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第13話

聞こえない悲しき罪5

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 マースリとジョアンナは、ミッシュに再会を果たした。ミッシュは孤児院で問題もなく、すくすくと育っていた。ジョアンナはミッシュ、ミッシュと呼んで、泣きながら抱き締めていた。

 スアリは泣くこともなく、キョトンとした顔で、セナリアンに抱かれていた。同じ父親を持っている子ども。きっと二人はこのことを覚えていないだろう。知らされない限り、知ること事もないだろう。

 そしてマースリの父である、ハーバリア子爵は犯人と思われる者が既に亡くなっており、息子の責任でもあるため、ミッシュの今後ためにも、公にすることを望まず、共犯者も見付からなかったため、入れ替え事件は犯人死亡で処理されることとなった。スアリを任せることにも同意した。

 トラント男爵家にはジスアが亡くなったこと、子どもがいることを伝えたが、父親と兄は亡骸も子どもも引き取れないと、迷惑なはしたない娘(妹)だと拒絶した。事件のことを知ればもっと罵ったであろうが、わざわざ伝えることはしなかった。母親だけは何か言いたそうな顔であったが、ずっと黙っており、おそらく発言権がないのだろうと思ったそうだ。

 スアリはセナリアンの仲間であるアガット・ウィンスレットが引き取ることとなった。セナリアンは孤児や魔術師を保護したり、必要あれば引き取っており、そのためにアガットに領地を持たない男爵位を陛下から賜っている。

 アガットの妻であるローザが調査中の時点で、引き取りたいと言っており、二人は既に子育てを終えている夫婦で、元々は二人ともコルロンドの魔術師であったが、今は娘のハーティーがコルロンドで魔術師をしている。

 そして、ジョアンナは私に出来るのはこのくらいなのだけれどと、スアリの服やあのベビーバスケット、使っていた全ての物と、養育費にと一括でお金を用意してくれた。ミッシュにはスアリの物を使わせたくない、もう関わるなということも含まれているのだろう。それでもスアリにとって、これが最初で最後の父親との繋がりになる、有難く貰うこととした。

 マースリは両親の元で再教育中で、今後のこともジョアンナ次第のようだ。

 領地の邸でお疲れ様を兼ねて、皆でケーキを食べている魔術師たち。今回動いていたワトン、ビスター、ファナ、ルブラン、アガットとローザ夫妻。他に部屋を持っている者もいるが、全員邸に部屋がある。

 外観はルージエ領地で使われていなかった邸であるが、中は共同住まいのような作りに改装されている。入ると右が皆で食事ができる部屋、左に応接室がある。そして後はセナリアンが籠っている執務室や、客室、個別の部屋は鍵付き、キッチン・お風呂・トイレ付である。

 始めは住まわせる理由は、身を守るためでもあったのだが、結婚しようが、恋人ができようが、出て行くものはいない。

 アガットだけは男爵を賜っているので、横に小ぶりな家を建てたのだが、近頃は資料室状態である。

 ローザはこの場におらず、スアリの面倒を看るのに大忙しのようだ。スアリは連れて来た夜に熱を出したこと以外は問題なく、貴族らしく母親が付きっ切りではなく、乳母が交代で面倒を看ていたことも大きいのだろう。

「子どもを連れて離縁すると思ったのだけど、意外だったわ」
「それがちょっと気になって調べたんですよ」

 言い出したのはルブラン、隣人に話を聞いたのも彼である。作家としての顔も持っており、男女の機微に詳しく、人間観察・人間模様を見ることが趣味である。

 セナリアンの偏った物語の出どころの一つは彼である。
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