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第7話

悪魔でもかまわない5(イバンナ王国)

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 前王は全員集まるように先触れを出し、セナリアンが転移で二人を王宮に連れて行った。セナリアンとワトンは姿を消してはいたが、見張っている。

「父上、急にどうしたんですか」

 王宮の一室に大事な話があると、フローレス・ヴレトブラッド王、マルグレット王妃、クレーザ王太子、オーレリー王女。そしてアドリアーノ前王、マデリーネ前王妃が揃い、席に着いた。

「お祖父様、オーレリーは体調が良くないので、退席させてもいいですか」
「駄目だ」
「具合が悪いのです」
「おにいさま、だいじょうぶです」
「酷くなったら言うんだよ」

 前王は今までなら優しい兄に見えていたはずが、嫌悪感で一杯だった。前王妃は早くも吐きそうなのか、またハンカチで口元を押さえて、泣いている。

「お義母様、どうされたんですか。何かあったのですか」
「いや、大丈夫だ。マデリーネはそっとして置いてくれ」
「分かりました」
「で、急ぎの用とは?私も暇では無いのですよ」

 そこで王女が咳き込んだ。慌てて、王太子が背中を擦っている。前王妃は今にも吐き出しそうな真っ青な顔をしている。

「お祖父様、やはりオーレリーは退席させましょう。話は私が後で伝えますから」

 現在、具合が悪いのはどう見ても、真っ青な前王妃である。そのためにも彼女は席に着いているのだ。

「駄目だ」
「どうしてですか」
「オーレリー、なぜ体調が悪い?」
「お祖父様、オーレリーは身体が弱いんですよ。このところもあまり食事も摂れていないのです」
「やはり分かっておらぬのか」
「父上、何の話ですか」
「私はどうしてオーレリーの体調が悪いのかと聞いている」
「ですからオーレリーは」
「妊娠しておるからであろう!!」

 大きな声に皆、ビクっとなった。前王妃は慣れているのか、先程も食らっていているからか、同じ体勢だ。とにかく口元を押さえている。

「何を仰っているのですか?オーレリーはまだ十三ですよ?」
「ああ、その十三歳を妊娠させた者がおるということだ」
「父上、それはあり得ません!この子は外にもほとんど出ないのですよ」
「出なくとも子は成せるであろう?」
「王宮の中に?そんな、まさか」
「クレーザは分かっておるよの?」

 前王は王太子をじっと見詰めて問いかけた。いくら頭が良く、優秀だとしても、化け物でしかない。オーレリーは困った様子もなく、ぼーっとしている。

「クレーザは知っていたのか」
「まさか、そんなことありえませんよ。そもそも妊娠とは誰が言ったのですか」
「その者も殺すか?お前には無理な相手じゃぞ」
「お義父様、何を仰っているのですか」

 前王は王に鑑定書を投げつけた。王は目を見開き、ありえん!捏造だと言ったが、王妃が奪い取ると卒倒しかけて、ありえないと鑑定書を叩き付けた。前王は鑑定書を王太子に渡すと、王太子は一瞬驚いた顔をしたが、すぐさま、捏造だと言い切った。

「私も捏造なら良かった。捏造ではなく王太子の陰謀だな」
「本当なのですか」
「具合が悪いのも納得がいくだろう?証拠なら腹におる。身体の弱いのも嘘なのか?弱い者に行う行為ではあるまい」
「これは捏造です」
「生まれるまで待つつもりか」
「いずれお腹も目立ち出しますよ、どうするのですか?」

 前王妃が初めて口を開いたが、すぐにまた口元を押さえている。

「はぁ…お祖母様まで。これを持って来たのは誰ですか、私が責任を持って話を付けますので、教えてください」
「お前は消えたいか?勝てぬ相手だと言ったはずだ」

 身を持って絶対に敵わない相手だと身に染みている。絶対に敵うはずがない。
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