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お花畑に住めなくなった家族8
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「ですが、我が家よりもマリクワン侯爵家の方がいいかと思いまして…キャリーヌに似ていますから、ベルアンジュにも似ているのです」
確かに二人は似ていると言っていい顔立ちではある。
ただ、育ちが影響しているのか、ベルアンジュは穏やかさを持っているが、キャリーヌは勘違いの傲慢さが顔から滲み出ている。
「私がどうしてそのようなことをしなければならない?」
「ベルアンジュの姪になるのですよ?」
「はあ…あなたが引き取って跡取りにすればいいではありませんか、もう二度と話し掛けて来ないでくれ!」
「え?お待ちください」
話せば理解して貰える、あわよくばメロリーヌを引き取って貰えたらと思っていたチェイスは、置き去りにされて、茫然とした。
仕方ないと肩を落として帰ったが、この一件でチェイスはさらに皆から距離を置かれることになった。
キャリーヌからはこんなことは耐えられない、私は夫のある身なのにと、なぜかカイザーから連絡はあったか、カイザーを探してくれているのか、メロリーヌに会わせてという手紙が届いていたが、連絡はないとだけ返事をしていた。
メロリーヌは孤児院で無事に育っているが、チェイスもノーマも、会いに行く気もない。部屋に閉じこもっているベントルにも伝えたが、罪人がどうして子どもを産んでいるのか、気色悪いと思っただけであった。
それは平民との子どもであること、肌が褐色であったこと、キャリーヌの顔で可愛がっていたわけではないこと、お金がないという理由で考えることすらしなかった。
そろそろ怒りも収まったのではないかと、バスチャン伯爵に話をしに行くことにした。先触れを出せば断られる可能性もあるので、急に訪ねることにした。
邸には入れては貰えたが、バスチャン伯爵の機嫌は悪そうであった。
「何の用だ、もう関わらないでくれと言ったはずだが?」
「いや、急に押しかけてすまない。実は…もう一度、助けて貰えないかと思って…大変なんだ」
「自業自得じゃないか」
「ベルアンジュのことは誤解なんだ…」
「虐待していたなんて…私は知らなかったからな!」
援助をしていたことから、関与とまではいかなくても疑われては困る。
それでなくても、ベルーナのことでまだ苛立っていた。向こうで働くことにしたようだが、子どもを抱えて、上手くいくはずがない。泣きついて来ることは目に見えているが、戒めとして籍を外した。
「虐待などしていない」
「そうは判断されなかったから、罰を受けたのだろう」
「ベルアンジュが早く言ってくれていたら、生きていれば、違うと証言が出来たんだ…だが、そうは出来ないだろう」
「援助は出来ない」
「そこを何とかお願い出来ないだろうか…頼む」
チェイスは援助して貰えるなら安いものだと、深く頭を下げた。バスチャン伯爵は押しに弱いわけではないが、しつこく頼むと仕方ないと言ってくれていた。
「断る、前に今までの援助を返金してからだと話したはずだが?」
「…あ、それは」
その話は返さなくていいと思って、忘れてしまっていた。
「キャリーヌもいないのだから、今までよりお金も掛からなくなったのではないのか?まさか、孫を引き取るのか?」
「…知っていたのか」
まさかあのような些細なことを、知られているとは思わなかった。
「当たり前だろう。王城でもお騒ぎしたそうじゃないか!しかも、キャリーヌは労働刑になったはずなのに、子どもを産んだと?おかしいのではないか!」
「それは…キャリーヌが勝手に」
「甘やかした結果だろう!喘息も重くなかったそうじゃないか!てっきり酷いのだと思っていたのだぞ?」
症状が重く、薬代が高額だと聞いていた。だからこそ援助をしていた。今更返して欲しいという気はないが、これ以上は関わりたくもない。
それでなくても、ラオルス公爵との縁がなくなってしまい、我が家も発展するチャンスを失ったのだ。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
