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第7話

悪魔でもかまわない6(イバンナ王国)

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「私は王太子ですよ」
「関係ない。それでどうするのだ、フローレス?今はお前が王だ」
「事実なのですか」
「ああ、何せこちらを鑑定した者には何も得の無いことであるゆえな。脅して国を盗ることも、公にして潰すことも出来るだろうに。求めたのはどう判断するかだ」
「クレーザ、お前は妹を抱きたい女として見ておったのか?」
「父上、そんなわけないじゃないですか!でもオーレリーが一番可愛いのは事実でしょう?」
「フローレス、お前にはこの二人がどう見える?儂も今日までは仲の良い兄妹だと思っておったが、男女の関係を持っていたのだぞ」
「持っていません」
「私は確認しているのだ。頼めば証拠も見せることも可能だが、この場ではマデリーネのために避けたい。もう逃げ場はない」
「…」

 前王は王宮に転移する前に、前王妃に席を外させて、ジニーと家族の殺害、そして二人の行為を水晶の記録で見せていた。前王は疑っていない状態なのだ。前王妃に見せたら危険だろうと判断されたのだろう、見ていない状態でこれなのである。

「では、クレーザ、腹が大きくなって、子が生まれたらどうするのだ?」
「子がおる訳ないでしょう」
「待つか、その腹が大きくなるのを。それも平民のメイドのように殺すか?女児と書いてある、女の子が産まれるぞ。オーレリーは何も言わぬがどうじゃ?どんどん腹は大きくなるぞ」
「おなかがおおきくなるの?どうして?」
「お兄様との赤ちゃんがいるからだ」
「おにいさまとの?あかちゃん?かわいい?」

 オーレリーは皆の話がよく分かっていない。全て王太子の管理下にあるため、兄がどうにかしてくれる、守ってくれると信じている。

「オーレリーは認めたな、フローレス、どうする?」

 王も王妃も嘘でしょうと、焦点が定まらず、頭も回っていなかった。

「公には出来ません。また戦争を始める隙を与えてしまう。子は堕させます」
「それから?」
「二人は二度と会わぬように」
「そんな…駄目です。オーレリーは私がいないと何も出来ません」
「そのようにしておったのであろう?ずっと側におらせるために、病弱で嫁げないことにしたかったのであろう?」
「違います」
「まあ、もう全て暴かれたのだ」

 もう事実は変わらない、否定しようが、公にされれば同じことである。

「分かりました、私とオーレリーは愛し合っています。子どもきっと可愛いでしょう。父上、母上、考えてみてください。他人が産んだ子より、私とオーレリーの子の方が可愛いに決まっていると思いませんか」
「お前…そんなわけないだろう?分からないのか」「なんてことを…」

 王も王妃もオーレリーの世話はクレーザが率先するため、任せていたことは確かである。でも家族の時間を取らなかったわけではない。息子の口から出た言葉が、人から出た言葉とは思えなかった。

「分かっています。公には許されぬことですから、この子は誰の子か分からないということにして、私の養子にして、育てればいい」
「お前は結婚しないということだな」
「お祖父様、結婚はしますよ。婚約者がおりますからね。オーレリーの子が出来たら、あれの子として育てようと思っておりました。あれは気が弱いから選んだのです、黙って承知しますよ」
「お前の罪はどうするのだ?」
「罪ですか?これは純愛ですよ、オーレリーの好きな物語で言う真実の愛というべきですかね?」
「しんじつのあい、だいすき」

 オーレリーは幼子のまま身体だけ大人になりつつあったのだろう、ちぐはぐで非常に気持ち悪い。

「知った者をどうした?」
「ああ、あの平民ですか」

 ジニーが見てしまったのは、ベットメイキングの担当の日に、部屋に忘れ物を取りに行ったためであった。そこは王族のプライベートエリアではなく客室で、いるはずもない二人が勝手に部屋を使っていたのだ。

「父上?」
「クレーザはオーレリーとの関係を見られて、メイドを冤罪で勝手に殺している」
「「!!」」
「冤罪ではありません、あれはオーレリーのネックレスを盗んだのです」
「どんなネックレスだ?国宝か?そんなものオーレリーが持っているはずないよな。率先して王太子が命を奪っていては、命は平等なんて聞いて呆れるな」
「あれは、仕方なかったんです!言いふらされでもしたら、オーレリーが悲しみますからね。守ってくれますよね?父上?」
「平民ならまだいいか…」
「バカモン!!これからもバレたら殺すと言っているのだぞ。家族も殺したのだろう?四人だぞ!」
「いいじゃないですか、私がいなくなったら困るでしょう?」
「それは…」
「オーレリーがいれば公務はちゃんとやりますよ。ねっ、オーレリー?」

 王太子は王女の頭を撫でながら、当たり前のように抱き寄せていた。前王妃だけではなく、皆が吐き気がした。

「フローレス、どうするのだ?」
「…」

 セナリアンは暇ではない、時間の無駄だと姿を現すことにした。
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