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第11話
我が子可愛さ、我が身可愛さ1
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幸せな花弁が舞っているのではないかというほどの、歓びのグロー公爵家。
そこへマージナル宛てに、同級生だったコリーナ・ハウンズ伯爵令嬢から手紙が届き、彼女はマック・ケリンド伯爵子息に嫁いだはずだと思っていた。そこには産んだ息子はあなたの子だったので、一度お会いしたいと書かれていた。
確かに彼女とは同級生のパーティーで酒を飲み過ぎ、案内された客室で眠った翌朝、同じベットに眠っていたことがあった。裸でもなければ、抱き合っていたわけでもなく、ただ本当に眠っていただけである。当時、マージナルはリリアンネと婚約中となっており、コリーナもマックと婚約していて、互いに関係を持った記憶もなく、このことはなかったことにしようと話したはずだ。
セナリアンが妊娠中にこんなことになるとはどうしたらいいのかと頭を悩ませた。意を決して両親に相談すると、怒号を聞いた後、母に脳天を勢いよく殴られた。
「バカ息子!セナちゃんが妊娠中に」
「とはいっても、浮気をしたわけではありません」
「そんなものしたら、あなたなんてポイよ、ポイ」
「そうだ、お前なんてポイポイだ」
元々、セナリアン贔屓だった両親だが、孫ができると分かって、先祖返りだと知って、益々磨きがかかり、バカ息子にまでなってしまった。アローラがいてもポイが増えるだけだ。
「黙って片付けることも出来るけど、きっとお見通しだから、セナちゃんに鑑定してもらうのが一番じゃない?」
「私の子だったら…セナに辛い思いをさせるのが」
「でも互いに記憶が無いのよね?そんなことってあるかしら?」
「差出人がハウンズになっていましたから、離縁されたんでしょう」
「あら、そうなの?」
「それこそ親子鑑定をしたんじゃないか?ケリンド伯爵子息の子ではなかった」
「その可能性が高いわね」
「なら既に私の子だと分かっているのでしょうか」
「それこそ、セナちゃんに聞いてみないと。親子鑑定の詳しいことは分からないわ」
「嫌われたらどうしよう」
「きちんと説明して、謝りなさい。その子どもは鑑定してからの話ね」
三日後に子どもを連れて話し合いを行おうと、コリーナ・ハウンズに手紙を出し、当日を迎えた。コリーナに、手を繋いだ二歳くらいの男児、そして両親と、御付きの男性がやって来た。
「ご無沙汰しております」
「ああ、久しぶりだな」
客間に通すと、そこには両親とセナリアンが既に待っていた。
「両親、そして妻・セナリアンも後ろで控えさせていただきます」
「よろしくお願いします」
コリーナは美しいブロンドの髪を持つ、清楚で美しい令嬢であった。男児はコリーナの色でよく似ており、髪も瞳の色も顔立ちもマック・ケリンドにも似ていないが、マージナルにも似ていなかった。
「息子のアイサック・ハウンズです」
「アイサックでしゅ」
アイサックはぺこりと頭を下げた。両親は黙って、側に座った。
「息子さんの前で話をするのはよく無いでしょうから、お母上に別室で見ていてもらいますか」
「いえ、息子も真実を知る方がいいと思います」
「…分かりました。息子さんはマック・ケリンドの子どもでは無かったということですね」
「はい、マージナル様の子としか考えられませんの」
マージナルはコリーナとは名前を呼ぶような親しい関係でもないが、現在は指摘するのも面倒であった。
「離縁されたと?」
「はい、親子鑑定というものをしまして。それでマック様の子ではないと分かったのです」
「でも私とハウンズ伯爵令嬢が関係を持った記憶も無いですよね」
「それはそうなのですが、あの時しかないと思いますの。私も驚きまして、このように訪ねさせていただいた次第です」
「では、鑑定をしてもらうということでよろしいでしょうか」
「はい、こちら鑑定士を連れて来ております」
後ろにいた御付きだと思われた男性は、ハウンズ伯爵がロッシという鑑定士だと紹介した。マージナルは両親と茶会のように座っているセナリアンを見たが、優雅にお茶をすすり、父はこれ美味しいよと菓子を勧めている。
鑑定士は用紙を出して、針でそれぞれの指から血を付けるように言い、最後にアイザックにの血ともに手を乗せさせると、何やら術を唱え始めて、しばらくすると文字が浮かんだ。
そこにはアイザック・ハウンズ、父マージナル・グロー、母コリーナ・ハウンズと記されていた。
「やっぱりマージナル様の子だったのですわ!見て下さい!」
