39 / 73
誕生3
しおりを挟む
「ベルーナ嬢には感謝してもしきれない。これからも何かあったら力になる」
「いえ、私は既にルイフォード様に恩のある身です。私も初めは恩返し、負い目もありましたが、私のしたいことをしたまでです」
「拭えたか?」
「はいと言っては申し訳ないですが、達成感というのでしょうか、私の使命を果たせたように思います」
「そうか」
ベルーナは婚約を解消する際に、子どものためなら何でもすると言い切り、結婚したい気持ちは勿論あっただろうが、オーカスと結婚が出来なかったとしても、メイアンを産むことは揺らがなかっただろう。
オーカスは当時はまだ医学生で、バスチャン伯爵家に正直に言えば、引き離されてしまうことは分かっていた。
誠実だとは言えない状況で、結婚が出来ないことには心苦しくは思っていたが、ベルーナを裏切るような青年ではないと感じた。でも同時に医師になることを、諦めることは出来ない。
きっと二人は思い合ってはいるが、気持ちは自立しているのだろうと思った。
「でも妊娠してからは、この子たちがベルアンジュの分も生きてくれたら、きっとベルアンジュは喜んでくれると、勝手に思っただけなのです」
ベルーナは医療関係者に、何か方法はないか聞いた。
だが誰に聞いてもNN病だと聞けば、暗い顔をする。
動ける病だから、やりたいことをした方がいい。悔いの残らないようにと言われて、私も悔いを残したくないと思った。
ベルアンジュが治らない以上、ルイフォードのためでもあったが、ベルアンジュが生きた証を残したかった。子どもたちを見て、ベルアンジュを感じたい。
あなたは生まれて来て良かったと、ベルアンジュにも、周りにも思って欲しかった。ベルアンジュがいなくなった後は、その思いをベルアンジュと子どもへと向けて欲しかった。
そして、一番の願いはベルアンジュを忘れて欲しくなかった。
「そうか…ありがとう」
「私はこの子達を産んだことが、誇りですから、ルイフォード様にお渡しするまで、しっかり育てます」
「ありがとう…」
「大きくなったら、遊ばせましょうね」
「ああ、勿論だ」
話をしていると双子が目を覚まし、父と子たちは初めての対面を果たした。
ルイフォードはおぼつかない手つきで抱き上げ、祖父となるイサードも、ルイフォードに接して来なかったために、同様におぼつかない手つきで、ベルーナやリンダ、オーカスにすら困った顔をされた。
「本当にベルアンジュと同じ瞳の色だな、綺麗な色をしている」
「ベルアンジュに似た女の子じゃなくてごめんなさいね」
「いや、どちらでも構わなかったが、ベルアンジュに似た女の子だったら、怒れなかったかもしれない」
「ふふっ、それはそうかもしれませんね」
ルイフォードを中心に双子の名前を、まだ強く似ているわけではないが、ルイフォードに似ている方にリオード、ベルアンジュに似ている方をジュリと名付けた。
イサードはリンダと、リオードとジュリの申請の手続きを済ませて、二人はベルーナたちによろしく頼むとお願いをして、母国に戻った。
マイルダとパウラに双子だったと告げると驚き、特にマイルダは何やら慌てて、乳母の手配もありますからと、次は私たちが向かいますと、子どもたちの元へ向かってしまったくらいである。
二人もいずれは行くつもりだったが、子どもに必要なものはマイルダが既に手配して送っていたが、双子であることで、ベルーナは今でも好待遇過ぎると思っていたので、気にもしていなかったが、足りないと焦ったからであった。
そして、ソアリ伯爵家はついに支払い期限を迎えていた。
「いえ、私は既にルイフォード様に恩のある身です。私も初めは恩返し、負い目もありましたが、私のしたいことをしたまでです」
「拭えたか?」
「はいと言っては申し訳ないですが、達成感というのでしょうか、私の使命を果たせたように思います」
「そうか」
ベルーナは婚約を解消する際に、子どものためなら何でもすると言い切り、結婚したい気持ちは勿論あっただろうが、オーカスと結婚が出来なかったとしても、メイアンを産むことは揺らがなかっただろう。
オーカスは当時はまだ医学生で、バスチャン伯爵家に正直に言えば、引き離されてしまうことは分かっていた。
