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夢のような結婚式
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ルイフォード、両親、リランダ医師の都合の合う日で、教会の空きがある日に最速で、結婚式は行われることになった。
薬が効いているので、急に悪化ということはまだないが、早いに越したことはないからであった。
ベルアンジュとルイフォードも、両親も、リランダ医師も、周りに悟られないように、いつもと変わりない日のように、結婚式は行われた。
邸の出入りが激しいと怪しまれる可能性を考え、母・マイルダの侍女とメイドに、ベルアンジュはドレスを着せてもらい、化粧と髪を結って貰った。
命の期限が迫っているとは思えないほど、光り輝く姿だった。
ベルアンジュは実家では掃除や洗濯はして貰っていたが、自分で身支度を行い、技術もなく、薄化粧をしていた程度、侯爵家に来てからも、同じように過ごしていたので、ルイフォードも両親も、着飾った姿に息を呑むほどだった。
「綺麗だ…」
「ああ」
「本当に綺麗よ」
ドレスもルイフォードがベルアンジュに似合うと選んだデザインであった。
あの頃はまさか、死に別れるとは思っていなかったはずだが、ルイフォードにとっては受け入れた上での、結婚式であった。
「着飾っていただいたおかげです。ありがとうございました」
「我儘を言ったのはルイフォードの方だわ」
「いえ、こんなに美しいドレスを人生で着れるなんて、思っておりませんでした。本当にありがとうございました」
ベルアンジュはあの家で過ごし、結婚式が出来るとも思っていなければ、こんなに綺麗なドレスを着ることすらないと思っていた。
自分が主役になったような気持ちになって、素直に嬉しかった。
マイルダはそんなものいくらでも着せてあげると思ったが、あまり華美なドレスは邪魔になったりする場合もあり、治療中のベルアンジュには必要とは思えなかった。
作るだけ作って、着れないというのも、申し訳ないと思うだろうし、着れないことも辛いかもしれないと、胸が苦しくなった。
「あなただけのドレスよ、とても似合っているわ」
そう言うのが精一杯だった。
父・イサードはマイルダほど構うことはなかったが、着々とルイフォードとベルアンジュを守るために動いていた。
たった5人の結婚式ではあったが、ルイフォード側には両親、ベルアンジュ側にはリランダ医師が座って、その様子を温かく見守った。
リランダ医師は、病気であることを一番知っているはずなのに、病気だとは思えない、永く生きられないなんて思えないと感じてしまうほどだった。
このまま時間が、いえ、病気の進行の時間が止まってくれればいいのにと、あの日そんなに時間があるのですかと言った、ベルアンジュの結婚式が見れるなんて、思いもしなかった。
ルイフォード様には感謝しかない、NN病のためにと多額の寄付もして貰い、かといってすぐに治癒する薬が出来ることはないことも理解している。
ベルアンジュも治験、そしてNN病の治療や、今後のためにもと検査や、死後の解剖にも協力してくれることになっている。解剖はルイフォード様にも辛そうではあったが、同意いただいている。
まだ考えたくはないが、同時に絶対に無駄にしてはならないと、強く誓っている。
だからこそ、ベルアンジュには1日でも、1時間でも、1分でも長く生きて欲しい。今日はそんな気持ちをまた強くした。
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとうございます」
ルイフォードとベルアンジュは、とびきりの笑顔で答えた。
「ありがとう!ベルアンジュも、本当にありがとう」
「御礼を言うのは私の方ですわ」
皆、少しばかり目が潤みながらも、笑顔の溢れた夢のような結婚式は終わった。
二人の姿、両親と一緒に、リランダ医師も一緒にとたくさんの写真を撮り、その写真はベルーナの元へも送られた。
薬が効いているので、急に悪化ということはまだないが、早いに越したことはないからであった。
ベルアンジュとルイフォードも、両親も、リランダ医師も、周りに悟られないように、いつもと変わりない日のように、結婚式は行われた。
邸の出入りが激しいと怪しまれる可能性を考え、母・マイルダの侍女とメイドに、ベルアンジュはドレスを着せてもらい、化粧と髪を結って貰った。
命の期限が迫っているとは思えないほど、光り輝く姿だった。
ベルアンジュは実家では掃除や洗濯はして貰っていたが、自分で身支度を行い、技術もなく、薄化粧をしていた程度、侯爵家に来てからも、同じように過ごしていたので、ルイフォードも両親も、着飾った姿に息を呑むほどだった。
「綺麗だ…」
「ああ」
「本当に綺麗よ」
ドレスもルイフォードがベルアンジュに似合うと選んだデザインであった。
あの頃はまさか、死に別れるとは思っていなかったはずだが、ルイフォードにとっては受け入れた上での、結婚式であった。
「着飾っていただいたおかげです。ありがとうございました」
「我儘を言ったのはルイフォードの方だわ」
「いえ、こんなに美しいドレスを人生で着れるなんて、思っておりませんでした。本当にありがとうございました」
ベルアンジュはあの家で過ごし、結婚式が出来るとも思っていなければ、こんなに綺麗なドレスを着ることすらないと思っていた。
自分が主役になったような気持ちになって、素直に嬉しかった。
マイルダはそんなものいくらでも着せてあげると思ったが、あまり華美なドレスは邪魔になったりする場合もあり、治療中のベルアンジュには必要とは思えなかった。
作るだけ作って、着れないというのも、申し訳ないと思うだろうし、着れないことも辛いかもしれないと、胸が苦しくなった。
「あなただけのドレスよ、とても似合っているわ」
そう言うのが精一杯だった。
父・イサードはマイルダほど構うことはなかったが、着々とルイフォードとベルアンジュを守るために動いていた。
たった5人の結婚式ではあったが、ルイフォード側には両親、ベルアンジュ側にはリランダ医師が座って、その様子を温かく見守った。
リランダ医師は、病気であることを一番知っているはずなのに、病気だとは思えない、永く生きられないなんて思えないと感じてしまうほどだった。
このまま時間が、いえ、病気の進行の時間が止まってくれればいいのにと、あの日そんなに時間があるのですかと言った、ベルアンジュの結婚式が見れるなんて、思いもしなかった。
ルイフォード様には感謝しかない、NN病のためにと多額の寄付もして貰い、かといってすぐに治癒する薬が出来ることはないことも理解している。
ベルアンジュも治験、そしてNN病の治療や、今後のためにもと検査や、死後の解剖にも協力してくれることになっている。解剖はルイフォード様にも辛そうではあったが、同意いただいている。
まだ考えたくはないが、同時に絶対に無駄にしてはならないと、強く誓っている。
だからこそ、ベルアンジュには1日でも、1時間でも、1分でも長く生きて欲しい。今日はそんな気持ちをまた強くした。
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとうございます」
ルイフォードとベルアンジュは、とびきりの笑顔で答えた。
「ありがとう!ベルアンジュも、本当にありがとう」
「御礼を言うのは私の方ですわ」
皆、少しばかり目が潤みながらも、笑顔の溢れた夢のような結婚式は終わった。
二人の姿、両親と一緒に、リランダ医師も一緒にとたくさんの写真を撮り、その写真はベルーナの元へも送られた。
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