上 下
56 / 103
私の恋、あなたの愛

33

しおりを挟む
 ルノーはソフィーの決断には、ただただ驚くしかなかった。

「巻き込んですまない」
「それは私の台詞だわ」
「そちらは片付いたじゃないか、明日にはもうボロボロだろう?こちらはどうなるか分からない」
「でも私は聞きたいわ、番の末路を…」
「ああ、そうだな」

 歪な関係である以上、ソフィーとデビットだけの話ではない。ルーカンとマリアも関わることになる。片方が崩れたら、どうなるのか。

 ソフィーは早速話したようで、マリオスがルノーの元へやって来た。シエルに嫌われてしまったので、邸には来れないので、仕事帰りを待ち構えていた。

「ソフィー夫人のこと、聞いたか?」
「もう会わない様にするとは聞いているが、その後は知らない」

 馬車を言伝と共に返し、ドール伯爵邸に向かった。マイニーはゴタゴタに巻き込みたくないからと、子どもと一緒に実家に帰しているそうだ。

「父上は受け入れたそうだ」
「そうか…意外だが、母上も察しているだろうと言っていたよ」
「だが番なんだぞ?」
「番だから離れられないと?」
「そうだ、離れられるなら、もっと早く」
「それは難しいだろう。今だからサンドール侯爵も離れても大丈夫なんじゃないか」
「ああ…そういうことか」

 年を取ったからこそ、若い頃とは違って、番への衝動が抑えられるようになったということである。

「もう片方はどうなっている?」
「そんなの駄目だ、許さないと言って、私に間に入るようにと言いに来たんだ。番を持つ私なら分かるだろうとか何と言って」
「母上は自分だけが優生者ではなかったが、あの歪んだ関係を受け入れるしかなかったと言っていたよ。確かにそれはあっただろうなと思った。両方でなければ、崩れてしまう関係だからね」
「だが…」

 マリオスはソフィーの決断に、恐怖を感じているのだろう。自分もいつかマイニーに捨てられる日が来るかもしれないと、特にシエルに言ったことをマイニーは一生許さないと言っているそうだ。

「マイオスは誰に感情移入しているんだ?サンドール侯爵か?」
「そうだ、当たり前だろう。ルノーだって」
「私たちは番ではない、しかも契約結婚だ」
「だが、分かるだろう?契約結婚だって、夫婦だろう?」
「別に夫婦というわけではない、むしろあの頃の友人のように過ごしている」
「夫婦関係はない、のか…」
「当たり前じゃないか、シエルは好きな方とどうぞと思っているようだが」
「そんな…」

 マリオスには信じられないことなのだろう、シエルは抑制剤を欠かさない。友人である二人が、二人の子どもを育てているような状態だ。

「シエル夫人にも相手が?」
「食事をするくらいの相手はいることもあるようだ」

 シエルは何も言うことはないので、恋人かは分からない、好意があるのかも分からないが、そういった男性がいる。辛くないと言えば嘘になるが、シエルが私に好意を持っていた頃の気持ちに、近いのではないかと思っている。

 あの頃、シエルが何も言えなかったように、私もシエルが食事をするくらいで、何も言う権利はない。

「互いに自由なんだから」
「だが、辛くないのか…?」
「辛い時もある。でも私は一度、諦めて今がある。今を大事に生きるだけだよ」
「私は結局は番だから、契約結婚でも、普通の夫婦になっているとばかり…」

 マリオスがそう思っていることは感じていたが、直接聞いて来ることはなかったので、否定しなかっただけである。

「好きだった相手だから、きっと一緒にいればと…」
「もうシエルにそんな感情はないよ。一緒にいる俺が一番分かっている。番だから、番じゃないから、もう考えるのは止めたらどうだ?両親にも言えることだよ。あの人たちは机の脚のように、四人で抜け駆けしない様に、グラつかないように、支えていたんだろうからね。俺は末路を見届けるだけだ」

 そうは言っていたのだが、マリオスに断られて、ルリアーナに断られたルーカンとマリアが押し掛けて来た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

あなたの運命になりたかった

夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。  コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。 ※一話あたりの文字数がとても少ないです。 ※小説家になろう様にも投稿しています

旦那様、離婚しましょう

榎夜
恋愛
私と旦那は、いわゆる『白い結婚』というやつだ。 手を繋いだどころか、夜を共にしたこともありません。 ですが、とある時に浮気相手が懐妊した、との報告がありました。 なので邪魔者は消えさせてもらいますね *『旦那様、離婚しましょう~私は冒険者になるのでお構いなく!~』と登場人物は同じ 本当はこんな感じにしたかったのに主が詰め込みすぎて......

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

処理中です...