105 / 228
第17話
姉の子ども1
しおりを挟む
王宮の庭でリリアンネとベビーバスケットに眠る、王太子夫妻の第一子であるアルマリート、セナリアンとルセルがお茶会をしている。ジュジュはお留守番だ。
姉妹水入らずというところだが、リスルートがカルバンと共に顔を出した。なぜマージナルではないのか、それはうるさいからである。なので、今日のお茶会も内緒であり、マージナルにはちょっと出て来ると言ってある。
リスルートはセナリアンと互いに表向きの顔で挨拶をし、ルセルを大きくなったなと抱き上げていた。血の繋がりこそないが、友人と妻の妹の可愛い甥っ子である。顔はマージナルにそっくりだが、髪色がセナリアンなので、柔らかい印象になる。
「ルセルは髪の色がいいな」
「みんなね、そうほめるよ?」
「そうなのか、それは悪かったな」
「ううん、おかあさまとおなじでうれしいよ。でもね、このまえ、おじいちゃまとおおきいおじいちゃまとおおきいおばあちゃまが、わたしだよってけんかちてた」
「おかあさまのおじいちゃまかな?」
「うん、みんなおなじなのにね、わたしだ、わたしだって。おばあちゃまがおかあさまがうまれたときも、おなじことしてたんだっておしえてくれてね。すっごく、おもちろかったよ」
「ふふふ、そうか、みんな同じようなものだものな」
「うん!」
ルセルの可愛さに笑みが零れ、我が子もこのくらいになることを想像していた。第一王子であるアルマリートはよくやく出来た子どもである。
時はリリアンネの婚約が発表される前に戻る。
リスルート殿下とリリアンネの婚約に関して、両陛下、殿下、両親を集めて、水晶の判定は問題ないが、セナリアンは一つ問題があると告げた。
「ハッキリ言いますが、殿下とリリアンネは子どもが授かりにくい。二人の魔力に関する相性が悪いのです」
「…そうなのか」
さすがに王妃も殿下も驚いてしまい、言葉を失っている。
「王族には大問題でしょう。でもここまで見れる者はいない、証明できませんからね。覚悟はしてもらうために話すのだと思ってください。器に対してリリアンネの魔力は少ないのです。そこに魔力の多い殿下の魔力が入ると、器に対してリリアンネでは扱ったことのない魔力量となり、うまく作用せず、慣れるまで子どもが出来にくい。おそらく二年から三年は掛かるだろうというのが、私の見立てです」
婚約者について、相談された際にリリアンネを推さなかったのはこれが大きい。ただ理由を決まってもいないのに、話す必要はなかった。
「他の候補者でも相性の悪い方もいるかもしれません、たまたま姉だったから分かったというところです」
王家も言って欲しかったなどと言えるはずがない、言う必要がない。
「私も止めさせたいわけではありません。子も出来ないわけではない、でも心無いことを言う人もいるでしょう。ですので、周りがフォローしてあげて欲しいのです。そして無事に授かれば、生まれるまで手助けすることをお約束します」
「あい、分かった」「私もフォローしますわ」
「リスルート、いいな?」
「はい、私もリリアンネに気にしないようにフォローいたします」
「コルロンドの血筋が多少守ってくれるとは思います。どうか、姉をよろしくお願いします」
コルロンドの血筋であるため、文句を言うことはシャーロット、カサブランカへの血筋に文句を言うことになる。両親はセナリアンと同時に両陛下に頭を下げた。
セナリアンは事前に両親には話をしており、特に母親にリリアンネのフォローをするように頼んだが、王家にも賛同してもらわなくてはならなかった。
両親も驚きはしたが、黙って置いていいことではないことは分かっていた。
「何も方法はないのか?」
「コントロールくらいでしょうか。ただ、私が言うと角が立つので、リル伯母様から妊娠・出産のためにも、念のためコントロールをするように言ってもらったのですが、私は魔術師ではないから関係ないと言ったみたいで」
「ああ…」「難しいのかしら」
「私はそう視ています。この世は奇跡もあるけど、当たり前なんてないのに」
「私からもちゃんと話すわ」「私もだ」
「ええ、変わることを期待しますわ」
姉妹水入らずというところだが、リスルートがカルバンと共に顔を出した。なぜマージナルではないのか、それはうるさいからである。なので、今日のお茶会も内緒であり、マージナルにはちょっと出て来ると言ってある。
