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第13話

聞こえない悲しき罪3

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 その間にもセナリアンは、ジョアンナの縁から潰し作業を行っており、縁が視えるとはいえ、これがどの縁というのは分からない。血の繋がりのある親族であったり、関係を持った相手だったりする場合もある。

 子どもの場合は縁がまだ少なく、見付けるのは大人に比べて容易い。そして縁ある者が側にいる場合は強く縁が視えるため、すぐに分かるが、ミッシュが側にいないことは明らかであった。ジスアの実家も、引っ越したというアンバース領にジョアンナの繋がりはなく、シュザルト領に当たった。

「シュザルト辺りに孤児院はありませんか」

 戻って来たクーリットと陛下とマージナルは、年頃の男児を書類から分ける作業を行っていた。

「あります!孤児院に八ヶ月前に産んで間がない男児が預けられています」
「行って参ります!クーリット殿、先触れを。あと医院に連絡して置いてください。ハーバリアにも先触れを」
「はい!」
「セナ、私も何か出来ることはないか…」

 マージナルはさすがに付いて行けないことは分かっているので、何もできることがなくなり、居たたまれない気持ちになった。

「では身元不明の遺体で、自殺の可能性が高い者。まずシュザルト領周辺から探してもらえる?」
「自殺…」
「おそらく、そうじゃないかと思うの」
「すぐに資料を集めます!」
「モルガン様、お願いします」

 セナリアンは転移し、クーリットは再び、資料を取りに行き、マージナルは陛下と二人きりとなった。陛下にとっては息子の側近という立ち位置もあり、よく顔を合わせる間柄ではあるが、二人きりは初めてである。

「儂が言うのもあれだが、凄いであろう?」
「っはい」
「子が生きていることだけでも良かった…あとは母親がどこに行ったのか」
「はい、自殺まで分かるのですか」
「セナ曰くだが、縁の切れ方で、何となくらしい」

 孤児院にはジョアンナに抱かれていた子と、瞳の色は違ったが、同じ髪色の子が預けられていた。スアリという名で、ジスアの肖像写真を見せると同じ人物だと言い、病気でしばらく入院しなければならない、必ず迎えに来るからとしばらく預かって欲しいと、書類を取りに行った院長が席を外した隙にいなくなっていたそうだ。

 間違いなくマースリとジョアンナの子であった。

 そして、残された三人はシュザルト領の隣の領地で、一部白骨化した遺体が見付かり、自殺を見たわけではいが、橋の上に女性がいるのを見たという数人の目撃者の証言があり、ジスアの年齢・風貌が一致した。

 ミッシュを医院に預け、これからについて四人は沈黙した。

「追加報告で、ジスアが一度だけ一人で近くに来たからと、隣人に会いに来たそうです。八ヶ月前くらいだったそうです。子どもはどうしていたのか分かりませんが、ジスアは王都にいた。そして、マースリは訪ねてくることはあったか聞いていたそうです。正直に私が知る限りはないと返事をしたそうですが…」
「待っていたのかもしれんな」
「ええ、子どもを連れて、ただ邸に会いに行ったのかもしれません。さて、ハーバリアの尋問に参りましょうか」
「私も行く」
「構いませんが、にやにやしてはなりませんよ!」
「す、すまない。頭では分かっているのだが、一緒に働いているようで嬉しくて。着いたらちゃんとするから」
「それならいいですけど」

 転移でも来れたが、近くなので車に揺られてハーバリア子爵邸に到着した。マージナルは陛下に一任されて説明に来た魔術師・エムだと紹介し、二人と対面に座った。エムはエメラルダで魔術師として動く際の名前である。

 スアリはジョアンナの横で、ベビーバスケットで眠っている。

「単刀直入に申し上げます。その子はマースリ・ハーバリア様とジスア・トラント様の子です。スアリと言います」
「なな何を言っているの?ジスアって誰?」
「失礼じゃないか!」

 マースリは唾を飛ばして身を乗り出し、ジョアンナはどういうことかと、スアリとマースリを交互に見ている。本当に何も知らなかったようだ。
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