【完結】あの子の代わり

野村にれ

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男好きのお花畑の妹

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 キャリーヌを調べると、一緒にいた男性は誰なのかは、すぐに分かった。

 オーバス前侯爵の年の離れた愛人の息子。来るもの拒まずで、愛人とさえも言えない女性や、隠し子もいると言われているアデュエルであった。

 現在24歳で、美しい母に似て見目が良いので、皆コロッと行為を抱いてしまうが、前侯爵は亡くなっており、オーバス侯爵家とは邸とお金を貰って、関わりがないわけではないが、籍は外れている。

 現在は母親の生家である男爵家の籍に入っている、とは言っても男爵家の嫡男ですらない。だがお金には困ってはいないので、ふわふわと遊び回っている。

「父上の指示ではないのですよね?」
「違う」

 ルイフォードは遠ざけるために、イサードがキャリーヌに男を宛がったのかと思ったが、そうではなかった。

「やるなら、もっと酷い相手を仕向けるさ」
「確かに。あの男は詐欺師ではないですから」

 引っ掻けて、傷付けてやろう、お金を貢がせてやろうなどと考えるのではなく、ただ面白ければいいという性格をしている。

「では勝手に引っ掛かったというわけですね」
「そのようだな。引き続き、何かあったら知らせるようにしておこう」

 その後も、キャリーヌはアデュエルに夢中の様で、ソアリ伯爵からお金の催促はあったが、マリクワン侯爵家に来るようなことも一切なくなった。

 今までキャリーヌはいくら男性に擦り寄っても、相手にして貰えることがなかったので、初めての相手も浮かれ切っていたのである。

 しかも、アデュエルが言ったとは思えないが、自分は侯爵家に嫁ぐことになっていると話しており、それがオーバス侯爵家なのか、マリクワン侯爵家とも取れるような言い方であった。

 だが、マリクワン侯爵家にはベルアンジュが嫁いでいることは、二人は姿は現さないが、その代わりにイサードとマイルダが、ベルアンジュの話を夜会でしているので、高位貴族には周知されている。

 周りには愚かなキャリーヌは縁を切られているのに、アデュエルに本気になって、オーバス侯爵家に嫁げると信じているのだろうと思われていた。

「結婚しようとでも思っているのでしょうか」
「アデュエルも、弁えてはいるはずだからな。あの妹は思い込む質だから、勝手に思っているかもしれないな」
「確かに…」
「バスチャン伯爵家に、さらに借金をしているようだ」
「え?」
「薬代が上がったとか言って、キャリーヌが要求したんだろうな」

 アデュエルはお金に困ってはいないが、貢がせたいわけでもなければ、貢いでくれるわけでもない。マリクワン侯爵家としては、迷惑を掛けて来ないのであれば、放って置けばいいということになった。

「愚かですね…」
「どうせ、あの家族は潰れるんだ」

 爵位を返上するか、別の者に代わるか、とは言っても嫡男の兄ではない。父親と同じことしかしようとしない。

「アデュエルはこのまま引き付けていてくれるなら、助けてやってもいい」
「そうですね」

 ルイフォードは正直、関わって来なくなってアデュエルに感謝すらしていた。

 アデュエルにとって、沢山いる中の一人ではあったが、キャリーヌは特別だと思っており、両親にお友達と遊びに行くと言って、お金を強請っていた。

 両親は子どもが出来れば、キャリーヌが嫁いで、マリクワン侯爵家のお金が自由になると思っているので、バスチャン伯爵家に借金をしていた。

 バスチャン伯爵家もラオルス公爵家と、縁者になれるということで、気が大きくなっており、仕方ないと貸していた。

 ベルーナはとても難しいが頑張っていると、手紙を送っており、話を合わせるためにもラオルス公爵家にも連絡を行っていた。

 まさかどちらも切れてしまう縁だとは、気付いていない。

 マリクワン侯爵家は、穏やかな日々が続いていた。だがある日、ベルアンジュは歩いていただけなのに、急に足元がふらついて、体勢を崩してしまった。
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