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第11話

我が子可愛さ、我が身可愛さ6

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 マージナルはセナリアンに向けて、何やらもじもじしたり、目を反らしたり、鋭い目つきをしたり様子がおかしい。

「セナがその美形に会ったんだよな?」
「ええ、術を掛けたのでもう誰かは分かりませんけどね」

 他の者が調べたように話していたが、実際はファナと二人で、イシュバン公国まで、イリクス・コモーランに会いに行っていた。

 ごちゃごちゃ言うなら、勝手に貰おうと思っていたが、あなたの子どもかもしれないから、血が欲しいと言うと、あっさりくれたのだ。そして男の子だと知ると、一切興味がなくなったようだ。

「口説かれなかった?」
「口説かれてましたよ―――――!」
「やっぱり!」
「それでさっき、口を出したのですね」
「セナ様、分かっていなかったんですか?」

 ファナは美形に嫉妬する美形だと思いながら聞いていたのだ。

「自分も造形がいいと言われているから、対抗心でも燃やしているのかと思って」
「そんな訳ないじゃないか!ファナ嬢、大丈夫だったんだよな?」
「セナ様に触るなんて絶対無理に決まってますから、ご心配なく。美しい君とは呼んでましたけど」
「何だと!」
「ファナも可愛い蕾って呼ばれてたじゃない!」
「うわぁ!思い出させないでくださいよ!気持ち悪かった!」
「本当にね…窓に愛人がへばりついていたわよね」

 セナリアンとファナはコモーラン邸から帰る際に、艶めかしい姿で、窓に張り付く女性たちを思い出してゾッとした。

「子どもの年齢と夜会の時期を聞いた時に、留学中だったイリクス・コモーランのことを思い出したの。あれは上手で、女性なら誰にでも手を出すと聞いておりましたから。魔力も少ないですし、放っておいてもいいかなと思っていたんですけど、まさか子どもまでこさえていたとは」
「知り合いだったのか」
「いいえ、情報だけです。息子から辿り着いて、やっぱりと思ったんです。実は同じパーティーにいて、マージナルが薬でも盛られて嵌められたのかとも考えていたのだけど、考え過ぎだったようです」
「そんな奴はいなかったはずだ」

 同級生のパーティーだったので、イリクス・コモーランが入り込むことは出来なかっただろう。

「コリーナの記憶が曖昧だったのは、事実のようです。イリクスとは避妊薬を使っていたんでしょうね、元夫の子どもだと思っていたが、違うとなると相手はマージナルしかいないと思った」
「セナちゃんが言っていた、美しい私を抱かないわけがないと思ったのも?」
「ええ、そのように思っておりました」
「それは聞こえるの?」
「視えるという方が近いかもしれません、心眼と呼ぶものです。心配せずとも、普段は使いません。互いに気持ちの良いものではありませんし、でも今日は特別です。嫉妬や願望程度ならいいですが、悪意を持っているとも限りませんでしたから。互いの子どものためにも、暴挙に出るようなことがあれば、止めるつもりでした」

 常時視ていたのではないが、現状に不満を持っていること、美しい私を抱かなかったわけがないことは、強く出ていた。

「私はいくら聞いて貰ってもいいよ!」
「遠慮します、碌なことがないことは十分知っておりますので」
「私に偽りはない」
「隠し子騒動起こしておいて、何言ってるの!」

 母から三度目の脳天を殴られることとなった。そして留学から戻ったアローラにも同じように殴られた。
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