57 / 228
第9話
彼の不確実な特性4
しおりを挟む
「マージナルは顔が完全左右対称だそうです。非常に珍しく、美しく、魅力的とされるとそうです。ある国ではギフトと呼ばれる眼の魅了眼ではなく、魅了に顔で魅了顔と呼ぶところもあるそうです。ただし、魅了眼とは違って、操るものではないので、証明はできていないそうです」
「そうなのか?」
魅了顔は顔を半分にして、右は右と、左は左とくっ付けて、並べてもほぼ同じ顔のことをそう呼ぶらしい。魅了眼の文献に、ちなみにという形で記載があった。
「お義母様はマージナルが女の子に追いかけられるのは、そのせいかとも思っていたそうです。珍しいので、カサブランカの夫がそうであった可能性は極めて低い。ゆえに、この完全左右対称と私の魔力のせいで、何か思い込ませるようなものがあるのかもしれない。でも私だけでは証明もできない。魔法省にも相談しましたが、お手上げでした」
「セナリアンと魔法省に分からなかったら、誰にも分からないだろう」
「ええ、新たな力かと期待したんですけどね」
何かあずかり知らぬ力なのではないかと、好奇心もあった。
「もし何かあるとしても、全員がそうなったわけではないよな?」
「そうなんです。確かにあの中に魔力が多い者はいませんでしたが、魔力差も全員一緒ではない。ただ文官、王女、使用人は同じような傾向。暇そうな男爵令嬢とお漏らし子爵令嬢は過去と元々の質もあった。あとは聖女は気に入っただけで、そこまで行動を起こしてはいない。それで、残るあと一つです」
「何だ?」
「思い込みが酷かったのは同じ傾向にあった三人です。マージナルに聞き取りをしたら、仮説が浮かび上がって来たんです」
「仮説?」
「ええ、褒めたというのです。しかも本人を美しいなど言ったわけではなくて」
「ああ、王女のドレスを褒めたと聞いた」
「はい、王女はドレス、文官は刺繍、使用人は掃除した窓だったそうです」
リビーヌに何か言ったのではないかとマージナルを問い詰めて、何とか思い出したのが窓であった。
「それが引き金になるのか?」
「引き金かは分かりませんが、褒められた方の思い込みが強いように感じます。文官は勘違いと分かったら、すぐに去って行きましたが、王女は羨ましい結婚をしたい欲望と、地位もあったので、増したのかもしれません。使用人は一緒にいる時間が長かったせいとも考えられます。なので、仮説です」
「王女は地位もあっただろうな」
「ちょっと誰かを褒めて実験しようかと思ったのですが、交流会で他の方のドレスも何人か褒めたそうですから、これも全員ではないのです」
結局、マージナルの特性の正体は分からないままである。
「一体なんなんだ」
「怖いと思いませんか?特に三人は愛を囁かれるでもないのに、マージナルと結ばれることを信じていたんですよ?あとの三人も可能性は十分ありましたし」
「確かにそうではあるな。でも儂が聖女が一番怖いな」
「ええ、怖かったです。ただ彼女はかもしれない程度ではありました。魔力を封じてみるのも手ですけど、職務に支障が出るでしょう?」
「ああ、そうだな。しかも証明できていないのに、封じるのもな」
「魔術具と言っても、何を付けさせたらいいのか分からない。ちなみに試しに魅了を封じる術を掛けてみましたが、跳ね返りました」
「掛けたのか…」
マージナルよ、知らぬうちに最愛の妻は魅了を封じる術を掛けていたようだぞと、心の中で問いかけた。
「ただ実際に起きているのだから、どれも否定はできないな。まさか、それで離婚と言い出すのではないだろうな」
「できるならしたいですけど、私も事実なら責任がありますからね。どうしたものでしょうか…お酒が染み渡りますね…」
「そうだなあ…」
二人は何か分からない特性で、これからも面倒なことが起こるのかと思うと、既に疲れた気分になるのであった。
「そうなのか?」
魅了顔は顔を半分にして、右は右と、左は左とくっ付けて、並べてもほぼ同じ顔のことをそう呼ぶらしい。魅了眼の文献に、ちなみにという形で記載があった。
「お義母様はマージナルが女の子に追いかけられるのは、そのせいかとも思っていたそうです。珍しいので、カサブランカの夫がそうであった可能性は極めて低い。ゆえに、この完全左右対称と私の魔力のせいで、何か思い込ませるようなものがあるのかもしれない。でも私だけでは証明もできない。魔法省にも相談しましたが、お手上げでした」
「セナリアンと魔法省に分からなかったら、誰にも分からないだろう」
「ええ、新たな力かと期待したんですけどね」
何かあずかり知らぬ力なのではないかと、好奇心もあった。
「もし何かあるとしても、全員がそうなったわけではないよな?」
「そうなんです。確かにあの中に魔力が多い者はいませんでしたが、魔力差も全員一緒ではない。ただ文官、王女、使用人は同じような傾向。暇そうな男爵令嬢とお漏らし子爵令嬢は過去と元々の質もあった。あとは聖女は気に入っただけで、そこまで行動を起こしてはいない。それで、残るあと一つです」
「何だ?」
「思い込みが酷かったのは同じ傾向にあった三人です。マージナルに聞き取りをしたら、仮説が浮かび上がって来たんです」
「仮説?」
「ええ、褒めたというのです。しかも本人を美しいなど言ったわけではなくて」
「ああ、王女のドレスを褒めたと聞いた」
「はい、王女はドレス、文官は刺繍、使用人は掃除した窓だったそうです」
リビーヌに何か言ったのではないかとマージナルを問い詰めて、何とか思い出したのが窓であった。
「それが引き金になるのか?」
「引き金かは分かりませんが、褒められた方の思い込みが強いように感じます。文官は勘違いと分かったら、すぐに去って行きましたが、王女は羨ましい結婚をしたい欲望と、地位もあったので、増したのかもしれません。使用人は一緒にいる時間が長かったせいとも考えられます。なので、仮説です」
「王女は地位もあっただろうな」
「ちょっと誰かを褒めて実験しようかと思ったのですが、交流会で他の方のドレスも何人か褒めたそうですから、これも全員ではないのです」
結局、マージナルの特性の正体は分からないままである。
「一体なんなんだ」
「怖いと思いませんか?特に三人は愛を囁かれるでもないのに、マージナルと結ばれることを信じていたんですよ?あとの三人も可能性は十分ありましたし」
「確かにそうではあるな。でも儂が聖女が一番怖いな」
「ええ、怖かったです。ただ彼女はかもしれない程度ではありました。魔力を封じてみるのも手ですけど、職務に支障が出るでしょう?」
「ああ、そうだな。しかも証明できていないのに、封じるのもな」
「魔術具と言っても、何を付けさせたらいいのか分からない。ちなみに試しに魅了を封じる術を掛けてみましたが、跳ね返りました」
「掛けたのか…」
マージナルよ、知らぬうちに最愛の妻は魅了を封じる術を掛けていたようだぞと、心の中で問いかけた。
「ただ実際に起きているのだから、どれも否定はできないな。まさか、それで離婚と言い出すのではないだろうな」
「できるならしたいですけど、私も事実なら責任がありますからね。どうしたものでしょうか…お酒が染み渡りますね…」
「そうだなあ…」
二人は何か分からない特性で、これからも面倒なことが起こるのかと思うと、既に疲れた気分になるのであった。
336
お気に入りに追加
1,518
あなたにおすすめの小説
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。
salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。
6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。
*なろう・pixivにも掲載しています。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる