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第10話
彼女の使命2
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セナリアンは二人に対して術を展開し、何やら考え込んで、その後に安心させるようににっこりと笑った。
「まず、その子が産まれるまで私に管理させていただきたいこと。そして、もっと私が早くに対処することが出来ていたらという思いはありますが、今はのみ込ませてください。その上でお話しさせていただきます」
生まれることのなかった二つの命が生まれるわけでも、なかったことになるわけでもないからだ。クーリットとササラはその言葉を噛みしめた。
「出産に関しては医師に任せますが、その他の問題はたった一つ、魔力です」
「「魔力?」」
「夫人の器もクーリット殿の魔力に対して問題はない、正しいです。ただそれは魔力差、二人の間に出来た子に魔力の異常は出ないというお話です」
「はい」「っはい」
「ですが、問題はその過程です。ここはどうしても、相性と言うべきか、鑑定の水晶では分からない部分となります。母体としては、子の魔力が多いことで、落ち着く?馴染むまでに、一時的とはいえ、一つの体に持ち過ぎているのです」
両親共に魔力が多い子どもは、エメラルダには多い。しかし、この症例は少ない。それぞれ違う子が生まれるように、魔力も親もそれぞれ違うため、モルガン夫妻の場合は父と母の多い魔力と、そして二人の相性である。
本来なら宿した時点で母体のたっぷりの魔力で安定するはずが、受精の時点で既に多い子の場合は、母体で落ち着くまでに流産したり、死産することがある。ただこれも一例で、母親が子より少ないにも関わず、普通に生まれたりもする。その場合は子が強かったと言うべきだろう。
「私の、私のせいなのですね…ああ…」
「落ち着きなさい」
クーリットはササラの肩を持って、ポンポンとあやすように優しく触れ、いくら安静にしていても解決する話ではなかったのだ。失ってしまった子のためにも、しっかり聞く義務がある。
「夫人のせいだけではありません。クーリット殿の魔力が多いことも原因です、二人からしか生まれない子です。そもそも妊娠は宿す母体だけの責任なんてことが間違っているのです。子どもは二人の子なのですから、何があろうと二人の責任です。母体だけに全てを押し付ける?ふざけるな!です」
「その通りにございます」「…うっ、うう、ありがとうございます」
子どもに説教されているのだが、圧倒的な説得力があり、母親に諭されているような気分にすらなる。
「夫と二人で、同じような症例を調べたんです。でも結論は母体が悪いと…」
「何が悪いと言えば、二人の相性が良すぎたところでしょうか」
「相性がいい?」
「ええ、魔力が多い者同士でも、相性が良くなければ、なかなか妊娠しません。誰だとかは言いませんが、そういった家もあるでしょう?」
「…っはい、そうですね」
「正直、そこは私でも手出しできません。夫人の現在の状況を子の魔力がアイス、母の魔力をゼリーで例えると、グラスに子を入れて、アイスを乗せて、そこにゼリーでみっちり蓋をしている状態だと想像してください。アイスが重いよ!ゼリーまで乗ってる、僕はまだうまく動けなくて苦しいよと」
「セナ様!!」
急にクーリットが大きな声を上げた、振り向くと首を振っている。
「ん?あっ、性別って分からない?でも、そろそろ七週よ?」
「はい、おそらくまだ分かる段階ではないかと…」
「ごめんなさい」
「あっ、僕…男の子なんでしょうか」
「ああ…えっと」
「男の子なんですかぁ…ううう、嬉しい」
「ごめんなさい、男の子です。いつ頃、分かるものなのか知らなくて」
「謝ることなどありません。どちらでも良かったですが、周りを考えると嫡男がいれば文句を言われませんから」
二度も子を失って、きっと周りに心無いことを言われたこともあったのだろう。ササラは左手をお腹に当てながら、右手で涙を拭っている。
「失敗したわね、ジョンラ。お母さまはまだ五週でしょう?弟ねって言ったら、知ってるって言ったのよ」
「それはルシュベル様のいつもの適当な勘ですよ」
「ええ~」
ルージエ家も母・ルシュベルが第三子を妊娠しており、セナリアンが男の子だと言うと、満面の笑みで知っていると言われたのだ。
「あの、夫人も妊娠中ですか」
「あっ、はい。弟です。同級生です」
