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第7話

悪魔でもかまわない10(イバンナ王国)

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 ようやくエメラルダに戻ったセナリアン。さすがに全てを気を張り、裏付けのために駆け回ったため、疲れたと言うより、眠い。

「ご苦労であったな」
「ええ、物凄く。魔法省に決定事項として、国王は息子の王位継承権は剥奪し、愚かな子を育てた責任を取って、自身も退位して、償っていくと報告が来たそうです」
「ふむ、しかし悪の実とはな…文献でしか知らなかった」
「さすがに作れませんからね」

 あの場にいた者が伝えることも、記録することも出来ないので、悪の実が公になることはない。外部に異常がないため、過去に花が咲いているのではと思い、解剖した者もいたが、何もなかったそうだ。

「なぜ種ではなく、実なんだろうかと思っておったのだが、分かっておるのか?」
「実だとその中に種が含まれているからですよ。種だと一つだと思うから、実ならば中に種がびっしりでも構わないと。何かの実でも想定したんじゃないですかね」
「なるほどな、悪を吸収する種がびっしりと言うことか」
「ええ、そのような感覚です」

 正確には実が悪を吸収しながら、心臓を攻撃し、種を成長していく養分となる。

「王子は近い内に悪の実が育ちますよ」
「死ぬと?」
「ええ、本人と妹以外は分かっているはずよ。他の術でも良かったのだけど、彼には悪の実が最適だった。前王にね、悪魔だと言われて思い出したのよ。きっと妹に触れられないことで苛立っているはずだわ」
「他の術とは?」
「例えば、夢現で妹の幻覚を見ながら、違う次元で生きていく幽閉とか」
「なるほど、妹がいれば大人しくしていると」
「ええ、でもそんな都合のいいことでは生易しい。馬鹿があれを担ごうとする可能性もゼロではない」
「勝手に愛してどこかに行けば良かった。そんな人間もこの世にいることだろう」
「人の上に立つ者ではないということだな」
「その通り、あんな者が罰する立場に据えるわけにはいかない。メイドも、家族も助けてやりたかった…」
「ああ、悔しいな」

 王と王妃は共に、王弟である公爵に全てを打ち明け、映像も確認した。

 そして、フローレス国王陛下は、混乱を防ぐため兄妹の関係は伏せたが、ジニー・イッツの窃盗罪は冤罪であったこと。クレーザ・ヴレトブラッドが調べもせず、殺したこと。そして冤罪だと分かり、口封じのために家族は側近に指示して殺したことを発表し、謝罪した。

 クレーザは善悪の判断が出来ないことを理由に王太子、王位継承者からも外し、己の罪を自覚させるために幽閉とし、罪を自覚した上で死罪とすると発表。

 王も責任を取って退位し、王弟の公爵が引き継ぐことも発表された。そして王子の有責にて、アガット・モンフィルダー伯爵令嬢との婚約も、王命にて白紙になり、慰謝料も払われた。

 側近二人は止めるべき、誰かに相談すべきだったと反省して欲しいという理由で、終身刑となった。側近は王女との関係は知らず、王太子を守るためだったと、指示された身分の関係上、王弟と前王とも相談し、死罪とはしなかった。

 今後を決める間、クレーザは王族のプライベートエリアでのみ、最期だと好きにさせており、皆に白い目で見られたが、気にすることもなく、オーレリーと時間を楽しんだ。しかし話は出来ても、お腹の子を愛でたり、愛を囁いたり、触れることは、心臓が痛くて出来なかった。オーレリーは受け身であるため、自分から行動は起こすことはなかったため、大丈夫かと心配してくれるくらいであった。

 側近がいないことで、ならば自分を愛して、悲しんでいるだろうと思っているアガットに会いに来こうとしたこともあったが、王子は利用しようという気持ちから、出掛ける前に心臓が痛くて持たなかったため、接触も出来ていない。ならば手紙を書こうともしたが、同様に心臓が張り裂けそうになり、書くこともできなかった。代筆も同様だった。

 あの魔術師を捕まえようとも考えた。あの魔術師がいれば、自分は取り戻せる、それ以上の成果も、妹も全て元通りになると、しかし探すにも顔も声も覚えてもいない。何もできることはなく、ただ鬱憤を溜めるだけであった。

 そしてオーレリーの子は生まれては来なかった。セナリアンが気になり、幾度か訪問していたが、ある日、腹の中で亡くなっていた。天の思し召しなのか、十三歳という未熟な身体だったせいかは分からない。オーレリーも表向きは病気療養、実際は両親の元で幽閉し、再教育が出来れば、他の道を考えることとなった。

「悪の花が育ったそうよ。早かったわね。あれは頭が回るゆえ、おそらく手段を考えたのでしょう。考えれば考えるほど育ち、妹にも必ず接触する、どんどん育つ!」
「兄妹としても駄目なのか」
「あれはもう妹ではないでしょう」

 クレーザは急に胸が苦しいと、掻きむしり、暴れて亡くなった。王も王妃も互いに口にはしなかったが、いつか来る日だと思っていた。我が子ながら、愚かだと思うことしか出来なかったそうだ。

 王は最期の仕事して、クレーザは罪を受け止め、耐えきれず自害したとした。まさにクレーザがジニーに被せた冤罪の筋書きと同じであった。

 アガットはイッツ一家の墓地の管理したいと申し出た。
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