10 / 73
これから
しおりを挟む
「これから、どうするつもりだったんだ?」
「いずれは入院するつもりでした、それまでにあなたにお伝えしなければと思っていました。まさか、倒れるとは思っておらず…申し訳ありませんでした」
限界までは黙っているつもりではあったが、今まで倒れることはなかったので、想定していなかった。
「いや、可能ならここで過ごしてもらいたいが、難しいだろうか」
「こちらでは難しいと思います。婚約者でもなくなる私の世話など、使用人もしたくないでしょうから」
「そんなことは!」
「薬の量が増えると思うので、同時に貧血で倒れることもおそらく増えます。これ以上の迷惑は掛けられません」
「ようやく、君と面と向かって話が出来るようになったんだ。いつも君の後ろ姿を見ていたんだ…」
悲痛な叫びではあったが、ベルアンジュにはもう何も出来ない。どうするべきかは、どうにもならない身体に聞くべきだろうと、提案をした。
「先生に相談してもいいですか」
「ああ、呼んで来て貰おう」
「そうですね…普通、貴族はそうするんですよね」
「いつも通っていたのか?」
「はい…治療費は掛からなかったことが救いでした。両親は私にお金は出したくないでしょうから」
ルイフォードはクソがという言葉が出そうになったが、グッと堪えた。
モード病院に連絡を取り、リランダ医師を呼ぶと、すぐにやって来て、ベットにいるベルアンジュに駆け寄った。
「大丈夫ですか」
「はい、倒れただけで、その他は変わりありません」
「失礼ですが、トアリ伯爵家に居てもいいことはありませんから、こちらにいらっしゃると聞いて、良かったと思ったくらいです」
「でもずっとこちらというわけには」
「いいえ、検査には来ていただく場合もありますが、その他はこちらで看たいということでしたので、私も賛同しました。あなたは甘えていい方です」
リランダ医師は既にルイフォードから経緯や意向を聞いており、是非ともそうして欲しいと願った。
「命ある限り、したいことをして、生きましょう」
「そうだ、手が必要な時はここならすぐ動ける」
「家族には…?」
両親が許すはずがないと思った。押し掛けてくる可能性すらある。
「病気のことはまだ話していない。ベルアンジュはどうしたい?私は正直、言う必要すらないと感じている」
「はい…役立たずだと言われるのはもう沢山ですね」
部屋にいる者は病状を知っており、全員がクソがと言い出しそうになったが、奥歯を噛みしめて堪えた。
「ならば、疲れが出たのだろうから、こちらで良くなるまで面倒を看ると伝える。何か言って来ても、文句を言える立場ではないだろう」
「婚約は…」
「解消する気はない」
「死別することになります…せめて解消だけでもしてはいただけませんか」
「そうなると、君をここに留めることは難しい。私のことは考えなくていい、お願いだ、ここにいて欲しいだ…」
「ベルアンジュ様、甘えましょう」
ベルアンジュも心苦しくはあったが、後悔を残していなくなるより、従った方がいいと思い、了承することにした。
そして、ベルアンジュはベルーナに手紙を書きたいと言い、ルイフォードも承諾して、ベルーナにも残酷な事実が届けられた。
驚くことに、一週間後にはルイフォードに案内された、赤子と乳母を連れたベルーナがやって来た。
「ベルアンジュ!」
「ベルーナ!?」
まだ貧血の続くベルアンジュは、ベットから出ることは許されず、静かに本を読んでいた。
「あなた、ここへ来て大丈夫なの?」
「大丈夫よ、乳母の子として、語学の試験を受けると言って出て来たの」
「それよりもあなたよ!どうして…ごめんなさい。私、何も知らなくて…」
「それを言うなら、私もだわ」
「いずれは入院するつもりでした、それまでにあなたにお伝えしなければと思っていました。まさか、倒れるとは思っておらず…申し訳ありませんでした」
限界までは黙っているつもりではあったが、今まで倒れることはなかったので、想定していなかった。
「いや、可能ならここで過ごしてもらいたいが、難しいだろうか」
「こちらでは難しいと思います。婚約者でもなくなる私の世話など、使用人もしたくないでしょうから」
「そんなことは!」
「薬の量が増えると思うので、同時に貧血で倒れることもおそらく増えます。これ以上の迷惑は掛けられません」
「ようやく、君と面と向かって話が出来るようになったんだ。いつも君の後ろ姿を見ていたんだ…」
悲痛な叫びではあったが、ベルアンジュにはもう何も出来ない。どうするべきかは、どうにもならない身体に聞くべきだろうと、提案をした。
「先生に相談してもいいですか」
「ああ、呼んで来て貰おう」
「そうですね…普通、貴族はそうするんですよね」
「いつも通っていたのか?」
「はい…治療費は掛からなかったことが救いでした。両親は私にお金は出したくないでしょうから」
ルイフォードはクソがという言葉が出そうになったが、グッと堪えた。
モード病院に連絡を取り、リランダ医師を呼ぶと、すぐにやって来て、ベットにいるベルアンジュに駆け寄った。
「大丈夫ですか」
「はい、倒れただけで、その他は変わりありません」
「失礼ですが、トアリ伯爵家に居てもいいことはありませんから、こちらにいらっしゃると聞いて、良かったと思ったくらいです」
「でもずっとこちらというわけには」
「いいえ、検査には来ていただく場合もありますが、その他はこちらで看たいということでしたので、私も賛同しました。あなたは甘えていい方です」
リランダ医師は既にルイフォードから経緯や意向を聞いており、是非ともそうして欲しいと願った。
「命ある限り、したいことをして、生きましょう」
「そうだ、手が必要な時はここならすぐ動ける」
「家族には…?」
両親が許すはずがないと思った。押し掛けてくる可能性すらある。
「病気のことはまだ話していない。ベルアンジュはどうしたい?私は正直、言う必要すらないと感じている」
「はい…役立たずだと言われるのはもう沢山ですね」
部屋にいる者は病状を知っており、全員がクソがと言い出しそうになったが、奥歯を噛みしめて堪えた。
「ならば、疲れが出たのだろうから、こちらで良くなるまで面倒を看ると伝える。何か言って来ても、文句を言える立場ではないだろう」
「婚約は…」
「解消する気はない」
「死別することになります…せめて解消だけでもしてはいただけませんか」
「そうなると、君をここに留めることは難しい。私のことは考えなくていい、お願いだ、ここにいて欲しいだ…」
「ベルアンジュ様、甘えましょう」
ベルアンジュも心苦しくはあったが、後悔を残していなくなるより、従った方がいいと思い、了承することにした。
そして、ベルアンジュはベルーナに手紙を書きたいと言い、ルイフォードも承諾して、ベルーナにも残酷な事実が届けられた。
驚くことに、一週間後にはルイフォードに案内された、赤子と乳母を連れたベルーナがやって来た。
「ベルアンジュ!」
「ベルーナ!?」
まだ貧血の続くベルアンジュは、ベットから出ることは許されず、静かに本を読んでいた。
「あなた、ここへ来て大丈夫なの?」
「大丈夫よ、乳母の子として、語学の試験を受けると言って出て来たの」
「それよりもあなたよ!どうして…ごめんなさい。私、何も知らなくて…」
「それを言うなら、私もだわ」
3,066
お気に入りに追加
3,910
あなたにおすすめの小説
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
愛は全てを解決しない
火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。
それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。
しかしデセルバート家は既に没落していた。
※なろう様にも投稿中。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。
火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。
しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。
数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる