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お花畑だった家族の真実9
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処罰が決まって、ソアリ伯爵夫妻が呼ばれることになった。まずはどうして偽証罪となったのかが、ようやく知らされることになった。
まずは宰相であるミラビット公爵が、キャリーヌがベルアンジュの書いたと言った手紙を、机の上に置き、触らずに読むように告げた。
「こ、これは…」
「ベルアンジュの手紙…虐待ではないと書いてあるわ」
ノーマは嬉々とした声を上げ、キャリーヌが偽証罪で拘束されているというのに、愚かな姿である。
「ああ、ベルアンジュはちゃんと残していたんだな」
チェイスも同じように愚かであった。夫婦そろって虐待していたことから、二人の考えはとても似ているのだろう。
「あの、これで虐待ではないと、分かっていただけるということでしょうか」
「何を言っているのだ?」
「…え、ですが、ここにベルアンジュが虐待ではないと」
チェイスもノーマもキャリーヌと同じように、この手紙で虐待ではないと証明が出来ると思っている。
既にベルアンジュへの虐待は、証拠もあり、証言もされており、この手紙だけで覆ることはないことが分からないのか。
「その手紙の字は、ベルアンジュの書いたものか?」
「ええ、サインもありますから」
「虐待する親は子どもの筆跡は分からないんだな…」
その言葉にチェイスもノーマも絶句した。正直、多数の書類から、ベルアンジュの筆跡を見付けろと言われても、出来る気はしない。
「い、いえ、あまり見たことがないものですから」
「普通はあり得ない。離れて暮らしていても手紙のやり取りくらいはする、サインを見る機会だって、テストを見たりすることもあるだろう」
そもそも、この夫妻はベルアンジュの字ではないとしても、キャリーヌの字だとも気付かないのだろうか。
「そういったことはあまりなかったものですから…」
「学園に通わせなかったんだものな」
「それは、あの子が行かなくてもいいと」
「妹が通えないのだからと、行かせなかったの間違いだろう?いい加減にしろよ」
ミラビット公爵は、もはや叩き潰すことしか考えていない。
「ベルアンジュがそう言ったのですか?それは、デタラメです」
「そうです、あの子が行かなくていいと言ったのです」
「同じ言葉を繰り返すのは、止めてくれないか?虐待は既に裁かれていることを忘れているのか?」
マリクワン侯爵には宰相として、ゆっくり没落していく方が混乱が少なく、ベルアンジュ夫人の名声が上がるとともに、落ちぶれていけばいいと判断した。
だが個人としては、もっと酷い罰にしたかった。ベルアンジュ夫人が生きていたら、目の前で地べたを這いつくばって、罵られる姿を見せてやりたかった。
「ですが」
「自覚がないのもいい加減にしろ!お前たちは、虐待をしたことすら、理解が出来ないのか?お前たちに同じ目に遭わせるべきか?」
「ひぃ」
ミラビット公爵は証拠の手紙を手に戻した。
「この手紙は、キャリーヌ・ソアリが、ベルアンジュ・マリクワンの書いたものだと言って、持って来たものだ」
「キャリーヌが?」
「ああ、自作自演だった。キャリーヌの筆跡は、ベルアンジュ夫人への手紙を預かっていたからな。鑑定をさせて、証明された。そもそも、素人が見ても判別できる出来であった」
今までで一番、簡単な仕事だったという。
「キャリーヌは慰謝料をどうにかしようと思って、切羽詰まっていたのでしょう」
「そうだとしても、自作自演の手紙を渡して欲しいと言った相手は国王陛下だ。国王陛下に虚偽を行ったことになる」
「そ、それは…」
「どれほどの罪になるかは、貴族ならば、さすがに分かるであろう?」
チェイスもノーラも事が大きくなってしまっただけだと思ったが、そうではなく、わざわざ国王陛下に虚偽を行ったことに、絶望した。
まずは宰相であるミラビット公爵が、キャリーヌがベルアンジュの書いたと言った手紙を、机の上に置き、触らずに読むように告げた。
「こ、これは…」
「ベルアンジュの手紙…虐待ではないと書いてあるわ」
ノーマは嬉々とした声を上げ、キャリーヌが偽証罪で拘束されているというのに、愚かな姿である。
「ああ、ベルアンジュはちゃんと残していたんだな」
チェイスも同じように愚かであった。夫婦そろって虐待していたことから、二人の考えはとても似ているのだろう。
「あの、これで虐待ではないと、分かっていただけるということでしょうか」
「何を言っているのだ?」
「…え、ですが、ここにベルアンジュが虐待ではないと」
チェイスもノーマもキャリーヌと同じように、この手紙で虐待ではないと証明が出来ると思っている。
既にベルアンジュへの虐待は、証拠もあり、証言もされており、この手紙だけで覆ることはないことが分からないのか。
「その手紙の字は、ベルアンジュの書いたものか?」
「ええ、サインもありますから」
「虐待する親は子どもの筆跡は分からないんだな…」
その言葉にチェイスもノーマも絶句した。正直、多数の書類から、ベルアンジュの筆跡を見付けろと言われても、出来る気はしない。
「い、いえ、あまり見たことがないものですから」
「普通はあり得ない。離れて暮らしていても手紙のやり取りくらいはする、サインを見る機会だって、テストを見たりすることもあるだろう」
そもそも、この夫妻はベルアンジュの字ではないとしても、キャリーヌの字だとも気付かないのだろうか。
「そういったことはあまりなかったものですから…」
「学園に通わせなかったんだものな」
「それは、あの子が行かなくてもいいと」
「妹が通えないのだからと、行かせなかったの間違いだろう?いい加減にしろよ」
ミラビット公爵は、もはや叩き潰すことしか考えていない。
「ベルアンジュがそう言ったのですか?それは、デタラメです」
「そうです、あの子が行かなくていいと言ったのです」
「同じ言葉を繰り返すのは、止めてくれないか?虐待は既に裁かれていることを忘れているのか?」
マリクワン侯爵には宰相として、ゆっくり没落していく方が混乱が少なく、ベルアンジュ夫人の名声が上がるとともに、落ちぶれていけばいいと判断した。
だが個人としては、もっと酷い罰にしたかった。ベルアンジュ夫人が生きていたら、目の前で地べたを這いつくばって、罵られる姿を見せてやりたかった。
「ですが」
「自覚がないのもいい加減にしろ!お前たちは、虐待をしたことすら、理解が出来ないのか?お前たちに同じ目に遭わせるべきか?」
「ひぃ」
ミラビット公爵は証拠の手紙を手に戻した。
「この手紙は、キャリーヌ・ソアリが、ベルアンジュ・マリクワンの書いたものだと言って、持って来たものだ」
「キャリーヌが?」
「ああ、自作自演だった。キャリーヌの筆跡は、ベルアンジュ夫人への手紙を預かっていたからな。鑑定をさせて、証明された。そもそも、素人が見ても判別できる出来であった」
今までで一番、簡単な仕事だったという。
「キャリーヌは慰謝料をどうにかしようと思って、切羽詰まっていたのでしょう」
「そうだとしても、自作自演の手紙を渡して欲しいと言った相手は国王陛下だ。国王陛下に虚偽を行ったことになる」
「そ、それは…」
「どれほどの罪になるかは、貴族ならば、さすがに分かるであろう?」
チェイスもノーラも事が大きくなってしまっただけだと思ったが、そうではなく、わざわざ国王陛下に虚偽を行ったことに、絶望した。
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