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第9話
彼の不確実な特性1
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ようやくミズリー王女が帰国し、ほっとしたマージナル。別邸の執務室で書類を片付けていると、メイドがお茶を持って来た。
別邸には侍従も侍女いないので、執事、メイド長、メイド、料理人、調理補助者で成り立っている。あとは出掛ける際の従者兼運転手くらいである。人員が足りない場合は、本邸から来てもらえばいい。セナリアンは領地の邸から、侍女が出来る者を連れて来ることもある。
そこに置いてくれと言い、マージナルがメイドに背を向けた途端に、メイドが急に抱き付いて来て、咄嗟に引き離し、メイドはその場に倒れ込んだ。
リビーヌ・イドク子爵令嬢。
「何をするんだ!」
「ずっとお慕いしておりました。奥様があのような方では不憫で、私なら支えられます。妻になりたいとなど申しません、今まで通りで、辛い時だけでも結構です。奥様も許してくださると思います」
リビーヌは膝をついて、マージナルに許しを請うかのように見上げている。
「何を言ってるんだ?今まで通りって、私的な会話をしたこともないだろう?」
「しなくても分かります」
「は?」
「私こそがずっとあなただけを想って来ました。素晴らしい奥様で、お優しい方ならこの想いを秘めて仕えようと思っておりました。でもうまくいってらっしゃらず、子どもも出来ないではありませんか」
「ならば知っているだろう、妻を愛していることを」
「意固地になっていらっしゃるだけではありませんか?私なら側でずっと支えることができます、嫌な時はお邪魔もしません」
「はあ…もう職は解こう」
何人か見たことがあるが、こういった人間に話しても無駄だ、本当に勘弁して欲しい。王女と言い、なぜこうも厄介ごとが起こるのか。
「では、側に置いて下さるのですか」
「は?なぜそうなる?」
「ですから奥様は相応しくないお方です、私が側で支えます」
「なぜお前に決める権利があるんだ?」
「では奥様が認めてくださらないのなら、私はこのままの形で悟られるようにしますので」
「愛人にしろと言うことか、それが目的か、そもそも」
「愛していただけるのですか」
リビーヌは疑いもせぬまなざしで、マージナルをうっとりと見上げている。
「は?そんなわけないだろう!解雇だ!出て行ってくれ」
「…そんな」
「どうして私が受け入れると思ったんだ?」
「だって私は特別じゃないですか」
「どこがだ?」
「優しい言葉や労ってもくださるではありませんか」
「雇い主なら当たり前だろう?皆にそうしている」
「皆と私に向けるものとは違います」
別に違いはないはずだ。確か二年は働いているはずだ、それなのにこんな本質を持っていたのか?正直、日常なので、何と労ったかも憶えていない。
「はあ、もう出て行ってくれ」
「嫌です、私はお側に必要です」
「ふざけるな!お前は雇い主に不貞をしようと言っておるのだぞ!分かっておるのか?紹介状にもそう書く。どこも雇ってはくれないだろうな」
「えっ、でも、私が本当の妻になるんですから」
「汚らわしい!出て行け!!!!!」
リビーヌを残して、執事であるローダンを呼び付けて事情を説明すると、ローダンの目が見開き、すぐに車を出すから荷物を十分でまとめて来いと叩き出し、メイド長を呼んで説明をすると、こちらは鬼の形相に変わった。
メイド長・カレナは四十代なのだが、今でも端麗で美しい。おかげで美人が怒ると非常に怖い。
個室をメイド長に監視させるも、私は妻に相応しいと泣き出して動かなくなってしまった。埒が明かないので、貴重品だけ持たせて、荷物は家族にでも取りに来させることにした。そして、リビーヌと説明のために鬼のメイド長を車に乗せて、実家へと運ばれていった。
別邸には侍従も侍女いないので、執事、メイド長、メイド、料理人、調理補助者で成り立っている。あとは出掛ける際の従者兼運転手くらいである。人員が足りない場合は、本邸から来てもらえばいい。セナリアンは領地の邸から、侍女が出来る者を連れて来ることもある。
そこに置いてくれと言い、マージナルがメイドに背を向けた途端に、メイドが急に抱き付いて来て、咄嗟に引き離し、メイドはその場に倒れ込んだ。
リビーヌ・イドク子爵令嬢。
「何をするんだ!」
「ずっとお慕いしておりました。奥様があのような方では不憫で、私なら支えられます。妻になりたいとなど申しません、今まで通りで、辛い時だけでも結構です。奥様も許してくださると思います」
リビーヌは膝をついて、マージナルに許しを請うかのように見上げている。
「何を言ってるんだ?今まで通りって、私的な会話をしたこともないだろう?」
「しなくても分かります」
「は?」
「私こそがずっとあなただけを想って来ました。素晴らしい奥様で、お優しい方ならこの想いを秘めて仕えようと思っておりました。でもうまくいってらっしゃらず、子どもも出来ないではありませんか」
「ならば知っているだろう、妻を愛していることを」
「意固地になっていらっしゃるだけではありませんか?私なら側でずっと支えることができます、嫌な時はお邪魔もしません」
「はあ…もう職は解こう」
何人か見たことがあるが、こういった人間に話しても無駄だ、本当に勘弁して欲しい。王女と言い、なぜこうも厄介ごとが起こるのか。
「では、側に置いて下さるのですか」
「は?なぜそうなる?」
「ですから奥様は相応しくないお方です、私が側で支えます」
「なぜお前に決める権利があるんだ?」
「では奥様が認めてくださらないのなら、私はこのままの形で悟られるようにしますので」
「愛人にしろと言うことか、それが目的か、そもそも」
「愛していただけるのですか」
リビーヌは疑いもせぬまなざしで、マージナルをうっとりと見上げている。
「は?そんなわけないだろう!解雇だ!出て行ってくれ」
「…そんな」
「どうして私が受け入れると思ったんだ?」
「だって私は特別じゃないですか」
「どこがだ?」
「優しい言葉や労ってもくださるではありませんか」
「雇い主なら当たり前だろう?皆にそうしている」
「皆と私に向けるものとは違います」
別に違いはないはずだ。確か二年は働いているはずだ、それなのにこんな本質を持っていたのか?正直、日常なので、何と労ったかも憶えていない。
「はあ、もう出て行ってくれ」
「嫌です、私はお側に必要です」
「ふざけるな!お前は雇い主に不貞をしようと言っておるのだぞ!分かっておるのか?紹介状にもそう書く。どこも雇ってはくれないだろうな」
「えっ、でも、私が本当の妻になるんですから」
「汚らわしい!出て行け!!!!!」
リビーヌを残して、執事であるローダンを呼び付けて事情を説明すると、ローダンの目が見開き、すぐに車を出すから荷物を十分でまとめて来いと叩き出し、メイド長を呼んで説明をすると、こちらは鬼の形相に変わった。
メイド長・カレナは四十代なのだが、今でも端麗で美しい。おかげで美人が怒ると非常に怖い。
個室をメイド長に監視させるも、私は妻に相応しいと泣き出して動かなくなってしまった。埒が明かないので、貴重品だけ持たせて、荷物は家族にでも取りに来させることにした。そして、リビーヌと説明のために鬼のメイド長を車に乗せて、実家へと運ばれていった。
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