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第13話

聞こえない悲しき罪7

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 渋々、洗浄魔法できれいにしたファナは、既に次のケーキを食べている。

「私はすり替えられた衝撃はあるだろうけど、八ヶ月育てた子どもを血が繋がっていないという理由で、見向きもしなくなるのが不思議だったわ。夫と別の女の子っていうのが耐えられなかったのかしらね?まあ、あの家に置くことは出来なかったから、良かったのだけど」
「この子も私の子に違いないわと言って引き取って、虐待するような人間じゃなくて良かったと思いましょうか」
「あとはジョアンナがミッシュを愛せるかですかね?」
「そうだな」

 ファナが言うと説得力がある、実の子ですら愛せない親がいる。あれだけ抱きしめていたのだから、愛してくれると信じるが、様子を見に行ってみようと思った。

 後日、おそらく心配してあるだろう、話を聞いたジスアの元隣人に、ルブランと共にジスアのことを伝えに行くことにした。口止めはしたが、下手に誰かに話されていたら、ややこしいことになりかねない。

「ジスアは見付かったの?」

 隣人の名前はキャリー・バーグソン。

「ああ、彼女の方が一枚上手だったようね」
「え?」
「ご存知だったんですね、さすが役者さん。芸名って言うのだったかしら、教えていただけますか」
「役者!?」
「ジスア嬢のお墓のある場所をお教えしますよ」
「っ!!…申し訳ありませんでした」

 キャリーは慌てて椅子を立ち上がり、深々と頭を下げた。

「お座りください。あなたはほとんど嘘は言っていないでしょう?ただ話さなかっただけ。大丈夫です、事件は犯人死亡で終わっています」
「スアリは無事なんでしょうか」
「ええ、無事に育っています」
「よ、よかった…公になったということなんですね」
「正確には子爵家が望まなかったので、公にはなりません。ですので、あなたには知る権利があるだろうと、口止めもしようかとも思っておりました」
「私から話すことはありません、お約束します。スアリが無事なら、知っていることは全てお話しします」
「あなたは私にヒントを与えていたんですね…やられました」
「すみません!」

 座ったままで何度も頭を下げている、随分この間と印象が違う。

「入れ替えのことも、彼女がどうなったかもご存知なんですね?」
「おそらくですが。でも私が話した八ヶ月くらい前にやって来たこと、聞かれたことは事実です」
「ただ、子どもを連れていたと」
「はい、一人で来たと言うのは嘘でした。嘘を付きました」
「子どもをどこかに預けたのかと思っていました、私も焦っていたんでしょうね」

 ルブランも話を聞きながら、気持ちが急いていたのは事実だった。

「突然やって来て、スアリは五日前に生まれたばかりだと言い、驚いて部屋に入れました。アンバース領で一人で産んで、そのまま来たと言い、あの人に一目会って欲しいと、産後ということもあってか、不安定な気がして、でも私はその日、舞台があったので、あっ、芸名はアンキャリーと言います」
「えっ、名前を聞いたことがあります」
「あっ、ありがとうございます。この前、聞きに来られた時は、慌ててしまって、今稽古をしているような役で喋ってしまって、これが普段の私です」
「さすが役者さんだ」

 アンキャリーは高飛車な役で評価された役者であった。でもジスアと親しくしていたということも、今の姿なら納得がいく。

「それで、ジスアには部屋で身体を休めるように言い、私は劇場に行きました。でも戻るとやっぱり帰ることにしたと書置きがあって、彼女もスアリもいませんでした。私がジスアに会ったのはそれが最期でした。側にいてやれば良かったと、思いました…それから数日して手紙が届きました」

 キャリーは戸棚から一枚の封筒を取り出し、セナリアンに差し出した。
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