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お花畑に住めなくなった家族7
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「それは罪人であるはずのキャリーヌ・ソアリが産んだ子どもですか?」
「っ」
チェイスはルイフォードが知っているとは思っておらず、人前で声を掛けたことを後悔していた。
「ご、ご存知でしたか…」
「確か、本人は刑務所ですよね?子どもは孤児院にいると聞いていますが?なぜ祖父であるあなたが育てないのですか?」
「…それは、厳しい状況でして」
自業自得だろうと思ったが、同じ空気も吸いたくない気分だった。
「ですので、是非、マリクワン侯爵家の養子にして貰えたら、そうです!ベルアンジュも喜ぶことででしょう」
「いい加減にしてくれ」
期待などはしていなかったが、あまりにも相変わらずの態度、いや斜め上の態度に酷く冷たい声が出た。
「え…あの子の姪になるのですよ」
「虐待をしていた親が、よくもそんなことが口に出来ますね」
ルイフォードは子どものことを何か感じたのではないかと思ったが、口振りにそうではないと察した。
「それは誤解があって…虐待など」
「物置小屋に半年も押し込めていたのでしょう?」
「え?ああ…あれは流行り病に感染していたらいけないからですよ」
「医者に診せてもいないのに?」
「ですから、半年だった?よく覚えていませんが、隔離していただけですよ?普通のことではありませんか」
チェイスにとって、ベルアンジュに関することは、大したことという扱いであるため、正直よく覚えていないことであった。そんなこともあったなというくらいで、悪いことをした気もない。
「幼い子どもを物置小屋にですか?半年も?それは虐待ですよ」
「ですから、流行り病に罹っていたら、どうするんですか」
話の聞こえた周りの者が、チェイスを信じられない目で見つめていた。
「看病するべきでしょう?」
「他の者に感染したらどうするのですか!」
「ベルアンジュなら感染していてもいいと?あなたはそう思っていたのですよね?だからそんなことが出来る。普通の親、いえ、人間ならば幼い子を物置小屋に半年も置いたりしない!」
周りの者もルイフォードの言葉にその通りだと思った。
「っいえ、キャリーヌには喘息がありますから」
「離れた部屋にいさせればいいだろう?」
「ですが、万が一ということもありますから」
「ベルアンジュの病気にも気付かない親が、万が一だと?」
万が一という考えがあるのならば、ベルアンジュの病気に気付けたであろう。
「そ、それは…あの子が言わなかったものですから、知りようがないではありませんか。私だって知っていれば、違いました!」
「普通なら侍医が気付くだろうが!ベルアンジュは、たった一人でわざわざ病院に通っていたのだぞ!」
「…あ、…あ」
さすがにチェイスも侍医がいるのに、ベルアンジュは一人で病院に通っていたならば、誤解されても仕方ないだろうとは思った。
「伯爵家には侍医がいなかったのなら分かるが、違うだろう!」
「ベルアンジュも言ってくれれば、ちゃんと治療を受けさせました。虐待だって、全て誤解なのです」
チェイスにとって虐待は、暴力を振るうということで、そのようなことはしていないという理由から、虐待にはまだ納得していない。
「侍医に診なくていいと言っていた者が、今更でも言っていいことではない」
「それは、キャリーヌのことがありましたので…」
「喘息だろう?」
「確かに、NN病とは…比べ物にもなりませんが、辛そうにしていたものですから」
ルイフォードもそうではないかと思ったが、ようやくベルアンジュの病名を知ったのだろう。
「その大事な娘の子どもを大事にしてやればいいだろう」
さすがに手紙の件は庇えなかったようだが、大事な娘だったのだから、孫も大事にするのかと思ったら、孤児院に入れていることが理解が出来ないくらいである。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
あと残すところ3話となります。
最後までどうぞよろしくお願いいたします。
「っ」
チェイスはルイフォードが知っているとは思っておらず、人前で声を掛けたことを後悔していた。
「ご、ご存知でしたか…」
「確か、本人は刑務所ですよね?子どもは孤児院にいると聞いていますが?なぜ祖父であるあなたが育てないのですか?」
「…それは、厳しい状況でして」
自業自得だろうと思ったが、同じ空気も吸いたくない気分だった。
「ですので、是非、マリクワン侯爵家の養子にして貰えたら、そうです!ベルアンジュも喜ぶことででしょう」
「いい加減にしてくれ」
期待などはしていなかったが、あまりにも相変わらずの態度、いや斜め上の態度に酷く冷たい声が出た。
「え…あの子の姪になるのですよ」
「虐待をしていた親が、よくもそんなことが口に出来ますね」
ルイフォードは子どものことを何か感じたのではないかと思ったが、口振りにそうではないと察した。
「それは誤解があって…虐待など」
「物置小屋に半年も押し込めていたのでしょう?」
「え?ああ…あれは流行り病に感染していたらいけないからですよ」
「医者に診せてもいないのに?」
「ですから、半年だった?よく覚えていませんが、隔離していただけですよ?普通のことではありませんか」
チェイスにとって、ベルアンジュに関することは、大したことという扱いであるため、正直よく覚えていないことであった。そんなこともあったなというくらいで、悪いことをした気もない。
「幼い子どもを物置小屋にですか?半年も?それは虐待ですよ」
「ですから、流行り病に罹っていたら、どうするんですか」
話の聞こえた周りの者が、チェイスを信じられない目で見つめていた。
「看病するべきでしょう?」
「他の者に感染したらどうするのですか!」
「ベルアンジュなら感染していてもいいと?あなたはそう思っていたのですよね?だからそんなことが出来る。普通の親、いえ、人間ならば幼い子を物置小屋に半年も置いたりしない!」
周りの者もルイフォードの言葉にその通りだと思った。
「っいえ、キャリーヌには喘息がありますから」
「離れた部屋にいさせればいいだろう?」
「ですが、万が一ということもありますから」
「ベルアンジュの病気にも気付かない親が、万が一だと?」
万が一という考えがあるのならば、ベルアンジュの病気に気付けたであろう。
「そ、それは…あの子が言わなかったものですから、知りようがないではありませんか。私だって知っていれば、違いました!」
「普通なら侍医が気付くだろうが!ベルアンジュは、たった一人でわざわざ病院に通っていたのだぞ!」
「…あ、…あ」
さすがにチェイスも侍医がいるのに、ベルアンジュは一人で病院に通っていたならば、誤解されても仕方ないだろうとは思った。
「伯爵家には侍医がいなかったのなら分かるが、違うだろう!」
「ベルアンジュも言ってくれれば、ちゃんと治療を受けさせました。虐待だって、全て誤解なのです」
チェイスにとって虐待は、暴力を振るうということで、そのようなことはしていないという理由から、虐待にはまだ納得していない。
「侍医に診なくていいと言っていた者が、今更でも言っていいことではない」
「それは、キャリーヌのことがありましたので…」
「喘息だろう?」
「確かに、NN病とは…比べ物にもなりませんが、辛そうにしていたものですから」
ルイフォードもそうではないかと思ったが、ようやくベルアンジュの病名を知ったのだろう。
「その大事な娘の子どもを大事にしてやればいいだろう」
さすがに手紙の件は庇えなかったようだが、大事な娘だったのだから、孫も大事にするのかと思ったら、孤児院に入れていることが理解が出来ないくらいである。
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