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もう二度と
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「子ども?う、そ…」
ミファラは貧血で倒れてしまい、慌てて侍医を呼ばれたが、妊娠していると告げられたのだ。
「はい、避妊薬を飲んでおられたということですが」
「100%だと」
「ほぼ100%と言われてはいます。ですが、可能性はあります」
番である場合は、良くも悪くも凌駕すると言われており、侍医はそれに該当しているのではないかと思うが、この女性はロークロア公爵の番に選ばれたことによって、家族とは離れ離れにされて、精神が不安定だと聞いている。だからこそ、不確定なことは言わないことにした。
ただハッキリと言えるのは、妊娠しているという事実だけである。
「そんな…だ、堕胎にはいくらかかりますか」
「堕胎されるのですか」
現在、母体が耐えられない、望まぬ妊娠であった場合は、堕胎を行うことは可能となっている。だが、次の妊娠が望めなくなったり、負担も大きいために選択する者はなかなかいない。
子どもを産むのも命懸けではあるのだが、堕胎が可能になる前の様に産んでから、養子に出す方が圧倒的に多い。
「はい、私は愛人ですが、子どもを産む義務もありません。養子を取る予定になっているんです。困るんです」
「落ち着いてください。公爵様とよく話し合ってください」
メイドも慌てて、そうしましょう、大丈夫ですからと、オロオロするミファラを落ち着かせて、シュアンの帰りを待った。
帰って来たシュアンは執事に話を聞かされることになった。ミファラはメイドの監視付きで、部屋に籠って、呆然としていた。
「子どもが出来たそうです」
「誰に?」
「ミファラ様にです」
「え?そんなはずは…」
避妊薬は箱からも出さず、瓶も入れ替えたりせずに、渡していた。
「まさか誰かが、入れ替えたのか?」
「そのようなことはありません。侍医は番だからだろうと、ですがそのことはミファラ様にはお伝えしていません。そして、堕胎したいと言われたそうです」
「…そうか、彼女は今どうしている?」
堕胎したいという言葉に、思ったよりショックではなかった。産みたいと言われる方が、今までのミファラを見ていたら、あり得ないことだと理解していた。
「部屋で呆然としています。ショックを受けているのではないかと…ですが、恐れながら申しますと、産んでいただきたい、私はそう思っています」
「…だが」
「そうしてはならないと思いながらも、喜びたかったのです。今もおめでとうございますと言えないことが、辛くて堪りません」
「だが、お前も見ただろう?血まみれの彼女を」
執事であるカールは両親の頃から働いてくれており、この家のため、そして私のために言ってくれていることは分かっている。
「それも分かっているのです。あのようなお姿を二度と見たくはありません」
「ならば天秤にかけるまでもないことだ…」
取るべきはミファラだ、まだ見付かってはいないが、養子を取る予定だった。
だが子どもが生まれれば、後継者のことで何か言われることはなくなるだろう。番であれば治癒術は遺伝する可能性はかなり高いと聞いている。
「どうにか産んでいただくことは出来ないのでしょうか。シュアン様も会いたいと思ってらっしゃいますよね」
思っていないはずがない、男でも女でもいい、一人いてくれたら、そう考えたことはある。だがすぐに消し去るようにしていた。
ミファラに頼むことは出来ない、どうしても産ませるのならば別の女性に賭けるべきだろうとまで考えていた。
だが、いま彼女の中にいるのならば、会いたい。
「頼んではみる、だが期待はしない。彼女の命があってこそだからな」
「それは勿論でございます」
ミファラは貧血で倒れてしまい、慌てて侍医を呼ばれたが、妊娠していると告げられたのだ。
「はい、避妊薬を飲んでおられたということですが」
「100%だと」
「ほぼ100%と言われてはいます。ですが、可能性はあります」
番である場合は、良くも悪くも凌駕すると言われており、侍医はそれに該当しているのではないかと思うが、この女性はロークロア公爵の番に選ばれたことによって、家族とは離れ離れにされて、精神が不安定だと聞いている。だからこそ、不確定なことは言わないことにした。
ただハッキリと言えるのは、妊娠しているという事実だけである。
「そんな…だ、堕胎にはいくらかかりますか」
「堕胎されるのですか」
現在、母体が耐えられない、望まぬ妊娠であった場合は、堕胎を行うことは可能となっている。だが、次の妊娠が望めなくなったり、負担も大きいために選択する者はなかなかいない。
子どもを産むのも命懸けではあるのだが、堕胎が可能になる前の様に産んでから、養子に出す方が圧倒的に多い。
「はい、私は愛人ですが、子どもを産む義務もありません。養子を取る予定になっているんです。困るんです」
「落ち着いてください。公爵様とよく話し合ってください」
メイドも慌てて、そうしましょう、大丈夫ですからと、オロオロするミファラを落ち着かせて、シュアンの帰りを待った。
帰って来たシュアンは執事に話を聞かされることになった。ミファラはメイドの監視付きで、部屋に籠って、呆然としていた。
「子どもが出来たそうです」
「誰に?」
「ミファラ様にです」
「え?そんなはずは…」
避妊薬は箱からも出さず、瓶も入れ替えたりせずに、渡していた。
「まさか誰かが、入れ替えたのか?」
「そのようなことはありません。侍医は番だからだろうと、ですがそのことはミファラ様にはお伝えしていません。そして、堕胎したいと言われたそうです」
「…そうか、彼女は今どうしている?」
堕胎したいという言葉に、思ったよりショックではなかった。産みたいと言われる方が、今までのミファラを見ていたら、あり得ないことだと理解していた。
「部屋で呆然としています。ショックを受けているのではないかと…ですが、恐れながら申しますと、産んでいただきたい、私はそう思っています」
「…だが」
「そうしてはならないと思いながらも、喜びたかったのです。今もおめでとうございますと言えないことが、辛くて堪りません」
「だが、お前も見ただろう?血まみれの彼女を」
執事であるカールは両親の頃から働いてくれており、この家のため、そして私のために言ってくれていることは分かっている。
「それも分かっているのです。あのようなお姿を二度と見たくはありません」
「ならば天秤にかけるまでもないことだ…」
取るべきはミファラだ、まだ見付かってはいないが、養子を取る予定だった。
だが子どもが生まれれば、後継者のことで何か言われることはなくなるだろう。番であれば治癒術は遺伝する可能性はかなり高いと聞いている。
「どうにか産んでいただくことは出来ないのでしょうか。シュアン様も会いたいと思ってらっしゃいますよね」
思っていないはずがない、男でも女でもいい、一人いてくれたら、そう考えたことはある。だがすぐに消し去るようにしていた。
ミファラに頼むことは出来ない、どうしても産ませるのならば別の女性に賭けるべきだろうとまで考えていた。
だが、いま彼女の中にいるのならば、会いたい。
「頼んではみる、だが期待はしない。彼女の命があってこそだからな」
「それは勿論でございます」
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