40 / 228
第7話
悪魔でもかまわない5(イバンナ王国)
しおりを挟む
前王は全員集まるように先触れを出し、セナリアンが転移で二人を王宮に連れて行った。セナリアンとワトンは姿を消してはいたが、見張っている。
「父上、急にどうしたんですか」
王宮の一室に大事な話があると、フローレス・ヴレトブラッド王、マルグレット王妃、クレーザ王太子、オーレリー王女。そしてアドリアーノ前王、マデリーネ前王妃が揃い、席に着いた。
「お祖父様、オーレリーは体調が良くないので、退席させてもいいですか」
「駄目だ」
「具合が悪いのです」
「おにいさま、だいじょうぶです」
「酷くなったら言うんだよ」
前王は今までなら優しい兄に見えていたはずが、嫌悪感で一杯だった。前王妃は早くも吐きそうなのか、またハンカチで口元を押さえて、泣いている。
「お義母様、どうされたんですか。何かあったのですか」
「いや、大丈夫だ。マデリーネはそっとして置いてくれ」
「分かりました」
「で、急ぎの用とは?私も暇では無いのですよ」
そこで王女が咳き込んだ。慌てて、王太子が背中を擦っている。前王妃は今にも吐き出しそうな真っ青な顔をしている。
「お祖父様、やはりオーレリーは退席させましょう。話は私が後で伝えますから」
現在、具合が悪いのはどう見ても、真っ青な前王妃である。そのためにも彼女は席に着いているのだ。
「駄目だ」
「どうしてですか」
「オーレリー、なぜ体調が悪い?」
「お祖父様、オーレリーは身体が弱いんですよ。このところもあまり食事も摂れていないのです」
「やはり分かっておらぬのか」
「父上、何の話ですか」
「私はどうしてオーレリーの体調が悪いのかと聞いている」
「ですからオーレリーは」
「妊娠しておるからであろう!!」
大きな声に皆、ビクっとなった。前王妃は慣れているのか、先程も食らっていているからか、同じ体勢だ。とにかく口元を押さえている。
「何を仰っているのですか?オーレリーはまだ十三ですよ?」
「ああ、その十三歳を妊娠させた者がおるということだ」
「父上、それはあり得ません!この子は外にもほとんど出ないのですよ」
「出なくとも子は成せるであろう?」
「王宮の中に?そんな、まさか」
「クレーザは分かっておるよの?」
前王は王太子をじっと見詰めて問いかけた。いくら頭が良く、優秀だとしても、化け物でしかない。オーレリーは困った様子もなく、ぼーっとしている。
「クレーザは知っていたのか」
「まさか、そんなことありえませんよ。そもそも妊娠とは誰が言ったのですか」
「その者も殺すか?お前には無理な相手じゃぞ」
「お義父様、何を仰っているのですか」
前王は王に鑑定書を投げつけた。王は目を見開き、ありえん!捏造だと言ったが、王妃が奪い取ると卒倒しかけて、ありえないと鑑定書を叩き付けた。前王は鑑定書を王太子に渡すと、王太子は一瞬驚いた顔をしたが、すぐさま、捏造だと言い切った。
「私も捏造なら良かった。捏造ではなく王太子の陰謀だな」
「本当なのですか」
「具合が悪いのも納得がいくだろう?証拠なら腹におる。身体の弱いのも嘘なのか?弱い者に行う行為ではあるまい」
「これは捏造です」
「生まれるまで待つつもりか」
「いずれお腹も目立ち出しますよ、どうするのですか?」
前王妃が初めて口を開いたが、すぐにまた口元を押さえている。
「はぁ…お祖母様まで。これを持って来たのは誰ですか、私が責任を持って話を付けますので、教えてください」
「お前は消えたいか?勝てぬ相手だと言ったはずだ」
身を持って絶対に敵わない相手だと身に染みている。絶対に敵うはずがない。
「父上、急にどうしたんですか」
王宮の一室に大事な話があると、フローレス・ヴレトブラッド王、マルグレット王妃、クレーザ王太子、オーレリー王女。そしてアドリアーノ前王、マデリーネ前王妃が揃い、席に着いた。
「お祖父様、オーレリーは体調が良くないので、退席させてもいいですか」
「駄目だ」
「具合が悪いのです」
「おにいさま、だいじょうぶです」
「酷くなったら言うんだよ」
前王は今までなら優しい兄に見えていたはずが、嫌悪感で一杯だった。前王妃は早くも吐きそうなのか、またハンカチで口元を押さえて、泣いている。
「お義母様、どうされたんですか。何かあったのですか」
「いや、大丈夫だ。マデリーネはそっとして置いてくれ」
「分かりました」
「で、急ぎの用とは?私も暇では無いのですよ」
そこで王女が咳き込んだ。慌てて、王太子が背中を擦っている。前王妃は今にも吐き出しそうな真っ青な顔をしている。
「お祖父様、やはりオーレリーは退席させましょう。話は私が後で伝えますから」
現在、具合が悪いのはどう見ても、真っ青な前王妃である。そのためにも彼女は席に着いているのだ。
「駄目だ」
「どうしてですか」
「オーレリー、なぜ体調が悪い?」
「お祖父様、オーレリーは身体が弱いんですよ。このところもあまり食事も摂れていないのです」
「やはり分かっておらぬのか」
「父上、何の話ですか」
「私はどうしてオーレリーの体調が悪いのかと聞いている」
「ですからオーレリーは」
「妊娠しておるからであろう!!」
大きな声に皆、ビクっとなった。前王妃は慣れているのか、先程も食らっていているからか、同じ体勢だ。とにかく口元を押さえている。
「何を仰っているのですか?オーレリーはまだ十三ですよ?」
「ああ、その十三歳を妊娠させた者がおるということだ」
「父上、それはあり得ません!この子は外にもほとんど出ないのですよ」
「出なくとも子は成せるであろう?」
「王宮の中に?そんな、まさか」
「クレーザは分かっておるよの?」
前王は王太子をじっと見詰めて問いかけた。いくら頭が良く、優秀だとしても、化け物でしかない。オーレリーは困った様子もなく、ぼーっとしている。
「クレーザは知っていたのか」
「まさか、そんなことありえませんよ。そもそも妊娠とは誰が言ったのですか」
「その者も殺すか?お前には無理な相手じゃぞ」
「お義父様、何を仰っているのですか」
前王は王に鑑定書を投げつけた。王は目を見開き、ありえん!捏造だと言ったが、王妃が奪い取ると卒倒しかけて、ありえないと鑑定書を叩き付けた。前王は鑑定書を王太子に渡すと、王太子は一瞬驚いた顔をしたが、すぐさま、捏造だと言い切った。
「私も捏造なら良かった。捏造ではなく王太子の陰謀だな」
「本当なのですか」
「具合が悪いのも納得がいくだろう?証拠なら腹におる。身体の弱いのも嘘なのか?弱い者に行う行為ではあるまい」
「これは捏造です」
「生まれるまで待つつもりか」
「いずれお腹も目立ち出しますよ、どうするのですか?」
前王妃が初めて口を開いたが、すぐにまた口元を押さえている。
「はぁ…お祖母様まで。これを持って来たのは誰ですか、私が責任を持って話を付けますので、教えてください」
「お前は消えたいか?勝てぬ相手だと言ったはずだ」
身を持って絶対に敵わない相手だと身に染みている。絶対に敵うはずがない。
324
お気に入りに追加
1,518
あなたにおすすめの小説
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる