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もう二度と

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 理解を得たとは言えないが、話を通すことは出来たシュアンは、ミファラが愛人だと公に言うわけではないが、親しい人たちにはそう伝えるようにした。

 これで結婚したらいいと言われることは、周りからはなくなった。

 誰から聞いたのか、同じ部署でもなく、親しくもない先輩から、結婚が出来ないのならと縁談を持ちかけて来たが、どうしても必要でない限りする気はないと、私よりも他の相手とした方がいいと告げた。

「それでもいいと言っているんだ」
「お飾りの夫人になりたいのですか?相手に何か利があるのですか?」
「君と結婚が出来るじゃないか」
「名前だけ欲しいってことか…」

 私には何の価値もないが、公爵夫人は魅力的なのだろう。

 勧めて来ているのは前にも勧められた先輩の妹である。当時は22歳だったが、3年経ったので25歳になっており、まだ結婚していなかった。もしくは出戻ったのかもしれない。

「いや、後継だって必要だろう?妻が産む方がいいじゃないか」
「ああ、そういうことか…お断わりさせて貰う」
「は?なぜだ!」
「君の妹ということは子爵令嬢だろう?公爵夫人は荷が重いとは思わないのか?」

 粗相をして公爵家に泥を塗るような、相応しくない夫人を置くくらいなら、居ない方がいい。

 ミファラも表向きは男爵令嬢だから、いくら番でも、公爵夫人にはなれなかったのだと思わせておけばいい。皮肉なことだが、男爵令嬢だから愛人が関の山だと、言われることを利用することが出来る。

「妹は美しくて優秀だ」
「だったら他にも縁談があるだろう?妹に幸せになって欲しくないのか?」
「そ、それは…なかなか相手には伝わらなくてだな」
「伝わる相手が見付かるといいですね」

 まだ結婚をしていないところを見ると、何か問題があるのだろう。

「だから君が妹を大事にしてやってくれればいいじゃないか、きっと気に入るはずだ。愛人とも上手くやれるはずだ」

 こんな奴に愛人だと言われる筋合いはない。なぜお前の妹と上手くやらなければならないのか。

「あなたは先輩ではあるが、結婚に関してならば公爵家に対して失礼ではないか?」
「あ…だが」
「だが、何だ?折角結婚してやると言っているのにとでも思っているのか?頼んでもいないのに?」
「いや…」
「子爵家に苦情を入れた方がいいか?」
「いや、すまなかった」

 キドラー・デルは慌てて去って行った。

 だがその日、邸に戻ると、キドラーの妹である、マデラース・デル子爵令嬢が先触れもなくやって来たようだ。約束のない者は通せないと言うと、私はここの女主人だと言って騒いだたため、連行されて行ったそうだ。

「今日、結婚相手に勧めて来たんだ」
「今日で、ございますか?」
「ああ、今日の昼の話だ。子爵家に苦情を入れようかと思っていたが、言うまでもなかったな」
「はい、もう現れることはないでしょう」
「彼女は…大丈夫か?」
「はい、お部屋におられましたが、メイドによると気付いてもいないだろうということでした」
「そ、そうか…それならば良かった」

 万が一、ミファラに誤解を招いていたら、どうしようかと思っていた。どのような女性かも知らないが、間違いなく、まともな相手ではない。

「兄は美しく優秀だと言っていたが、どんな令嬢だった?」
「そうは見えないご令嬢でした。門番に大声で怒鳴り散らし、ふと…いえ、逞しい脚をバシバシ踏み鳴らしておいでで、そんな対応をして、クビにしてやるんだからなどと言い…」
「それは、対応させて悪かったな」
「いえ、すぐに騎士団が来てくれましたので」

 騎士団員の妹が、公爵家に迷惑を掛けて、騎士団に連れて行かれるとは、キドラーも無傷ではいられないだろう。
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