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もう二度と
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シュアンの叫び声で駆け付けて来た執事は惨状に慄き、生きているのか分からないミファラに激しく動揺した。
「何があったんですか!無事、ですか…」
「ペーパーナイフで切ったようだが、何とか間に合った」
ミファラが買ったペーパーナイフは、鋭く切れ味のいいものであった。自害の可能性のある物は、側に置かなかったが、ペーパーナイフはアンカットの本を切るのにどうしても必要だった。
「それはようございました…気付かず申し訳ありません」
「何か変わったことはなかったか?」
「分かりません…」
危険のある物は遠ざけ、人が側に寄るのを嫌がるので、必要最低限しか、配置していなかった。それでも日々の行動は気付かれぬように監視していたはずだ。
「何か、言っていなかったか?」
「そういえば、今日、おそらくマグナー夫人のことだと思いますが」
ミファラはノラの名前を覚えておらず、ここへ来た妖艶な女性と言った。
「あの人は嘘つきかと聞かれました。そのような方ではないとお伝えしましたが、じゃあ私が嫌いなだけかと仰って、何かあったのか伺いましたが、答えては貰えませんでした。申し訳ありません」
「ノラが?あれ以降は来ていないんだよな?」
「はい…いらっしゃっていません。出歩くこともありませんので、会うこともないでしょう」
「分かった、もし来ても会わせないで欲しい」
「承知しました」
それから休暇となったシュアンは片時も離れずに、ミファラが目覚めることを待ち続けていた。
治癒術と言っても万能ではない。感染による風邪や、外部からの怪我などは治せるが、個人で患った病などには効果がない。
だが、自害は怪我と同等になるので効果がある。騎士団を引き留められたのも、騎士となれば怪我も多く、治癒術は必要となるからである。
死んだ者を生き返らせることは出来ないので、これほどまでに自分の力に感謝したことはなかった。
3日間、眠り続けたミファラは目を覚まし、生きていることに絶望した。
「どうして…要らないのに」
「死なないでくれ、頼むから」
シュアンはミファラのベットサイドで、頭を下げた。
「どうしてこんなことを…?」
「生きている意味がないからよ…あなたの妹さん?って人に言われて思い出したの。お酒を飲むことで忘れちゃってたのね、私は死にたかったんだって」
「…生きてくれ、頼むから」
「価値のない者を置いて、そんなに楽しい?」
「価値がないなどと思ったことはない」
身体は心配ではあるが、死なれるより、酔っぱらっている方がどれだけいいか。酔っぱらうことで、現実から逃避していたのだろう。
「逃げられそうもないし、私には待っている人も、助けてくれる人もいないのに、ここが嫌なら死ぬしかないじゃない…」
「私がいる」
「あなたに縋って生きていけばいいんでしょうね、でもそんな人間は価値がないって教えられたわ。私、要らないじゃない?」
ノラなら言いそうだ、要らないから死のうとしたなんて。お礼を言って、浮かれていた自分を恥じた。
「私にはあるんだ…」
「どんな?」
「側にいるだけで、幸せな気持ちになれるんだ」
「死んでてもいいの?死んだら好きにすればいいわ、はく製にでもミイラにでも」
「死ぬのは止めてくれ!お願いだ…仕事も辞めるつもりだ」
「どうして仕事を辞めるの?」
「君より大事なものはないからだよ」
騎士団の給料がなくなっても、大きくはないが領地もあるから暮らしていける。もし大金がいるなら、ある物を売ればいい。
「あなたの気持ちは消えないの?」
「消えない…」
「じゃあ、やっぱり妹さんの言ったこと嘘じゃない。愛さなければ、いずれ消えるって言ったのに。あーあ、無駄な時間だった」
だから、消えたか確認していたのか。それにも都合のいいように解釈して浮かれていたなんて、何も分かっていなかった。
「何があったんですか!無事、ですか…」
「ペーパーナイフで切ったようだが、何とか間に合った」
ミファラが買ったペーパーナイフは、鋭く切れ味のいいものであった。自害の可能性のある物は、側に置かなかったが、ペーパーナイフはアンカットの本を切るのにどうしても必要だった。
「それはようございました…気付かず申し訳ありません」
「何か変わったことはなかったか?」
「分かりません…」
危険のある物は遠ざけ、人が側に寄るのを嫌がるので、必要最低限しか、配置していなかった。それでも日々の行動は気付かれぬように監視していたはずだ。
「何か、言っていなかったか?」
「そういえば、今日、おそらくマグナー夫人のことだと思いますが」
ミファラはノラの名前を覚えておらず、ここへ来た妖艶な女性と言った。
「あの人は嘘つきかと聞かれました。そのような方ではないとお伝えしましたが、じゃあ私が嫌いなだけかと仰って、何かあったのか伺いましたが、答えては貰えませんでした。申し訳ありません」
「ノラが?あれ以降は来ていないんだよな?」
「はい…いらっしゃっていません。出歩くこともありませんので、会うこともないでしょう」
「分かった、もし来ても会わせないで欲しい」
「承知しました」
それから休暇となったシュアンは片時も離れずに、ミファラが目覚めることを待ち続けていた。
治癒術と言っても万能ではない。感染による風邪や、外部からの怪我などは治せるが、個人で患った病などには効果がない。
だが、自害は怪我と同等になるので効果がある。騎士団を引き留められたのも、騎士となれば怪我も多く、治癒術は必要となるからである。
死んだ者を生き返らせることは出来ないので、これほどまでに自分の力に感謝したことはなかった。
3日間、眠り続けたミファラは目を覚まし、生きていることに絶望した。
「どうして…要らないのに」
「死なないでくれ、頼むから」
シュアンはミファラのベットサイドで、頭を下げた。
「どうしてこんなことを…?」
「生きている意味がないからよ…あなたの妹さん?って人に言われて思い出したの。お酒を飲むことで忘れちゃってたのね、私は死にたかったんだって」
「…生きてくれ、頼むから」
「価値のない者を置いて、そんなに楽しい?」
「価値がないなどと思ったことはない」
身体は心配ではあるが、死なれるより、酔っぱらっている方がどれだけいいか。酔っぱらうことで、現実から逃避していたのだろう。
「逃げられそうもないし、私には待っている人も、助けてくれる人もいないのに、ここが嫌なら死ぬしかないじゃない…」
「私がいる」
「あなたに縋って生きていけばいいんでしょうね、でもそんな人間は価値がないって教えられたわ。私、要らないじゃない?」
ノラなら言いそうだ、要らないから死のうとしたなんて。お礼を言って、浮かれていた自分を恥じた。
「私にはあるんだ…」
「どんな?」
「側にいるだけで、幸せな気持ちになれるんだ」
「死んでてもいいの?死んだら好きにすればいいわ、はく製にでもミイラにでも」
「死ぬのは止めてくれ!お願いだ…仕事も辞めるつもりだ」
「どうして仕事を辞めるの?」
「君より大事なものはないからだよ」
騎士団の給料がなくなっても、大きくはないが領地もあるから暮らしていける。もし大金がいるなら、ある物を売ればいい。
「あなたの気持ちは消えないの?」
「消えない…」
「じゃあ、やっぱり妹さんの言ったこと嘘じゃない。愛さなければ、いずれ消えるって言ったのに。あーあ、無駄な時間だった」
だから、消えたか確認していたのか。それにも都合のいいように解釈して浮かれていたなんて、何も分かっていなかった。
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