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第8話

お引き取り願います5

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 ミズリーは王太子に呼ばれて、大臣と侍女と護衛と共に聖堂にやって来た。大きくはないが、ステンドグラスで彩られた由緒正しいというべき造りとなっている。そこには真っ黒のドレスを来たセナリアンがいた。扉はセナリアンが閉めたようで、椅子に案内し、護衛も女性だと舐めたのかさくさく進んで来た。

「一応、マージナル・グローの妻です」
「あなたが?」

 正直、佇まいも含め、美しいと思う容姿であったが、相手はたかが貴族令嬢だ。

「マージナル様と別れてください。私と結婚したいと言っております」
「それが真実ならば良かったのに、息をするように嘘を付くのですね」
「不敬ですわ、私は王女ですのよ」

 まず、そう言ってセナリアンは人差し指をミズリー王女の前に光を見せた。ビクっとしたが、護衛が守ってくれると思っていたが、その光に釘付けになった。王太子は離れた場所で見守ることとなっていた。正直、セナリアンの力を目の前で見たことがなかったのでワクワクしていた。

「これでここからの話をあなたは話すことが出来なくなりました」
「何を言っているの?ちょっと大臣も何か言いなさいよ!」

 横の座ったグリース大臣も、後ろに控えている侍女も護衛も目を瞑っており、息はしているが動かなかった。

「その者たちはもう動きませんよ?」
「何をしたの!王太子殿下、これは問題ですよ」

 大きな声を上げたが、リスルートは無言を貫いた。

「後で起こしますから、心配なさらないで。あなたはマージナル様が断ったことで、覚悟するように言ったそうですね、それはどういう意味ですの?」
「それはこちらの国とは一切の関係を断つということですわ」
「国が荒れても?」
「そうなってもお父様は私を守ってくれますわ」
「それがどういう意味か分かって使っておいでなのですね」
「マージナル様は私に相応しいのです、王女が公爵家に入ると言っているのに、あなたがいるから出来ない。だったら私の国に連れて行って幸せになるのです」

 断られているのに、なぜ国に連れて行くことになったのかは分からないが、父親がどうにかしてくれると思っているようである。

「公爵家はどうなるのですか」
「そんなの知らないわ、誰かが継げばいいじゃない」
「王女ともあろう者がそのような考えをお持ちとは、恐ろしいですわね。ご自分のことしか考えていない。あなたは男性を自分のおもちゃだとでも思ってらっしゃるの?そういった嗜好をお持ちなのかしら?」
「違うわ!失礼ね、だからあなたが離縁すればいいのよ」

 どこが失礼なのだろうか、どう考えても嗜好を持っているとしか思えない。

「私は始めに申しましたでしょう?真実ならばと、現状では無理でしょう?マージナル様は承諾しない、陛下も承諾しない。離縁を拒んでいるのはあちらの方ですのよ。もう何度もお話してますのに」
「あり得ないわ、あなたが拒んでいると」
「誰が言ったのですか」
「誰かは知らないけど、みんなそうだって」
「みんなって誰かしら?」
「グリース大臣が聞いてきたの」

 極めて不本意な話であるが、王女の嘘であった。

「今からあなたが既婚者に言い寄って断られて、あなたがお父上に頼んで、国交を断絶したことで、起こることを脳内に映し出します。それでも事を起こすなら、私が私の手で全力で潰します。さすがに国を壊すのは初めてなので、加減が出来るか分かりませんけども」
「は?」
「ちなみにお酒を造っている領地はあるかしら?」
「うちの国はあまり向いていないようで、ほとんど無いわ」
「変わっていないのね、だから興味無かったのよね。さあ、御覧なさい」
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