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終わりの決まっている二人
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「結婚はどうする?」
「ベルアンジュが望まないと思います」
「だが、ルイフォードはベルアンジュと結婚したいのだろう?」
「はい…」
「ソアリ伯爵家の方は大丈夫だ、結婚式はしなくていいなどと手紙を送って来ていたから、こちらで勝手にしても構わないだろう」
自分より先に結婚式をするなど、綺麗なドレスを着るなんて許せないキャリーヌに言われて、ソアリ伯爵が書いた手紙であった。
「そのようなことを?」
「ああ、ソアリ伯爵がルイフォード宛てに送って来ていた。ベルアンジュに結婚式など必要ないので、する必要はありませんと」
「な!」
「大丈夫だ、私も妻もそう思っている」
母も横で眉間に皺を寄せて、頷いている。
「ドレスだってそのまま作らせているのだろう」
「…はい」
結婚式のドレスは着て貰えるのならばと、そのまま作って貰っていた。
「体調がどうか分からないから、医師に立ち会って貰って、我々だけで結婚式をしないか?」
「え?」
「勿論、呼びたい者がいれば、呼ぶといい」
「ベルアンジュに話してみます…」
「ああ、そうしなさい」
ルイフォードは帰って、ベルアンジュに話をすることにした。
「結婚式をしないか?出来れば、結婚もして欲しい」
「いえ、それは」
「ドレスはそのまま作って貰っていたんだ。もう完成している」
ベルアンジュは打ち明けてから、ドレスも作られていないと思い込んでいた。だが注文して、中止となれば迷惑が掛かることを失念していた。
「申し訳ありません、無駄にしてしまいましたね」
「無駄なんかじゃない、着て結婚式をしないか?ご家族は来ない。今のところ、来るのは私の両親くらいだけだろう」
「実家に知らせなくていいのですか?」
「ああ、結婚式はしたと連絡だけはするかもしれないが出席は必要ない」
父親がしなくていいと手紙を送って来ていることは、言う必要はない。
「だから呼びたい人がいれば、呼ぶといい」
「おりません」
「友人は…」
学園の友達はと言いそうになって、ベルアンジュが学園に通えなかったことを思い出した。
「幼なじみとか、いないのか?」
「あ…」
「いるのか?」
そんな相手がいたのなら早く言ってくれればと思った。だが、幼なじみの話など、きっかけがない限りすることはない。
今からでも連絡をして、来てもらえばいい。言い辛かったのは男性なのかもしれないが、嫉妬はするが、ベルアンジュが喜ぶなら、我慢出来る。
「亡くなりました、もう随分前です」
「すまない」
「いえ、彼女が生きていたら、呼びたかったです」
彼女ということは、女性だったようだ。
「親しかったのか」
「はい、とても」
「御病気か?」
「はい…流行り病でした。妹中心の生活で、なかなか外の世界に、関わることがなかった私にとっては唯一の存在でした」
唯一、側にいてくれた幼なじみだったが、流行り病を患い、あっという間に亡くなってしまった。
ベルアンジュは涙が尽きるほど泣いた。
それなのに家族は、彼女に会ったなら、感染しているかもしれないと私を離れに押し込め、半年も出してもらえなかった。悲しい気持ちではなく、彼女を悪しき者のように扱う姿に怒りしかなかった。
だから、NN病だと分かった時、こんな生活ともお別れできる。彼女に会えるかもしれない。花畑で互いの花冠を付けて、笑えるかもしれない、そう思った。
ベルアンジュの心は晴れやかであったのは、彼女の存在だった。
「その彼女のご家族は」
「いえ、知らせないでください。悲しませたくないのです」
「そうか…結婚式は嫌か?」
「いえ、そのようなことはありませんが」
「ではリランダ医師にも都合を聞いて、万全で行おう。私の夢を叶えてくれてありがとう」
その言葉にベルアンジュは、止めた方がいいとは言えなかった。
「ベルアンジュが望まないと思います」
「だが、ルイフォードはベルアンジュと結婚したいのだろう?」
「はい…」
「ソアリ伯爵家の方は大丈夫だ、結婚式はしなくていいなどと手紙を送って来ていたから、こちらで勝手にしても構わないだろう」
自分より先に結婚式をするなど、綺麗なドレスを着るなんて許せないキャリーヌに言われて、ソアリ伯爵が書いた手紙であった。
「そのようなことを?」
「ああ、ソアリ伯爵がルイフォード宛てに送って来ていた。ベルアンジュに結婚式など必要ないので、する必要はありませんと」
「な!」
「大丈夫だ、私も妻もそう思っている」
母も横で眉間に皺を寄せて、頷いている。
「ドレスだってそのまま作らせているのだろう」
「…はい」
結婚式のドレスは着て貰えるのならばと、そのまま作って貰っていた。
「体調がどうか分からないから、医師に立ち会って貰って、我々だけで結婚式をしないか?」
「え?」
「勿論、呼びたい者がいれば、呼ぶといい」
「ベルアンジュに話してみます…」
「ああ、そうしなさい」
ルイフォードは帰って、ベルアンジュに話をすることにした。
「結婚式をしないか?出来れば、結婚もして欲しい」
「いえ、それは」
「ドレスはそのまま作って貰っていたんだ。もう完成している」
ベルアンジュは打ち明けてから、ドレスも作られていないと思い込んでいた。だが注文して、中止となれば迷惑が掛かることを失念していた。
「申し訳ありません、無駄にしてしまいましたね」
「無駄なんかじゃない、着て結婚式をしないか?ご家族は来ない。今のところ、来るのは私の両親くらいだけだろう」
「実家に知らせなくていいのですか?」
「ああ、結婚式はしたと連絡だけはするかもしれないが出席は必要ない」
父親がしなくていいと手紙を送って来ていることは、言う必要はない。
「だから呼びたい人がいれば、呼ぶといい」
「おりません」
「友人は…」
学園の友達はと言いそうになって、ベルアンジュが学園に通えなかったことを思い出した。
「幼なじみとか、いないのか?」
「あ…」
「いるのか?」
そんな相手がいたのなら早く言ってくれればと思った。だが、幼なじみの話など、きっかけがない限りすることはない。
今からでも連絡をして、来てもらえばいい。言い辛かったのは男性なのかもしれないが、嫉妬はするが、ベルアンジュが喜ぶなら、我慢出来る。
「亡くなりました、もう随分前です」
「すまない」
「いえ、彼女が生きていたら、呼びたかったです」
彼女ということは、女性だったようだ。
「親しかったのか」
「はい、とても」
「御病気か?」
「はい…流行り病でした。妹中心の生活で、なかなか外の世界に、関わることがなかった私にとっては唯一の存在でした」
唯一、側にいてくれた幼なじみだったが、流行り病を患い、あっという間に亡くなってしまった。
ベルアンジュは涙が尽きるほど泣いた。
それなのに家族は、彼女に会ったなら、感染しているかもしれないと私を離れに押し込め、半年も出してもらえなかった。悲しい気持ちではなく、彼女を悪しき者のように扱う姿に怒りしかなかった。
だから、NN病だと分かった時、こんな生活ともお別れできる。彼女に会えるかもしれない。花畑で互いの花冠を付けて、笑えるかもしれない、そう思った。
ベルアンジュの心は晴れやかであったのは、彼女の存在だった。
「その彼女のご家族は」
「いえ、知らせないでください。悲しませたくないのです」
「そうか…結婚式は嫌か?」
「いえ、そのようなことはありませんが」
「ではリランダ医師にも都合を聞いて、万全で行おう。私の夢を叶えてくれてありがとう」
その言葉にベルアンジュは、止めた方がいいとは言えなかった。
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