【完結】あの子の代わり

野村にれ

文字の大きさ
上 下
64 / 73

お花畑に住めなくなった家族1

しおりを挟む
 ソアリ伯爵は王城で、マリクワン侯爵に孫がいることを耳にして、ルイフォードが養子を取ったのだと思っていた。

 それならば、ベルアンジュを離縁させて、邸に戻せば良かった。死ぬにしても、無理矢理にでも戻していれば、虐待で裁かれることもなかった。

 それから、私たちの予定通りにキャリーヌがルイフォードに嫁いで、養子を取れば良かったなどと考えていた。

 だが、そのキャリーヌは労働刑となり、さすがに庇うことは出来ない、お金はどうにもならなかったので、借金も背負わなくていいとホッとした癖に、離れて働いていると思うと、可哀想にという気持ちになっていた。

 ベントルは部屋からほとんど出て来なくなった、援助してくれる令嬢が嫁いでくれればいいが、縁談を持ち込む前から会っても貰えない。

 今でもベルアンジュに酷いことをしたという感覚もなく、キャリーヌが病気なのだから、悪いことをしたとも思っていない。

 誤解だと言うべきベルアンジュべのせいだとは思っているが、亡くなっていることから、どこにもぶつけられず、何も解決しないことも分かっているが、考えることを止められない。

 今のところ日々の生活は出来ているが、このままでは伯爵家は継続が出来ない。

 私の代で終わるなど、プライドが許さない。ベントルに譲ったところで、没落が早まるだけである。

 援助をして貰えれば、キャリーヌもいないことから、持ち直せるかもしれないと、バスチャン伯爵にお伺いを立てて置こうと思っていたが、ベルーナの白紙となったそうで、荒れていると聞くことになった。

 そんな時に、援助の話をするのは得策ではないことくらい分かる。

「参ったな…」
「どうしたの?」
「ベルーナの婚約が白紙になったらしい」
「そうなの?元々、ベルーナに公爵家なんて無理だと思っていたのよ!私の勘が当たったわね」

 ノーマはベルーナがラオルス公爵家に嫁ぐことを聞いた際に、良かったわねと言いながらも、どうしてベルーナなんかがと、悔しく思っていた。ゆえに白紙には笑いが漏れそうだったが、下品なので堪えた。

「そんな話ではない!援助の話をしてみようと思っていたんだ…それなのに、荒れているそうでな。そんな際に話は出来ないだろう?」
「それは、そうね…」
「ラオルス公爵家と縁続きになれば、援助して貰えたと思わないか」
「あっ、ええ…」

 ノーマはバスチャン伯爵夫人に勝ちたい、馬鹿にしたいが、また援助はして貰いたいと思っていた。夫が言ってくれるなら、自分は関係ない顔をすればいい、だが婚約の白紙が影響するなんてと思っていた。

 結局、頼むことが出来ないまま、時は過ぎていた。

 ある日、キャリーヌが妊娠したと修道院から手紙が届いた。

「は?どういうことだ…」
「どうしたの?」
「キャリーヌが妊娠したと…」
「妊娠って、あの子は持病があるのよ?妊娠も出産も、危険だから出来ないと言ってあったでしょう」

 ノーマもチェイスと一緒で、離れてから可哀想だと心配している。

 それ以前にキャリーヌの男性関係を知らないはずなのに、簡単に男性と関係を持つ方に、疑問を持たないのかと思うところである。

「刑に服しているのに、どうして妊娠することになるんだ?」
「何かの間違いではないの?」

 チェイスが手紙を読み進めると、事実であることが書かれていた。

「偶然、貴族令息と知り合って、関係を持って、子どもが出来たということらしい。キャリーヌは結婚すると言っていると、王家にも報告をしてあり、結婚は出来るならばすればいいが、刑は続くということらしい」

 結局、キャリーヌはアデュエルとマックスと同じことを繰り返していた。

「貴族令息と、どこで知り合うの?」
「貴族令息ではないらしい…」
「何ですって…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

夫の浮気相手と一緒に暮らすなんて無理です!

火野村志紀
恋愛
トゥーラ侯爵家の当主と結婚して幸せな夫婦生活を送っていたリリティーヌ。 しかしそんな日々も夫のエリオットの浮気によって終わりを告げる。 浮気相手は平民のレナ。 エリオットはレナとは半年前から関係を持っていたらしく、それを知ったリリティーヌは即座に離婚を決める。 エリオットはリリティーヌを本気で愛していると言って拒否する。その真剣な表情に、心が揺らぎそうになるリリティーヌ。 ところが次の瞬間、エリオットから衝撃の発言が。 「レナをこの屋敷に住まわせたいと思うんだ。いいよね……?」 ば、馬鹿野郎!!

愛は全てを解決しない

火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。 それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。 しかしデセルバート家は既に没落していた。 ※なろう様にも投稿中。

無価値な私はいらないでしょう?

火野村志紀
恋愛
いっそのこと、手放してくださった方が楽でした。 だから、私から離れようと思うのです。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

あなたが望んだ、ただそれだけ

cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。 国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。 カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。 王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。 失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。 公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。 逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。  心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...