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第10話
彼女の使命3
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「魔力過多症とは違うのですか」
「全く違うとは言い切れませんが、魔力過多は自身に症状が出るそうですが、持っているけど、母体も胎児も互いの魔力が使えるわけではないですから。容赦ない言い方をするようですが、溺れて亡くなったと考えるのが、一番合っていると思います」
互いに魔力が多いことから魔力過多症について考えたことはあったが、ササラに症状が出ることはなかったため、育ちにくい母体なのではないかと、クーリットもそんなことはないと否定しながら、考えたこともあった。
「そうでしたか…私たちはこれからどうすればいいのですか」
「私が坊ちゃんの息ができるように母体の魔力を吸い取ります」
「「吸い取る?」」
セナリアンはやって見せましょうと、ササラに触れていいかと許可を得て、腹部に両手を当てて、少し力が抜けるような感覚があると思うが問題ないと告げ、あっさりと魔力を吸い取り、このくらいかなと手を離した。
「こうやって安定させます。普段魔力は使いますか」
「生活魔法と呼ぶものくらいです。使わない方がいいですか?」
「いえ、その程度なら問題ありません。いずれ混じり合って安定しますので、それまでは多くは使わないでください。もし使う必要がある場合は連絡をください」
「もちろんです。使うこともないと思います」
「なら二週間に一度行えば、問題ないと思います」
「お忙しいのに申し訳ないですが、お願いできますか。お礼は何でもさせていただきます」
「お礼はそうですね、その都度、ここでお茶とお菓子を頂けますか。子どもにはおやつも必要なんですよ?」
大人と話している錯覚を覚えるが、目の前の令嬢はソファに座れば、足も届かない六歳である。おやつもお昼寝も必要だ。食べているクッキーも大き過ぎたのか口に収まり切っていない。
「そんなことでは」
「いいのです、クーリット殿と私の仲ではありませんか」
「ありがとうございます、とびきり美味しいものを用意しておきます」
「私からもありがとうございます、本当に本当にぃぃぃ」
「折角、先祖返りがいるのですから、当たり前のことをするまでです。魔力を己でコントロールするということも出来ますが、妊娠中に分からない状態でやると危険ですので、絶対にやらないでください」
「っはい!やりません」
魔力を毎日、同じ量にコントロールするのは、魔力が多いが、それに対してあまり使うことのない者が行う方法である。現在は計測器もあるが、魔術師は体感でコントロールする。
「この出産が終わったら、そうですね、我が母でもいいのですが…教えるのが下手ですから…確か、王妃様とは親しいですよね?」
母・ルシュベルも同様に魔力量が多く、コルロンドで鍛えられている優れた人物である。しかし、教えるとなると非常に下手なのだ、ああしてこうして、こうやってなどと、とても曖昧で分かりづらい教え方になる。ジョンラも心の中であの方は駄目だと激しく同意している。
「はい、良くしていただいています」
「でしたら、魔石を王妃様に教えていただくのがよろしいかと思います。魔石はいくらあっても困りませんから。コントロール出来るようになれば、次の妊娠は吸い取る必要はないかもしれません」
「なるほど、だから王妃様は問題なかったのですね」
「ええ、魔術師は経験で自分の魔力が分かりますが、王妃様も魔術師ではありませんが、経験を重ねてらっしゃいますから、今度頼んでおきます」
マリアンヌ王妃も元々魔力が多い、ゆえに幼少期から石に魔力を注いでコントロールしてきた人物であった。二人の王子をなんなく出産したのも、妊娠中も変わらず行っていたからである。
「何から何までありがとうございます…ううう」
ササラも多い方ではあったが、日常生活で使う程度で、今までも問題もなく、日々コントロールするほどではなかったのだ。そんな令嬢は多い。
それからセナリアンは二週間に一度、目立ってはいけないと、時には妊婦仲間の母も連れ、モルガン公爵家で魔力を吸い取り、お茶をして帰って行き、ようやく待望の子どもが生まれることとなった。それがシューリアンである。
名前は言わずもがな、二人はどうにしてもセナリアンにあやかった名前にしたかったのだ。シューリアンにも誰とは言っていないが、ある人に助けてもらって、生まれたのだと話してある。
そして出産後は王妃様にコントロールを学び始めたが、第二子は年子だったので、クーリットはセナリアンに口にはされなかったが、早くないかと言う目で見られて、平謝りすることとなった。
第二子はさすがにまだ慣れていないので、セナリアンが吸い取りを行い、次の第三子は計画性を持って年が開いたため、セナリアンも念のため確認はしたが、コントロールすることで産むことも出来た。
モルガン公爵には夫妻の部屋の隠された場所に、セナリアンの肖像画や写真がいくつもある。ルージエ侯爵に頼んで(お酒を渡して)、頂いたものである。二人はその肖像画や写真を見ながら、お酒を飲むことが一番の喜びとなっていることはセナリアンは知らない。