誠実だとは言えない状況で、結婚が出来ないことには心苦しくは思っていたが、ベルーナを裏切るような青年ではないと感じた。でも同時に医師になることを、諦めることは出来ない。
きっと二人は思い合ってはいるが、気持ちは自立しているのだろうと思った。
「でも妊娠してからは、この子たちがベルアンジュの分も生きてくれたら、きっとベルアンジュは喜んでくれると、勝手に思っただけなのです」
ベルーナは医療関係者に、何か方法はないか聞いた。
だが誰に聞いてもNN病だと聞けば、暗い顔をする。
動ける病だから、やりたいことをした方がいい。悔いの残らないようにと言われて、私も悔いを残したくないと思った。
ベルアンジュが治らない以上、ルイフォードのためでもあったが、ベルアンジュが生きた証を残したかった。子どもたちを見て、ベルアンジュを感じたい。
あなたは生まれて来て良かったと、ベルアンジュにも、周りにも思って欲しかった。ベルアンジュがいなくなった後は、その思いをベルアンジュと子どもへと向けて欲しかった。
そして、一番の願いはベルアンジュを忘れて欲しくなかった。
「そうか…ありがとう」
「私はこの子達を産んだことが、誇りですから、ルイフォード様にお渡しするまで、しっかり育てます」
「ありがとう…」
「大きくなったら、遊ばせましょうね」
「ああ、勿論だ」
話をしていると双子が目を覚まし、父と子たちは初めての対面を果たした。
ルイフォードはおぼつかない手つきで抱き上げ、祖父となるイサードも、ルイフォードに接して来なかったために、同様におぼつかない手つきで、ベルーナやリンダ、オーカスにすら困った顔をされた。
「本当にベルアンジュと同じ瞳の色だな、綺麗な色をしている」
「ベルアンジュに似た女の子じゃなくてごめんなさいね」
「いや、どちらでも構わなかったが、ベルアンジュに似た女の子だったら、怒れなかったかもしれない」
「ふふっ、それはそうかもしれませんね」
ルイフォードを中心に双子の名前を、まだ強く似ているわけではないが、ルイフォードに似ている方にリオード、ベルアンジュに似ている方をジュリと名付けた。
イサードはリンダと、リオードとジュリの申請の手続きを済ませて、二人はベルーナたちによろしく頼むとお願いをして、母国に戻った。
マイルダとパウラに双子だったと告げると驚き、特にマイルダは何やら慌てて、乳母の手配もありますからと、次は私たちが向かいますと、子どもたちの元へ向かってしまったくらいである。
二人もいずれは行くつもりだったが、子どもに必要なものはマイルダが既に手配して送っていたが、双子であることで、ベルーナは今でも好待遇過ぎると思っていたので、気にもしていなかったが、足りないと焦ったからであった。
そして、ソアリ伯爵家はついに支払い期限を迎えていた。
2,737
お気に入りに追加
3,918
あなたにおすすめの小説
愛は全てを解決しない
火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。
それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。
しかしデセルバート家は既に没落していた。
※なろう様にも投稿中。
私は私を大切にしてくれる人と一緒にいたいのです。
火野村志紀
恋愛
花の女神の神官アンリエッタは嵐の神の神官であるセレスタンと結婚するが、三年経っても子宝に恵まれなかった。
そのせいで義母にいびられていたが、セレスタンへの愛を貫こうとしていた。だがセレスタンの不在中についに逃げ出す。
式典のために神殿に泊まり込んでいたセレスタンが全てを知ったのは、家に帰って来てから。
愛らしい笑顔で出迎えてくれるはずの妻がいないと落ち込むセレスタンに、彼の両親は雨の女神の神官を新たな嫁にと薦めるが……
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。
火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。
しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。
数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる