上 下
43 / 228
第7話

悪魔でもかまわない8(イバンナ王国)

しおりを挟む
「ま、まさか、あの女が!あれは、あの者が盗みを働いて」
「茶番はもういい。ジニーさんをお前が殺し、イッツ一家は側近であるピーターとレミジオに、ジニーさんは冤罪だったかもしれないと唆して、自殺に見せかけて口封じさせたことは分かっている。前王に許可を貰って、二人は拘束して、今は牢屋だ。ジニーさんの冤罪と違って、ちゃんと証拠もある」

 王太子は側近に別に犯人がいるかもしれないと、自殺させてしまったからには、廃嫡になってしまうかもしれない、すまないと謝って、二人に行動を起こさせたのだ。口封じのためではあったが、また見られた時の保険に真犯人だという枠を作るためでもあった。

「父上、本当ですか」
「ああ、記録された映像を見せてもらった。ジニーというメイドは無理矢理、クレーザに毒を飲まされて殺され、家族はクレーザの側近二人が拘束した上で、家に火を放っておった…」

 さすがの王も目を見開いて、息子であるはずの王太子を見つめた。

「あ、あれは、折角のオーレリーとの蜜月な時間を邪魔したのだから」
「大切な時間であるのなら、血の繋がった妹である王女と情事を楽しんでいたと、皆になぜ言わない?処刑する必要はなかっただろう?」

 オーレリーは考えることに飽きたのか、キョロキョロしている。

「それは、公に認めている国はないからだ」
「お前は禁忌だと認識しながら、犯したのであろう?なぜお前が裁かれず、ジニーさんが裁かれなければならない?」
「私は尊いゆえ仕方ないのだ」
「尊いから許されるべきだと?」
「ああ、その通りだ」
「十三歳の月のものが始まったばかりの子を弄って、孕ませることが尊い者がするべきことなら、手本にするように国民に知らせてはどうだ?」
「私とオーレリーは特別だから許される」
「ならば特別な発表しようではないか、諸国にも私から招待できるぞ」
「そのような軽いものではないのだ、尊いがゆえ、発表するようなものではない」

 全く話にならない。自分と妹を何だと思っているのか。

 元々、イバンナ王国ではサファイアが産出されていたが、王太子は変成岩にサファイアを次々と発見。他国に輸出することで、利益を増やした。そして、税率を下げたり、貴族や民に事業や修繕などに還元し、国を豊かにしたとされている。

「魔術師殿」

 前王は首を振り、もう埒が明かないと判断した。

「フローレス国王、もう一度結論を」
「クレーザは廃嫡後、生涯幽閉します。もう遅いですが、メイドは冤罪であったことを謝罪します。王女は子のことがありますゆえ、早急に考えたいと思います」
「ありえません!王太子はどうするのですか」
「公爵がおる」
「従兄弟じゃないですか、しかも私より優秀な者はおりませんよ」
「黙れ!ありえぬのはお前じゃ!」
「魔術師様、お腹の子は無事、生まれるのでしょうか?」

 口に出したのは前王妃だった。もう吐き気を通り越したのであろう。老け込んで、全体的に真っ白である。

「まだ何とも言えない、今のところ、育っているとしか言いようがない」
「魔術師様はどう見ますか、生まれて来るべきか」
「私も考えた、禁忌とされているだけで、他の子と何も変わらないかもしれない。しかし、この国以外にも過去に王家や高位貴族が血を重んじ過ぎ、血が濃すぎた影響なのか、途中から育たぬか、生まれても身体が弱いことが続き、見目も大きく違うという子がいたのも文献に残っている。この国もそうだろう?だが、生まれて来ない方がいいというべき存在はいない、もし判断を下せるとすれば、人ではないのだろうな」
「運命…」
「ああ、親の運命を背負わされた子。こればかりは私には判断できぬことだ。天に任せる」
「…はい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。

salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。 6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。 *なろう・pixivにも掲載しています。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

何を間違った?【完結済】

maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。 彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。 今真実を聞いて⋯⋯。 愚かな私の後悔の話 ※作者の妄想の産物です 他サイトでも投稿しております

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...