【完結】あの子の代わり

野村にれ

文字の大きさ
上 下
43 / 73

お花畑だった家族の真実1

しおりを挟む
 ベルアンジュの病気が発表されたことで、ソアリ伯爵家はキャリーヌが病気だから、優遇していたという話は、キャリーヌの病名を知らない者は、NN病以上の病気だったのかと考えた。

 だが、病名を隠していないので、気管支喘息だと知らされると、NN病の娘を虐待して、気管支喘息の娘を優遇していたのかと、驚愕した。

「信じられないな」
「ああ、虐待だけでも信じられないのに」
「学園にも、妹が通えないからと、通わせなかったんだろう?」
「ああ、そうらしい」

 リランダ医師ですら、そう思ったのだから、医師でもない者は、あり得ないと、さらなる不信感を生んだ。

 いつまで経っても手応えのないキャリーヌは、ようやくベルアンジュへの虐待が問題になって、敬遠されていることを聞かされた。

「虐待なんかじゃないわ、私の方が可哀想だから、優遇されていたことが、誤解されただけなの」
「王家が認めているのに、誤解だと言うのか?」
「そうよ、お姉様は望んでいたのに、亡くなってしまったから、証言できないでしょう?だから分かって貰えなかっただけなの」

 キャリーヌはまともに話を聞いてもらえたことで、ペラペラと自分の思い描いた筋書きを話し続けた。

 それが王家に意見していると言う感覚はなく、さらに罰を下した宰相であるミラビット公爵と、ラオルス公爵、被害を受けたマリクワン侯爵にも、意見していることも分かっていない。

 気色が悪い、関わりたくないと思って、さらに離れていったが、話を聞いてもらえたことで、キャリーヌは手応えを感じていた。

 そして、キャリーヌは自分を心配して、愛している架空の姉を作り出し、その姉に成りきって、手紙を書いた。

『私は可愛いキャリーヌを大事に思っている。キャリーヌが優遇されていたことも、キャリーヌは辛い毎日で、大切にされることで、少しでも辛さが減ればいいと思っていた。私は納得していることで、虐待ではない』と、ベルアンジュが書いていたことにしようと思いついたからであった。

 脅して書かせたのならともかく、ベルアンジュは亡くなってしまっているのに、そんな未来を見据えた都合のいい手紙が、存在するはずがない。

 一応、サインだけはベルアンジュのノートを見て書いたが、内容は筆跡すら違うが、分からないでしょうと安易に考え、すっかりいい気分になったキャリーヌには、これで完璧だと思った。

 その後も、パーティーに参加し続けており、手紙を誰に託そうかと考えていた。両親ではなかったことは、すっかり相手にされなくなったので、頼りたくなかった。

 両親は生活が掛かっているので、少しでもお金を稼ごうと、忙しくしているだけであった。

 そして、ある日、パーティーで男性と知り合った。男性はマックスと言い、海を隔てたオマー王国の人間で、色々な国を見るために、外遊をしているという。

 キャリーヌは、上等な服装に、美しい顔をしたマックスに、いつものように自分がどれだけ辛い目に遭っていて、苦しい状況なのかを話して聞かせると、マックスはそうなのかと、ずっと聞いてくれた。

 それだけでキャリーヌの気持ちは高揚し、アデュエルに会えなくなってしまって、時間も経っており、身も心も非常に飢えていた。

 言われるがまま、ホイホイ付いて行き、ドレスを買って貰い、すぐに体を許した。

 アデュエルに縋りついていたが、元々、男好きのキャリーヌは、アデュエルと同じように溺れていった。

 両親は忙しくしていて、兄は部屋に籠っている、誰もキャリーヌが何をしているか、気にしていなかった。今までであれば、医師が頻繁に来ていたが、それも呼べなくなって、薬の処方だけはして貰っていた。

 キャリーヌは、マックスに手紙の存在を打ち明けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛は全てを解決しない

火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。 それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。 しかしデセルバート家は既に没落していた。 ※なろう様にも投稿中。

私は私を大切にしてくれる人と一緒にいたいのです。

火野村志紀
恋愛
花の女神の神官アンリエッタは嵐の神の神官であるセレスタンと結婚するが、三年経っても子宝に恵まれなかった。 そのせいで義母にいびられていたが、セレスタンへの愛を貫こうとしていた。だがセレスタンの不在中についに逃げ出す。 式典のために神殿に泊まり込んでいたセレスタンが全てを知ったのは、家に帰って来てから。 愛らしい笑顔で出迎えてくれるはずの妻がいないと落ち込むセレスタンに、彼の両親は雨の女神の神官を新たな嫁にと薦めるが……

無価値な私はいらないでしょう?

火野村志紀
恋愛
いっそのこと、手放してくださった方が楽でした。 だから、私から離れようと思うのです。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。

火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。 しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。 数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

処理中です...