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第10話
彼女の使命4
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翌日、グロー公爵家別邸。昼食が終わるとセナリアンは話があると人払いをし、二人きりになったマージナルはドキドキ半分と、ウキウキする気持ちを抑えていた。セナリアンは防音の術を掛け、人差し指の指先を光らせた。
「これから話すことは機密事項です」
「なんだ?何があっても離縁はしない」
「ええ、もう諦めつつあります」
「本当か!やった!」
マージナルは子どものようにサムズアップしている。
「私はシャーロット・マクレガーの先祖返りです。同等の力を持っています」
「えっ?ん?」
「これは機密事項で王家と、主に陛下の密偵としても動いております。お互いに忠誠を誓い、国のために動いております。あとは友好国の隠密も引き受けたりもしています、後は色々制裁を加えたりですね、まあ私、誰よりも忙しいんです」
「ん?」
「賢いあなたでも追いつかないのでしょうね、簡単に言えばあなたの妻はイレギュラーな存在だということです」
「私は敬意を払わなくてはいけないのか」
「まあ立場的にはそうですね、陛下と同等と力はあります。いくらあなたが殿下の側近でも、私があなたを見たくないから、どこかにやってって言えば、仕方ないなとあなたはポイとされるくらいは」
正直、ポイしてもらいたいことは何度もあったが、でも不確実な特性もある。まあ、もう仕方ないと諦め、妊娠を解禁すると、相性の良さを発揮して、あっという間に授かることとなった。
セナリアンも様々な妊娠を見て来たが、自身では初めてなので、様子を見ながら、騒がれるのは目に見えているので、誰にも言わず、初体験を楽しみ、実はワインもアルコールを魔術で除去して飲んでいた。
「でも私の妻なのだよね?」
「不本意ですがね」
「だったら、もっと早く言ってくれれば良かったではないか!セナのことは何でも知りたい」
ぷんぷんとでも言いたげに、頬を膨らませている。
「離縁するつもりだったのに、言う必要があるとお思いで?」
「私はしないと言った!」
≪子どもか?何だか口調も非常に子どもっぽい、こんなだったか?≫
「このことはルージエ家、私の前の先祖返りのカサブランカの生家であるコルロンド家。王家は国王陛下、王妃様、前国王陛下、リスルート殿下。ライトラン殿下は留学から戻ってからですかね?」
ライトラン殿下は留学中のリスルートの二つ年下の弟である。エメラルダは王太子だけが王族に残って、他は出て行かなければならないわけではないので、他の選択肢も含めて、各国に留学中である。
「そして、モルガン公爵夫妻、前王弟ミシェル・ハウソーラ侯爵夫妻、王弟ルビアス公爵夫妻、アイリッシュ、暗部の者が知っております。後は友好国のトップと、私の信頼に当たる者たちですね。リリアンネには知らせる気はありませんが、いずれはノエルには知らせます。知っている者とは先祖返りについて話すことが出来ます」
「夫には知らせていけないのか」
「いいえ、私の判断です。これで全て繋がるのではありませんか」
マージナルがよく見るセナリアンは、本や書類で埋もれながら、酒を飲んでいる姿である。マージナルも最初は何なんだと思ったが、魔術の資料だと言われれば、そうかとしか言いようがない。
「領地にいたのも?」
「ええ、こちらで留守にすると色々面倒でしょう?」
「王家の夜会や行事も?」
「ええ、出席者とは別のところにいる方が多いですわね。交流会が成功したのは誰のおかげだとお思いで?なのにあなたは面倒事を増やしてくれましたね?」
「知っていたのか!」
「解決したのは私ですわ。あの王女をちょいちょいと」
「すまなかった、でも断ったのはちゃんと私の意志だよ」
別にそこは疑っていない。それよりも茶番に付き合うのが面倒だっただけである。
「まあ、そのようなことをしているので、あなたの大好きなパーティーはほぼ参加出来ませんし、瞬時の判断が楽ですので。別人の振りをしていることもあります」
「別に好きではない!セナとパーティーに行きたかっただけだ!待てよ、別人と言うことは、私とも会ったことがあるのか」
「ありますよ」
「いつだ?」
「さあ?だいたい蝶々をはべらしてらっしゃるだけでしょう?最近は仲間が一応、教えてはくれるのですよ。虫に囲まれておりますって」
「いいのか?」
「ええ、あなたが害す人間なら仕留めるのに、こんなに簡単なことはありませんしね。ふふふ」
「私より強いのか?」
「ええ、間違いなく。私より強い者に会ってみたいと申しませんでしたか?」
「じょ、じょ、じょ」
「じょ?」
「冗談かと思ったんだ。あの賭けをしていたら?」
