【完結】あの子の代わり

野村にれ

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誕生2

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 髪色は二人ともルイフォードの黒髪で、眠っているので、瞳の色は分からない。起こそうとは思わないが、何色か分からないかと、覗き込んでしまっていた。

「ベルアンジュの面影を探してしまいますよね。瞳は二人とも、ベルアンジュのアンバーですよ」

 ベルーナは子どもが生まれて、どんな気持ちになるか分からなかった。もしかしたら、手放したくないと思ってしまうのは覚悟していた。

 だが、気持ちとは別に、自分ともオーカスとも違う子どもたちに、とても大事で可愛いが、私の子どもではないと思えた。そして、無意識にベルアンジュに似ているところはないかと、探していた。

 だから二人の思いは手に取るように分かった。

「本当か?」
「ええ、とても綺麗な色よ」

 そうか、そうかと、ルイフォードも、イサードも分かり易い繋がりに涙ぐんだ。

「名前を聞かなければと思っていましたの」
「ああ…」
「考えていたでしょう?」
「ベルアンジュが、男女一つずつ考えてくれたんだ」
「あっ…そうよね、知らせなかったから、ごめんなさい」

 生まれてから知らせればいいと思っていたが、ベルアンジュは何か残しているかもしれないのに、準備することが出来なくなってしまった。

 今更ではあるが、取り返しのつかないことをしてしまった。

「謝ることはない。こちらのことを考えてくれたのだろう?」
「でも名前を…」
「いや、男の子だったらリオードと」
「リオード、いい名前ですね」

 皆、いいなと笑顔で頷いている。

「ジュリというのは、男の子でも大丈夫だろうか?」
「いいのではないか」
「ええ、私もとても良いと思いますわ」

 リンダとオーカスもいいのではないかと、顔を見合わせて頷いている。

「目を覚ましたら、似合う方を考えないといけませんね」

 そう言って、ベルーナは涙を拭いながら、微笑んだ。その様子にルイフォードは改めて、3人にお礼を言うことにした。

「ベルーナ嬢、リンダ医師、オーカス医師、本当にありがとう」
「頑張ったのは、ベルーナです」
「はい、その通りです」
「それでも複雑な思いだっただろう。理解と協力に感謝する」

 ルイフォードは二人に向かって頭を下げると、勿体ないお言葉ですと恐縮した。

「ベルアンジュ様は可哀想な身の上に、皆は同情し過ぎている。きっと、何十年も経てば、思い出になるはず。だから今だけの感情は些細なことではないかと私にもおっしゃいました」
「そのようなことは、あり得ない!」
「はい、分かっております。失礼ながら、今を見なくては、将来は見えないのではないかとお話ししました」

 同情でも感情的になるのも、皆がベルアンジュを想っている証拠だった。でもそれもきっと身の上のせいだと思い込んでいる様子だった。

 リンダもベルーナから、ソアリ伯爵家のことは聞いて、怒りが込み上げた。この人にどうか未来を、明日を見て欲しいと思ってしまった。

「すぐに私はもう未来が見えていなかったのねと、謝られました。それでもベルーナ、弟、メイアンのことを優先して欲しいと、何かあったら、死んでも死にきれないと、笑えない冗談を言われました。それでも、私も後悔はありません」
「そうでしたか…」

 皆が同じ方向を向いていた中で、ベルアンジュだけは、見えない未来を見ていたのかもしれない。それでも私たちにはそれしかなかった。

 きっと、ベルアンジュは合わせてくれていたのだろう。

 それでも子どもの名前を考えたり、子どものために残そうとしてくれた。それが子どもたちへの母からの愛になると信じている。
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