「全く違うとは言い切れませんが、魔力過多は自身に症状が出るそうですが、持っているけど、母体も胎児も互いの魔力が使えるわけではないですから。容赦ない言い方をするようですが、溺れて亡くなったと考えるのが、一番合っていると思います」
互いに魔力が多いことから魔力過多症について考えたことはあったが、ササラに症状が出ることはなかったため、育ちにくい母体なのではないかと、クーリットもそんなことはないと否定しながら、考えたこともあった。
「そうでしたか…私たちはこれからどうすればいいのですか」
「私が坊ちゃんの息ができるように母体の魔力を吸い取ります」
「「吸い取る?」」
セナリアンはやって見せましょうと、ササラに触れていいかと許可を得て、腹部に両手を当てて、少し力が抜けるような感覚があると思うが問題ないと告げ、あっさりと魔力を吸い取り、このくらいかなと手を離した。
「こうやって安定させます。普段魔力は使いますか」
「生活魔法と呼ぶものくらいです。使わない方がいいですか?」
「いえ、その程度なら問題ありません。いずれ混じり合って安定しますので、それまでは多くは使わないでください。もし使う必要がある場合は連絡をください」
「もちろんです。使うこともないと思います」
「なら二週間に一度行えば、問題ないと思います」
「お忙しいのに申し訳ないですが、お願いできますか。お礼は何でもさせていただきます」
「お礼はそうですね、その都度、ここでお茶とお菓子を頂けますか。子どもにはおやつも必要なんですよ?」
大人と話している錯覚を覚えるが、目の前の令嬢はソファに座れば、足も届かない六歳である。おやつもお昼寝も必要だ。食べているクッキーも大き過ぎたのか口に収まり切っていない。
「そんなことでは」
「いいのです、クーリット殿と私の仲ではありませんか」
「ありがとうございます、とびきり美味しいものを用意しておきます」
「私からもありがとうございます、本当に本当にぃぃぃ」
「折角、先祖返りがいるのですから、当たり前のことをするまでです。魔力を己でコントロールするということも出来ますが、妊娠中に分からない状態でやると危険ですので、絶対にやらないでください」
「っはい!やりません」
魔力を毎日、同じ量にコントロールするのは、魔力が多いが、それに対してあまり使うことのない者が行う方法である。現在は計測器もあるが、魔術師は体感でコントロールする。
「この出産が終わったら、そうですね、我が母でもいいのですが…教えるのが下手ですから…確か、王妃様とは親しいですよね?」
母・ルシュベルも同様に魔力量が多く、コルロンドで鍛えられている優れた人物である。しかし、教えるとなると非常に下手なのだ、ああしてこうして、こうやってなどと、とても曖昧で分かりづらい教え方になる。ジョンラも心の中であの方は駄目だと激しく同意している。
「はい、良くしていただいています」
「でしたら、魔石を王妃様に教えていただくのがよろしいかと思います。魔石はいくらあっても困りませんから。コントロール出来るようになれば、次の妊娠は吸い取る必要はないかもしれません」
「なるほど、だから王妃様は問題なかったのですね」
「ええ、魔術師は経験で自分の魔力が分かりますが、王妃様も魔術師ではありませんが、経験を重ねてらっしゃいますから、今度頼んでおきます」
マリアンヌ王妃も元々魔力が多い、ゆえに幼少期から石に魔力を注いでコントロールしてきた人物であった。二人の王子をなんなく出産したのも、妊娠中も変わらず行っていたからである。
「何から何までありがとうございます…ううう」
ササラも多い方ではあったが、日常生活で使う程度で、今までも問題もなく、日々コントロールするほどではなかったのだ。そんな令嬢は多い。
それからセナリアンは二週間に一度、目立ってはいけないと、時には妊婦仲間の母も連れ、モルガン公爵家で魔力を吸い取り、お茶をして帰って行き、ようやく待望の子どもが生まれることとなった。それがシューリアンである。
名前は言わずもがな、二人はどうにしてもセナリアンにあやかった名前にしたかったのだ。シューリアンにも誰とは言っていないが、ある人に助けてもらって、生まれたのだと話してある。
そして出産後は王妃様にコントロールを学び始めたが、第二子は年子だったので、クーリットはセナリアンに口にはされなかったが、早くないかと言う目で見られて、平謝りすることとなった。
第二子はさすがにまだ慣れていないので、セナリアンが吸い取りを行い、次の第三子は計画性を持って年が開いたため、セナリアンも念のため確認はしたが、コントロールすることで産むことも出来た。
モルガン公爵には夫妻の部屋の隠された場所に、セナリアンの肖像画や写真がいくつもある。ルージエ侯爵に頼んで(お酒を渡して)、頂いたものである。二人はその肖像画や写真を見ながら、お酒を飲むことが一番の喜びとなっていることはセナリアンは知らない。
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