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お花畑にいられなくなる家族
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糾弾された後、邸に戻ったソアリ伯爵家の面々は、キャリーヌを責めていた。
「キャリーヌはどういうことなの!」
「ちゃんと話しなさい」
「ルイフォード様に会っていたのではないのか?」
「…」
皆、ルイフォードにこっそり会っているのだろうと思っていた。だからこそ、何をしているのだと責めることはなかったと言える。
「男爵家の男と会っていたって言うの?」
「そんな男のために金を渡していたんじゃないぞ」
「ベルアンジュも死ぬなら言えよ…はあ」
娘が妹が姉が亡くなったと知らされて、亡骸も見たはずなのに、使える駒がなくなったくらいで、変わることはなかった。
ソアリ伯爵家では、キャリーヌに優しくするのは、病気だからで、それがとても良いことだと、皆で助け合っているのだと思っていた。
「ベルアンジュへの虐待に、マリクワン侯爵家への詐欺行為、名誉棄損って言ってたよな?これからどうなるんだよ…」
急に冷静になったのは、ベントルであった。
「きっと、大丈夫よ」
「俺は知らないからな、手紙など書いていない。書いていたのは父上とキャリーヌだろう」
その言葉にノーマもビクッとした。
「母上も書いていたのか?」
「それは…その、マリクワン侯爵家ならお金が沢山あるでしょう?だから、その…」
ベントルはキャリーヌを優先はしていたが、ベルアンジュにお金を持って来いなどという考えは持っていなかった。
ショックで何も話さないキャリーヌに、皆は休むことにしたが、その早朝にキャリーヌはアデュエルに会いに飛び出していた。
翌朝、キャリーヌがいないことに気付き、ベルアンジュの葬儀はすっかり忘れ去られてしまった。
男爵家に行ったのだろうと調べて迎えに行ったが、アデュエルはいないと言われて、そうなればキャリーヌもいるはずがない。
アデュエルはふらふらしているので、約束でもしなければ、なかなか会うことは出来ない。
キャリーヌも来週は一週間はホテルにいると言われて、そこへ訪ねていた。キャリーヌはアデュエルを探し回ったが、見付けることは出来なかった。
そして、キャリーヌは本当はアデュエルと共にお願いに行くつもりだった、オーバス侯爵家にも向かった。
「アデュエルを認めてあげてください。縁を切っても家族は家族でしょう?」
「アデュエルが言ったのか?」
「いえ、でも家族は優しくするべきです。彼には居場所が必要なんです」
たまたま出掛ける侯爵と話すことは出来たが、鼻で笑われただけで、去って行かれてしまった。
キャリーヌは結局、アデュエルを見付けられないまま、ソアリ伯爵家に戻るしかなかった。
「どこへ行っていたんだ!」
「アデュエルを探していたの!」
「探してどうする!男爵家に嫁に行くのか?嫡男ですらないだろう」
「オーバス侯爵家だって言っているでしょう!」
「縁切りをされているんだろう?」
皆、アデュエルのことを詳しくは知らないが、縁切りをしているのならば、関係ない存在であることくらいは理解している。
「それでも家族なら認めて、家族は助け合うべきでしょう?」
「それはそうだが…縁切りをされているのならば、強い理由があるはずだ。侯爵家に嫁ぐなど出来るはずがない」
「戻してもらえばいいじゃない」
「そんなことはまずあり得ない。継ぐ者が誰もいなくなっても、縁者から選ばれるだろうからな。縁切りとはそういうものだ」
縁切りを戻すというのは、罪を犯して、実は冤罪だったという理由くらいしかない。罪を犯したようなことはさすがに聞いたことがないため、冤罪も何もない。
「そんな…じゃあ…」
「オーバス侯爵家に戻るなんてことはない」
「騙されたのよ、酷い男ね」
騙されたわけではないことは分かっているキャリーヌは、何も言えなくなった。
「キャリーヌはどういうことなの!」
「ちゃんと話しなさい」
「ルイフォード様に会っていたのではないのか?」
「…」
皆、ルイフォードにこっそり会っているのだろうと思っていた。だからこそ、何をしているのだと責めることはなかったと言える。
「男爵家の男と会っていたって言うの?」
「そんな男のために金を渡していたんじゃないぞ」
「ベルアンジュも死ぬなら言えよ…はあ」
娘が妹が姉が亡くなったと知らされて、亡骸も見たはずなのに、使える駒がなくなったくらいで、変わることはなかった。
ソアリ伯爵家では、キャリーヌに優しくするのは、病気だからで、それがとても良いことだと、皆で助け合っているのだと思っていた。
「ベルアンジュへの虐待に、マリクワン侯爵家への詐欺行為、名誉棄損って言ってたよな?これからどうなるんだよ…」
急に冷静になったのは、ベントルであった。
「きっと、大丈夫よ」
「俺は知らないからな、手紙など書いていない。書いていたのは父上とキャリーヌだろう」
その言葉にノーマもビクッとした。
「母上も書いていたのか?」
「それは…その、マリクワン侯爵家ならお金が沢山あるでしょう?だから、その…」
ベントルはキャリーヌを優先はしていたが、ベルアンジュにお金を持って来いなどという考えは持っていなかった。
ショックで何も話さないキャリーヌに、皆は休むことにしたが、その早朝にキャリーヌはアデュエルに会いに飛び出していた。
翌朝、キャリーヌがいないことに気付き、ベルアンジュの葬儀はすっかり忘れ去られてしまった。
男爵家に行ったのだろうと調べて迎えに行ったが、アデュエルはいないと言われて、そうなればキャリーヌもいるはずがない。
アデュエルはふらふらしているので、約束でもしなければ、なかなか会うことは出来ない。
キャリーヌも来週は一週間はホテルにいると言われて、そこへ訪ねていた。キャリーヌはアデュエルを探し回ったが、見付けることは出来なかった。
そして、キャリーヌは本当はアデュエルと共にお願いに行くつもりだった、オーバス侯爵家にも向かった。
「アデュエルを認めてあげてください。縁を切っても家族は家族でしょう?」
「アデュエルが言ったのか?」
「いえ、でも家族は優しくするべきです。彼には居場所が必要なんです」
たまたま出掛ける侯爵と話すことは出来たが、鼻で笑われただけで、去って行かれてしまった。
キャリーヌは結局、アデュエルを見付けられないまま、ソアリ伯爵家に戻るしかなかった。
「どこへ行っていたんだ!」
「アデュエルを探していたの!」
「探してどうする!男爵家に嫁に行くのか?嫡男ですらないだろう」
「オーバス侯爵家だって言っているでしょう!」
「縁切りをされているんだろう?」
皆、アデュエルのことを詳しくは知らないが、縁切りをしているのならば、関係ない存在であることくらいは理解している。
「それでも家族なら認めて、家族は助け合うべきでしょう?」
「それはそうだが…縁切りをされているのならば、強い理由があるはずだ。侯爵家に嫁ぐなど出来るはずがない」
「戻してもらえばいいじゃない」
「そんなことはまずあり得ない。継ぐ者が誰もいなくなっても、縁者から選ばれるだろうからな。縁切りとはそういうものだ」
縁切りを戻すというのは、罪を犯して、実は冤罪だったという理由くらいしかない。罪を犯したようなことはさすがに聞いたことがないため、冤罪も何もない。
「そんな…じゃあ…」
「オーバス侯爵家に戻るなんてことはない」
「騙されたのよ、酷い男ね」
騙されたわけではないことは分かっているキャリーヌは、何も言えなくなった。
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