リスルートはセナリアンと互いに表向きの顔で挨拶をし、ルセルを大きくなったなと抱き上げていた。血の繋がりこそないが、友人と妻の妹の可愛い甥っ子である。顔はマージナルにそっくりだが、髪色がセナリアンなので、柔らかい印象になる。
「ルセルは髪の色がいいな」
「みんなね、そうほめるよ?」
「そうなのか、それは悪かったな」
「ううん、おかあさまとおなじでうれしいよ。でもね、このまえ、おじいちゃまとおおきいおじいちゃまとおおきいおばあちゃまが、わたしだよってけんかちてた」
「おかあさまのおじいちゃまかな?」
「うん、みんなおなじなのにね、わたしだ、わたしだって。おばあちゃまがおかあさまがうまれたときも、おなじことしてたんだっておしえてくれてね。すっごく、おもちろかったよ」
「ふふふ、そうか、みんな同じようなものだものな」
「うん!」
ルセルの可愛さに笑みが零れ、我が子もこのくらいになることを想像していた。第一王子であるアルマリートはよくやく出来た子どもである。
時はリリアンネの婚約が発表される前に戻る。
リスルート殿下とリリアンネの婚約に関して、両陛下、殿下、両親を集めて、水晶の判定は問題ないが、セナリアンは一つ問題があると告げた。
「ハッキリ言いますが、殿下とリリアンネは子どもが授かりにくい。二人の魔力に関する相性が悪いのです」
「…そうなのか」
さすがに王妃も殿下も驚いてしまい、言葉を失っている。
「王族には大問題でしょう。でもここまで見れる者はいない、証明できませんからね。覚悟はしてもらうために話すのだと思ってください。器に対してリリアンネの魔力は少ないのです。そこに魔力の多い殿下の魔力が入ると、器に対してリリアンネでは扱ったことのない魔力量となり、うまく作用せず、慣れるまで子どもが出来にくい。おそらく二年から三年は掛かるだろうというのが、私の見立てです」
婚約者について、相談された際にリリアンネを推さなかったのはこれが大きい。ただ理由を決まってもいないのに、話す必要はなかった。
「他の候補者でも相性の悪い方もいるかもしれません、たまたま姉だったから分かったというところです」
王家も言って欲しかったなどと言えるはずがない、言う必要がない。
「私も止めさせたいわけではありません。子も出来ないわけではない、でも心無いことを言う人もいるでしょう。ですので、周りがフォローしてあげて欲しいのです。そして無事に授かれば、生まれるまで手助けすることをお約束します」
「あい、分かった」「私もフォローしますわ」
「リスルート、いいな?」
「はい、私もリリアンネに気にしないようにフォローいたします」
「コルロンドの血筋が多少守ってくれるとは思います。どうか、姉をよろしくお願いします」
コルロンドの血筋であるため、文句を言うことはシャーロット、カサブランカへの血筋に文句を言うことになる。両親はセナリアンと同時に両陛下に頭を下げた。
セナリアンは事前に両親には話をしており、特に母親にリリアンネのフォローをするように頼んだが、王家にも賛同してもらわなくてはならなかった。
両親も驚きはしたが、黙って置いていいことではないことは分かっていた。
「何も方法はないのか?」
「コントロールくらいでしょうか。ただ、私が言うと角が立つので、リル伯母様から妊娠・出産のためにも、念のためコントロールをするように言ってもらったのですが、私は魔術師ではないから関係ないと言ったみたいで」
「ああ…」「難しいのかしら」
「私はそう視ています。この世は奇跡もあるけど、当たり前なんてないのに」
「私からもちゃんと話すわ」「私もだ」
「ええ、変わることを期待しますわ」
290
お気に入りに追加
1,518
あなたにおすすめの小説
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。
salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。
6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。
*なろう・pixivにも掲載しています。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる