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第9話

彼の不確実な特性4

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「マージナルは顔が完全左右対称だそうです。非常に珍しく、美しく、魅力的とされるとそうです。ある国ではギフトと呼ばれる眼のではなく、魅了に顔でと呼ぶところもあるそうです。ただし、魅了眼とは違って、操るものではないので、証明はできていないそうです」
「そうなのか?」

 魅了顔は顔を半分にして、右は右と、左は左とくっ付けて、並べてもほぼ同じ顔のことをそう呼ぶらしい。魅了眼の文献に、ちなみにという形で記載があった。

「お義母様はマージナルが女の子に追いかけられるのは、そのせいかとも思っていたそうです。珍しいので、カサブランカの夫がそうであった可能性は極めて低い。ゆえに、この完全左右対称と私の魔力のせいで、何か思い込ませるようなものがあるのかもしれない。でも私だけでは証明もできない。魔法省にも相談しましたが、お手上げでした」
「セナリアンと魔法省に分からなかったら、誰にも分からないだろう」
「ええ、新たな力かと期待したんですけどね」

 何かあずかり知らぬ力なのではないかと、好奇心もあった。

「もし何かあるとしても、全員がそうなったわけではないよな?」
「そうなんです。確かにあの中に魔力が多い者はいませんでしたが、魔力差も全員一緒ではない。ただ文官、王女、使用人は同じような傾向。暇そうな男爵令嬢とお漏らし子爵令嬢は過去と元々の質もあった。あとは聖女は気に入っただけで、そこまで行動を起こしてはいない。それで、残るあと一つです」
「何だ?」
「思い込みが酷かったのは同じ傾向にあった三人です。マージナルに聞き取りをしたら、仮説が浮かび上がって来たんです」
「仮説?」
「ええ、褒めたというのです。しかも本人を美しいなど言ったわけではなくて」
「ああ、王女のドレスを褒めたと聞いた」
「はい、王女はドレス、文官は刺繍、使用人は掃除した窓だったそうです」

 リビーヌに何か言ったのではないかとマージナルを問い詰めて、何とか思い出したのが窓であった。

「それが引き金になるのか?」
「引き金かは分かりませんが、褒められた方の思い込みが強いように感じます。文官は勘違いと分かったら、すぐに去って行きましたが、王女は羨ましい結婚をしたい欲望と、地位もあったので、増したのかもしれません。使用人は一緒にいる時間が長かったせいとも考えられます。なので、仮説です」
「王女は地位もあっただろうな」
「ちょっと誰かを褒めて実験しようかと思ったのですが、交流会で他の方のドレスも何人か褒めたそうですから、これも全員ではないのです」

 結局、マージナルの特性の正体は分からないままである。

「一体なんなんだ」
「怖いと思いませんか?特に三人は愛を囁かれるでもないのに、マージナルと結ばれることを信じていたんですよ?あとの三人も可能性は十分ありましたし」
「確かにそうではあるな。でも儂が聖女が一番怖いな」
「ええ、怖かったです。ただ彼女はかもしれない程度ではありました。魔力を封じてみるのも手ですけど、職務に支障が出るでしょう?」
「ああ、そうだな。しかも証明できていないのに、封じるのもな」
「魔術具と言っても、何を付けさせたらいいのか分からない。ちなみに試しに魅了を封じる術を掛けてみましたが、跳ね返りました」
「掛けたのか…」

 マージナルよ、知らぬうちに最愛の妻は魅了を封じる術を掛けていたようだぞと、心の中で問いかけた。

「ただ実際に起きているのだから、どれも否定はできないな。まさか、それで離婚と言い出すのではないだろうな」
「できるならしたいですけど、私も事実なら責任がありますからね。どうしたものでしょうか…お酒が染み渡りますね…」
「そうだなあ…」

 二人は何か分からない特性で、これからも面倒なことが起こるのかと思うと、既に疲れた気分になるのであった。
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