「離縁、出来ましたのにね?」
にんまりという顔をして、わざとらしく微笑んでいる。マージナルがやると言った時点で、勝敗も離縁も決まっていたのだ。
「これから話すことは機密事項です」
「なんだ?何があっても離縁はしない」
「ええ、もう諦めつつあります」
「本当か!やった!」
マージナルは子どものようにサムズアップしている。
「私はシャーロット・マクレガーの先祖返りです。同等の力を持っています」
「えっ?ん?」
「これは機密事項で王家と、主に陛下の密偵としても動いております。お互いに忠誠を誓い、国のために動いております。あとは友好国の隠密も引き受けたりもしています、後は色々制裁を加えたりですね、まあ私、誰よりも忙しいんです」
「ん?」
「賢いあなたでも追いつかないのでしょうね、簡単に言えばあなたの妻はイレギュラーな存在だということです」
「私は敬意を払わなくてはいけないのか」
「まあ立場的にはそうですね、陛下と同等と力はあります。いくらあなたが殿下の側近でも、私があなたを見たくないから、どこかにやってって言えば、仕方ないなとあなたはポイとされるくらいは」
正直、ポイしてもらいたいことは何度もあったが、でも不確実な特性もある。まあ、もう仕方ないと諦め、妊娠を解禁すると、相性の良さを発揮して、あっという間に授かることとなった。
セナリアンも様々な妊娠を見て来たが、自身では初めてなので、様子を見ながら、騒がれるのは目に見えているので、誰にも言わず、初体験を楽しみ、実はワインもアルコールを魔術で除去して飲んでいた。
「でも私の妻なのだよね?」
「不本意ですがね」
「だったら、もっと早く言ってくれれば良かったではないか!セナのことは何でも知りたい」
ぷんぷんとでも言いたげに、頬を膨らませている。
「離縁するつもりだったのに、言う必要があるとお思いで?」
「私はしないと言った!」
≪子どもか?何だか口調も非常に子どもっぽい、こんなだったか?≫
「このことはルージエ家、私の前の先祖返りのカサブランカの生家であるコルロンド家。王家は国王陛下、王妃様、前国王陛下、リスルート殿下。ライトラン殿下は留学から戻ってからですかね?」
ライトラン殿下は留学中のリスルートの二つ年下の弟である。エメラルダは王太子だけが王族に残って、他は出て行かなければならないわけではないので、他の選択肢も含めて、各国に留学中である。
「そして、モルガン公爵夫妻、前王弟ミシェル・ハウソーラ侯爵夫妻、王弟ルビアス公爵夫妻、アイリッシュ、暗部の者が知っております。後は友好国のトップと、私の信頼に当たる者たちですね。リリアンネには知らせる気はありませんが、いずれはノエルには知らせます。知っている者とは先祖返りについて話すことが出来ます」
「夫には知らせていけないのか」
「いいえ、私の判断です。これで全て繋がるのではありませんか」
マージナルがよく見るセナリアンは、本や書類で埋もれながら、酒を飲んでいる姿である。マージナルも最初は何なんだと思ったが、魔術の資料だと言われれば、そうかとしか言いようがない。
「領地にいたのも?」
「ええ、こちらで留守にすると色々面倒でしょう?」
「王家の夜会や行事も?」
「ええ、出席者とは別のところにいる方が多いですわね。交流会が成功したのは誰のおかげだとお思いで?なのにあなたは面倒事を増やしてくれましたね?」
「知っていたのか!」
「解決したのは私ですわ。あの王女をちょいちょいと」
「すまなかった、でも断ったのはちゃんと私の意志だよ」
別にそこは疑っていない。それよりも茶番に付き合うのが面倒だっただけである。
「まあ、そのようなことをしているので、あなたの大好きなパーティーはほぼ参加出来ませんし、瞬時の判断が楽ですので。別人の振りをしていることもあります」
「別に好きではない!セナとパーティーに行きたかっただけだ!待てよ、別人と言うことは、私とも会ったことがあるのか」
「ありますよ」
「いつだ?」
「さあ?だいたい蝶々をはべらしてらっしゃるだけでしょう?最近は仲間が一応、教えてはくれるのですよ。虫に囲まれておりますって」
「いいのか?」
「ええ、あなたが害す人間なら仕留めるのに、こんなに簡単なことはありませんしね。ふふふ」
「私より強いのか?」
「ええ、間違いなく。私より強い者に会ってみたいと申しませんでしたか?」
「じょ、じょ、じょ」
「じょ?」
「冗談かと思ったんだ。あの賭けをしていたら?」
「離縁、出来ましたのにね?」
にんまりという顔をして、わざとらしく微笑んでいる。マージナルがやると言った時点で、勝敗も離縁も決まっていたのだ。
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