「わぁ~嬉しいわ、ありがとうございます、セナリアン様、本当に、本当に、ううう、何て言葉にしたらいいのか、ううう」
ササラの涙腺と感情は崩壊してしまっている。
「まず、その子が産まれるまで私に管理させていただきたいこと。そして、もっと私が早くに対処することが出来ていたらという思いはありますが、今はのみ込ませてください。その上でお話しさせていただきます」
生まれることのなかった二つの命が生まれるわけでも、なかったことになるわけでもないからだ。クーリットとササラはその言葉を噛みしめた。
「出産に関しては医師に任せますが、その他の問題はたった一つ、魔力です」
「「魔力?」」
「夫人の器もクーリット殿の魔力に対して問題はない、正しいです。ただそれは魔力差、二人の間に出来た子に魔力の異常は出ないというお話です」
「はい」「っはい」
「ですが、問題はその過程です。ここはどうしても、相性と言うべきか、鑑定の水晶では分からない部分となります。母体としては、子の魔力が多いことで、落ち着く?馴染むまでに、一時的とはいえ、一つの体に持ち過ぎているのです」
両親共に魔力が多い子どもは、エメラルダには多い。しかし、この症例は少ない。それぞれ違う子が生まれるように、魔力も親もそれぞれ違うため、モルガン夫妻の場合は父と母の多い魔力と、そして二人の相性である。
本来なら宿した時点で母体のたっぷりの魔力で安定するはずが、受精の時点で既に多い子の場合は、母体で落ち着くまでに流産したり、死産することがある。ただこれも一例で、母親が子より少ないにも関わず、普通に生まれたりもする。その場合は子が強かったと言うべきだろう。
「私の、私のせいなのですね…ああ…」
「落ち着きなさい」
クーリットはササラの肩を持って、ポンポンとあやすように優しく触れ、いくら安静にしていても解決する話ではなかったのだ。失ってしまった子のためにも、しっかり聞く義務がある。
「夫人のせいだけではありません。クーリット殿の魔力が多いことも原因です、二人からしか生まれない子です。そもそも妊娠は宿す母体だけの責任なんてことが間違っているのです。子どもは二人の子なのですから、何があろうと二人の責任です。母体だけに全てを押し付ける?ふざけるな!です」
「その通りにございます」「…うっ、うう、ありがとうございます」
子どもに説教されているのだが、圧倒的な説得力があり、母親に諭されているような気分にすらなる。
「夫と二人で、同じような症例を調べたんです。でも結論は母体が悪いと…」
「何が悪いと言えば、二人の相性が良すぎたところでしょうか」
「相性がいい?」
「ええ、魔力が多い者同士でも、相性が良くなければ、なかなか妊娠しません。誰だとかは言いませんが、そういった家もあるでしょう?」
「…っはい、そうですね」
「正直、そこは私でも手出しできません。夫人の現在の状況を子の魔力がアイス、母の魔力をゼリーで例えると、グラスに子を入れて、アイスを乗せて、そこにゼリーでみっちり蓋をしている状態だと想像してください。アイスが重いよ!ゼリーまで乗ってる、僕はまだうまく動けなくて苦しいよと」
「セナ様!!」
急にクーリットが大きな声を上げた、振り向くと首を振っている。
「ん?あっ、性別って分からない?でも、そろそろ七週よ?」
「はい、おそらくまだ分かる段階ではないかと…」
「ごめんなさい」
「あっ、僕…男の子なんでしょうか」
「ああ…えっと」
「男の子なんですかぁ…ううう、嬉しい」
「ごめんなさい、男の子です。いつ頃、分かるものなのか知らなくて」
「謝ることなどありません。どちらでも良かったですが、周りを考えると嫡男がいれば文句を言われませんから」
二度も子を失って、きっと周りに心無いことを言われたこともあったのだろう。ササラは左手をお腹に当てながら、右手で涙を拭っている。
「失敗したわね、ジョンラ。お母さまはまだ五週でしょう?弟ねって言ったら、知ってるって言ったのよ」
「それはルシュベル様のいつもの適当な勘ですよ」
「ええ~」
ルージエ家も母・ルシュベルが第三子を妊娠しており、セナリアンが男の子だと言うと、満面の笑みで知っていると言われたのだ。
「あの、夫人も妊娠中ですか」
「あっ、はい。弟です。同級生です」
「わぁ~嬉しいわ、ありがとうございます、セナリアン様、本当に、本当に、ううう、何て言葉にしたらいいのか、ううう」
ササラの涙腺と感情は崩壊してしまっている。
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