「コリーナ、奥様もいるのだから、そんなにはしゃいではいけない」
「そうでしたわ、ごめんなさい」
そこへマージナル宛てに、同級生だったコリーナ・ハウンズ伯爵令嬢から手紙が届き、彼女はマック・ケリンド伯爵子息に嫁いだはずだと思っていた。そこには産んだ息子はあなたの子だったので、一度お会いしたいと書かれていた。
確かに彼女とは同級生のパーティーで酒を飲み過ぎ、案内された客室で眠った翌朝、同じベットに眠っていたことがあった。裸でもなければ、抱き合っていたわけでもなく、ただ本当に眠っていただけである。当時、マージナルはリリアンネと婚約中となっており、コリーナもマックと婚約していて、互いに関係を持った記憶もなく、このことはなかったことにしようと話したはずだ。
セナリアンが妊娠中にこんなことになるとはどうしたらいいのかと頭を悩ませた。意を決して両親に相談すると、怒号を聞いた後、母に脳天を勢いよく殴られた。
「バカ息子!セナちゃんが妊娠中に」
「とはいっても、浮気をしたわけではありません」
「そんなものしたら、あなたなんてポイよ、ポイ」
「そうだ、お前なんてポイポイだ」
元々、セナリアン贔屓だった両親だが、孫ができると分かって、先祖返りだと知って、益々磨きがかかり、バカ息子にまでなってしまった。アローラがいてもポイが増えるだけだ。
「黙って片付けることも出来るけど、きっとお見通しだから、セナちゃんに鑑定してもらうのが一番じゃない?」
「私の子だったら…セナに辛い思いをさせるのが」
「でも互いに記憶が無いのよね?そんなことってあるかしら?」
「差出人がハウンズになっていましたから、離縁されたんでしょう」
「あら、そうなの?」
「それこそ親子鑑定をしたんじゃないか?ケリンド伯爵子息の子ではなかった」
「その可能性が高いわね」
「なら既に私の子だと分かっているのでしょうか」
「それこそ、セナちゃんに聞いてみないと。親子鑑定の詳しいことは分からないわ」
「嫌われたらどうしよう」
「きちんと説明して、謝りなさい。その子どもは鑑定してからの話ね」
三日後に子どもを連れて話し合いを行おうと、コリーナ・ハウンズに手紙を出し、当日を迎えた。コリーナに、手を繋いだ二歳くらいの男児、そして両親と、御付きの男性がやって来た。
「ご無沙汰しております」
「ああ、久しぶりだな」
客間に通すと、そこには両親とセナリアンが既に待っていた。
「両親、そして妻・セナリアンも後ろで控えさせていただきます」
「よろしくお願いします」
コリーナは美しいブロンドの髪を持つ、清楚で美しい令嬢であった。男児はコリーナの色でよく似ており、髪も瞳の色も顔立ちもマック・ケリンドにも似ていないが、マージナルにも似ていなかった。
「息子のアイサック・ハウンズです」
「アイサックでしゅ」
アイサックはぺこりと頭を下げた。両親は黙って、側に座った。
「息子さんの前で話をするのはよく無いでしょうから、お母上に別室で見ていてもらいますか」
「いえ、息子も真実を知る方がいいと思います」
「…分かりました。息子さんはマック・ケリンドの子どもでは無かったということですね」
「はい、マージナル様の子としか考えられませんの」
マージナルはコリーナとは名前を呼ぶような親しい関係でもないが、現在は指摘するのも面倒であった。
「離縁されたと?」
「はい、親子鑑定というものをしまして。それでマック様の子ではないと分かったのです」
「でも私とハウンズ伯爵令嬢が関係を持った記憶も無いですよね」
「それはそうなのですが、あの時しかないと思いますの。私も驚きまして、このように訪ねさせていただいた次第です」
「では、鑑定をしてもらうということでよろしいでしょうか」
「はい、こちら鑑定士を連れて来ております」
後ろにいた御付きだと思われた男性は、ハウンズ伯爵がロッシという鑑定士だと紹介した。マージナルは両親と茶会のように座っているセナリアンを見たが、優雅にお茶をすすり、父はこれ美味しいよと菓子を勧めている。
鑑定士は用紙を出して、針でそれぞれの指から血を付けるように言い、最後にアイザックにの血ともに手を乗せさせると、何やら術を唱え始めて、しばらくすると文字が浮かんだ。
そこにはアイザック・ハウンズ、父マージナル・グロー、母コリーナ・ハウンズと記されていた。
「やっぱりマージナル様の子だったのですわ!見て下さい!」
「コリーナ、奥様もいるのだから、そんなにはしゃいではいけない」
「そうでしたわ、ごめんなさい」
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