上 下
49 / 228
第8話

お引き取り願います4

しおりを挟む
 ついにリスルートがセナリアンと話をすることとなった。セナリアンは忙しいため、時間を合わせるのはリスルートの方である。

「あら?今度は王女様?良い縁談じゃない」
「そう言うと思ったよ、全部知っているくせに」
「さっさとまとめてくださいな。よくあるじゃない、上手くいっていない夫が、王女様に見染められて、真実の愛をという形でいいですよ」

 よくあることではない、セナリアンは娯楽の物語は読まないため、誰かが話してくれたのを適当に変換している。

「いやいや、マージナルが受け入れるわけないだろう。今だって、セナリアンに嫌われる、好かれていなくても嫌われたくないって嘆いているのを押し込めて、私はここにいるんだよ?」
「そこはどうにかまとめるのが王太子でしょう!」
「王太子を何だと思っているんだ…魔力差があるってことはないか?」
「勘がいいですね、その通りです。魔力差があります。でも二人を水晶に触れさせるとしても、理由が必要となって、受け入れないかもしれない。想い合っていたのに、結ばれることができなかったと吹聴されても困りますからね」

 ジッサールは先のイバンナ王国よりは魔力が多い。ただし、魔力が多い者は限られるため、ほぼ魔力差はないが、おかげで全体的に魔力が少ない。ミズリー王女も少ない、エメラルダでいえば下級貴族に相当する。

「そうではないかと思っていたんだ。最悪、理由を考えて、そうするしかないと思ったが、セナリアンの言う通り、何を言い出すか分からない」
「正直、縁組としてもジッサールなら別の国の方が良かったわよね」
「他国はまともだったということだよ、おかしいのはあの王女だけだ」
「見た通り、馬鹿な王女なの?あの国は興味がないから、あまり知らないのよね」
「馬鹿になってしまったんだろうな、マージナルが受け入れないなら覚悟するようにと言い出してね」
「そんな力があるとでも?」
「無いだろうね、確かに妙に軍事に力を入れているようだが、汚い真似をする方が多いと聞いている」

 魔力の多い魔術師が少ないため、騎士や武器などに力を入れているようだが、それよりも相手の弱みを握って、有利に事を運ばせようとするらしい。

「国王は何と?」
「要約すれば、可愛い王女の願いは叶えたい。でも無理強いして敵対されたくはない。良きに計らって欲しいという感じだな」
「はあ…私だから良かったものの」
「いやいや、一番良くないだろう」
「そう?」
「陛下もセナリアンに任せるそうだ。好きにしていい、帰る時に記憶も傷もなければ、一瞬で潰しても構わないと、そう伝えてくれと頼まれた」

 陛下は正直、ジッサールと国交が切れても問題はない。ただし、エメラルダは問題ないが、ジッサールの周辺の国にこの件で迷惑を掛けるのは不本意であるため、とにかく早く帰って欲しかった。セナリアンの夫なのだから、責任を取って欲しいという考えではない。

「投げたわね!だからマージナルには面倒ごとが起こるって言っていたのに」
「私は穏便に済ませたいと思って、マージナルに説得もさせたのだが、奥様が嫌がっているとか、自分を愛するようになると疑わないのだよ」
「嫌がっていないわ」
「でも自分の欲望のために、覚悟なんて言う王族を信じられるか」
「ええ、そこよね。胸糞が悪すぎるわ、そうね、身体ではなく、脳内への加虐にしましょうか」
「加虐?」
「自尊心の高い者に、あなたのせいで刺激の強い起こることを見せるのです。敢えてトラウマを植え付ける方がいいでしょう?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。

salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。 6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。 *なろう・pixivにも掲載しています。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

何を間違った?【完結済】

maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。 彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。 今真実を聞いて⋯⋯。 愚かな私の後悔の話 ※作者の妄想の産物です 他サイトでも投稿しております

処理中です...