あと最終回まで2話です。
最後までどうぞよろしくお願いいたします。
確かに二人は似ていると言っていい顔立ちではある。
ただ、育ちが影響しているのか、ベルアンジュは穏やかさを持っているが、キャリーヌは勘違いの傲慢さが顔から滲み出ている。
「私がどうしてそのようなことをしなければならない?」
「ベルアンジュの姪になるのですよ?」
「はあ…あなたが引き取って跡取りにすればいいではありませんか、もう二度と話し掛けて来ないでくれ!」
「え?お待ちください」
話せば理解して貰える、あわよくばメロリーヌを引き取って貰えたらと思っていたチェイスは、置き去りにされて、茫然とした。
仕方ないと肩を落として帰ったが、この一件でチェイスはさらに皆から距離を置かれることになった。
キャリーヌからはこんなことは耐えられない、私は夫のある身なのにと、なぜかカイザーから連絡はあったか、カイザーを探してくれているのか、メロリーヌに会わせてという手紙が届いていたが、連絡はないとだけ返事をしていた。
メロリーヌは孤児院で無事に育っているが、チェイスもノーマも、会いに行く気もない。部屋に閉じこもっているベントルにも伝えたが、罪人がどうして子どもを産んでいるのか、気色悪いと思っただけであった。
それは平民との子どもであること、肌が褐色であったこと、キャリーヌの顔で可愛がっていたわけではないこと、お金がないという理由で考えることすらしなかった。
そろそろ怒りも収まったのではないかと、バスチャン伯爵に話をしに行くことにした。先触れを出せば断られる可能性もあるので、急に訪ねることにした。
邸には入れては貰えたが、バスチャン伯爵の機嫌は悪そうであった。
「何の用だ、もう関わらないでくれと言ったはずだが?」
「いや、急に押しかけてすまない。実は…もう一度、助けて貰えないかと思って…大変なんだ」
「自業自得じゃないか」
「ベルアンジュのことは誤解なんだ…」
「虐待していたなんて…私は知らなかったからな!」
援助をしていたことから、関与とまではいかなくても疑われては困る。
それでなくても、ベルーナのことでまだ苛立っていた。向こうで働くことにしたようだが、子どもを抱えて、上手くいくはずがない。泣きついて来ることは目に見えているが、戒めとして籍を外した。
「虐待などしていない」
「そうは判断されなかったから、罰を受けたのだろう」
「ベルアンジュが早く言ってくれていたら、生きていれば、違うと証言が出来たんだ…だが、そうは出来ないだろう」
「援助は出来ない」
「そこを何とかお願い出来ないだろうか…頼む」
チェイスは援助して貰えるなら安いものだと、深く頭を下げた。バスチャン伯爵は押しに弱いわけではないが、しつこく頼むと仕方ないと言ってくれていた。
「断る、前に今までの援助を返金してからだと話したはずだが?」
「…あ、それは」
その話は返さなくていいと思って、忘れてしまっていた。
「キャリーヌもいないのだから、今までよりお金も掛からなくなったのではないのか?まさか、孫を引き取るのか?」
「…知っていたのか」
まさかあのような些細なことを、知られているとは思わなかった。
「当たり前だろう。王城でもお騒ぎしたそうじゃないか!しかも、キャリーヌは労働刑になったはずなのに、子どもを産んだと?おかしいのではないか!」
「それは…キャリーヌが勝手に」
「甘やかした結果だろう!喘息も重くなかったそうじゃないか!てっきり酷いのだと思っていたのだぞ?」
症状が重く、薬代が高額だと聞いていた。だからこそ援助をしていた。今更返して欲しいという気はないが、これ以上は関わりたくもない。
それでなくても、ラオルス公爵との縁がなくなってしまい、我が家も発展するチャンスを失ったのだ。
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あと最終回まで2話です。
最後までどうぞよろしくお願いいたします。
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