですよ、邸にも私の刺繍が飾ってあるでしょう?作り過ぎた私も悪いけど、悔しい、あの子もみんなも私の刺繍を見てバカにしていたんだわって。わざわざ覗いたわけではなかったのですけど、偶然聞いてしまって。私も頑張ろうという向上心とは言い難いものでした、姉はそういう思考なのだと思ったのです」
「なるほどね、リリはそういうところはあるわね。それでもセナは怒ったり、嫌ったりはしなかったわね」
「ええ、だって可愛いものだもの。刺繍はすっかり諦めてしまったのは、何だか悲しかったけど」

 リリアンネをただの姉のままでいさせることもあるが、先祖返りと知れば、貴族令嬢、そして王太子妃として、自分のために都合よく使おうとするだろうことも否定できない。そうなった時、離れていくのは、リリアンネの周りとなってしまう。ならば知らない方が懸命であるとセナリアンは考えている。
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