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お花畑に住めなくなった家族5
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キャリーヌの妊娠は進み、医療刑務所のため食事は制限されているので、適度に太っているのだが、自分の体がままならないことに荒れており、苦しい、お腹がすいたなどと呼び出すので、問題児となっていた。
「いい加減にしなさい!」
看護師に、医師に、看守に、誰かに怒鳴られている。今日は看護師である。
「私は妊婦なのよ!」
「妊婦の前にあなたは罪人ですよ、反省していないのですか!」
「はあ?」
「陛下に盾突くのような者は、まともではないわ」
生まれてくる子どもも、あなたが母親だなんて不幸だと言いたかったが、医療従事者として控えることにした。
「っな!」
「事実でしょう?罪人が妊娠するなんて前代未聞ですよ」
「私が魅力的だから」
「はあ…相手が誰かも分からないのに?」
皆、子どもの父親は孤児の傭兵だと聞いており、名前も国も事実を言っているとは限らない。今回は傭兵として来ただけで、いつもは違うという可能性すらある。
それでも本気で想い合う者もいるだろうが、何も言わずに別の国に行ったということは、無料の娼婦くらいの扱いだったのだろうと思っている。
相手も罪人だと知っていたら、使い捨てにしてもいいと判断したのかもしれない。
「知っているわ!カイザーは貴族なのよ!」
キャリーヌの中で、出生が不明な精悍な顔立ちの男性は貴族という認識である。今まですり寄っていた相手がそうであっただけで、素朴な顔立ちの男性をただ見てなかっただけなのだが、見た目が全てである。
カイザーはそうだったら面白いなと答えていたのだが、キャリーヌは絶対にそうだと思い込んだ。だから子どもが出来ていると言われた時は、ノーマに言われていたことを思い出しはしたが、これでこんな国を出て、良い生活が出来ると思った。
監視がいたのにどうして関係を持つことが出来たのかは、夜中に暗闇に紛れて抜け出したからであった。喘息も空気が良いせいが、発作が起こることはなかった。
皆疲れているので、夜は眠っており、気付いている者もいたが、関わりたくないので、黙認されていた。うるさく、迷惑なので、ここより辛い場所に移動になって欲しいという思いもあった。
そして、たまたま集落で出会うことになったのが、カイザーであった。
のどかな場での労働刑ということで、キャリーヌは罪人という感覚が薄れていた。
しかも、持病は気を付ければ出産は出来ると言われて、こんなことならアデュエルとマックスとも、子どもを作れば良かったとすら思っていた。
アデュエルは避妊をしており、マックスは孕んでいたら面白いという質だったので違ったが、キャリーヌは妊娠することはなかった。
「あなたが労働刑だとは知っているのでしょう?」
「ええ、来ないのは私がここにいることを知らないからよ!」
間違いなく使い捨てにされたということだろう、相手もいくら無料だとしても、こんな者を相手にしたものだと思った。
まさか子どもが出来たなんて、一生知らないままとなるだろう。
事実を言っても受け入れないことから、希望を持たせて無事に出産させるべきだろう。どちらにしても出産すれば、また労働刑を今度は刑務所で受けることになる。
今後、行動は制限されて、二度と子どもを作るようなことは出来ない。刑期が終わるまで、探しに行くことも出来ない。
「問い合わせれば、分かるはずよ…いつか来るといいわね」
「絶対に来るわ!」
妊娠は順調であるために、どんどん出産の日は迫っていた。
カイザーは探す手立てもないので、見付かるはずもなく、どうして会いに来てくれないのかと嘆いていた。
「いい加減にしなさい!」
看護師に、医師に、看守に、誰かに怒鳴られている。今日は看護師である。
「私は妊婦なのよ!」
「妊婦の前にあなたは罪人ですよ、反省していないのですか!」
「はあ?」
「陛下に盾突くのような者は、まともではないわ」
生まれてくる子どもも、あなたが母親だなんて不幸だと言いたかったが、医療従事者として控えることにした。
「っな!」
「事実でしょう?罪人が妊娠するなんて前代未聞ですよ」
「私が魅力的だから」
「はあ…相手が誰かも分からないのに?」
皆、子どもの父親は孤児の傭兵だと聞いており、名前も国も事実を言っているとは限らない。今回は傭兵として来ただけで、いつもは違うという可能性すらある。
それでも本気で想い合う者もいるだろうが、何も言わずに別の国に行ったということは、無料の娼婦くらいの扱いだったのだろうと思っている。
相手も罪人だと知っていたら、使い捨てにしてもいいと判断したのかもしれない。
「知っているわ!カイザーは貴族なのよ!」
キャリーヌの中で、出生が不明な精悍な顔立ちの男性は貴族という認識である。今まですり寄っていた相手がそうであっただけで、素朴な顔立ちの男性をただ見てなかっただけなのだが、見た目が全てである。
カイザーはそうだったら面白いなと答えていたのだが、キャリーヌは絶対にそうだと思い込んだ。だから子どもが出来ていると言われた時は、ノーマに言われていたことを思い出しはしたが、これでこんな国を出て、良い生活が出来ると思った。
監視がいたのにどうして関係を持つことが出来たのかは、夜中に暗闇に紛れて抜け出したからであった。喘息も空気が良いせいが、発作が起こることはなかった。
皆疲れているので、夜は眠っており、気付いている者もいたが、関わりたくないので、黙認されていた。うるさく、迷惑なので、ここより辛い場所に移動になって欲しいという思いもあった。
そして、たまたま集落で出会うことになったのが、カイザーであった。
のどかな場での労働刑ということで、キャリーヌは罪人という感覚が薄れていた。
しかも、持病は気を付ければ出産は出来ると言われて、こんなことならアデュエルとマックスとも、子どもを作れば良かったとすら思っていた。
アデュエルは避妊をしており、マックスは孕んでいたら面白いという質だったので違ったが、キャリーヌは妊娠することはなかった。
「あなたが労働刑だとは知っているのでしょう?」
「ええ、来ないのは私がここにいることを知らないからよ!」
間違いなく使い捨てにされたということだろう、相手もいくら無料だとしても、こんな者を相手にしたものだと思った。
まさか子どもが出来たなんて、一生知らないままとなるだろう。
事実を言っても受け入れないことから、希望を持たせて無事に出産させるべきだろう。どちらにしても出産すれば、また労働刑を今度は刑務所で受けることになる。
今後、行動は制限されて、二度と子どもを作るようなことは出来ない。刑期が終わるまで、探しに行くことも出来ない。
「問い合わせれば、分かるはずよ…いつか来るといいわね」
「絶対に来るわ!」
妊娠は順調であるために、どんどん出産の日は迫っていた。
カイザーは探す手立てもないので、見付かるはずもなく、どうして会いに来てくれないのかと嘆いていた。
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