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私の恋、あなたの愛
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パリム子爵家は護衛に寄って追い出されて、トボトボ帰って行った。明日には弁護士がやって来て、多額の持参金を回収されることになる。
「ソフィー様、お祖父様、お祖母様、お騒がせしました」
シエルは三人に頭を下げた。
「いや、これまで接触はなかったのはこういうことだったのだな。ルノーと一緒だからいいと思われたのか、ルノー」
ウィロー伯爵はルノーを怒ろうとしたが、制したのはフロランツア侯爵であった。
「いえいえ、ルノーくんのせいではありません。こちらの事情に巻き込んで申し訳ありません」
「いや、番の厄介ごとなら慣れておる」
フロランツア侯爵家にも、ウィロー伯爵家とサンドール侯爵家の事情は結婚の際に話してある。
「ソフィーが一緒に来てくれというものだから、いたに過ぎないが、証言ならするから言ってくれ」
「よろしくお願いいたします。ソフィー夫人もありがとうございました。私がいれば絶対に近付いて来なかったんですけど」
「いえ、実は私、シルフィー様に助けていただいたことがありまして、まさかルノーと結婚する方がお嬢様だとは思わず、何か力になりたいと思っておりました」
ルノーも気にはなっていたが、聞くことはなかった。
「そうでしたか、いつですか?」
「シルフィー様も私も、結婚前のことです。酔っぱらった男性に、番だと抱きしめられたことがありまして」
「え?」
「抑制剤を服用しておりましたし、そんなことはあり得ないと言ったのですが、離してくれませんで、襲われそうになったのです。そこをシルフィー様が、男性を蹴り上げて、助けていただいたのです」
「シルフィーならやるでしょうね」
最期は弱ってしまったシルフィーだったが、前は正義感の強い女性だった。鍛えていたわけではないが、言い寄られることも多かったので、護身術を習っていた。
「ですが、その後にシルフィー様があんなことになられて、何か力になれればと思っていたのですが、何も出来ず…。私も番だと言われて…困惑しました。でも私だけが優生者ではなかったのですが、受け入れることしか出来ませんでした。ですが、サンドール侯爵とは、もう会わない様にしようと思っています」
「え?」「ソフィー?」「母上?」
まさかそんなことを言い出すとは思わず、ルノーもウィロー伯爵夫妻も驚いた。
「ルノーが結婚してずっと考えていたの。でもシエルさんを見て、シルフィー様を思い出して、今さらではあるのですが、年齢も年齢ですから、サンドール侯爵が狂うようなこともないと思います。ルーカンは好きにしたらいいと思っています。シエルさん、ルノー、私も孫たちの世話をさせて貰えないかしら?」
「サンドール侯爵には話したのですか?」
ルノーは母がは思っていても、サンドール侯爵が手放すわけないと思った。
「はっきりとは言っていないけど、少しずつ離れるようにしているから、番だからこそ察していると思うわ」
「子どもは?」
ソフィーとデビット・サンドールには、娘が一人いる。
「寮に入りたいと言っていてね、あの子もやっぱり歪な状態に、嫌な気持ちがあるのだと思うの。既に話してあって、いいと思うと言ってくれているの。一緒に生活をしたいというわけではないわ、助けが必要な時に呼んでくれたらと思うのだけど…」
ソフィーは唇を噛みしめながら、答えを待っていた。この場で話したのも、皆揃っているのもあるが、覚悟を聞いて貰いたかったのだろう。
「私はルノーが良ければ」
「少し考えさせて欲しい、あと歪な関係に巻き込まれたくはない」
「ええ、きちんと話してから、また会いに行ってもいいかしら」
「ああ…」
「ありがとう、ございます」
ソフィーは涙声で、深く頭を下げ、その場は解散となった。
「ソフィー様、お祖父様、お祖母様、お騒がせしました」
シエルは三人に頭を下げた。
「いや、これまで接触はなかったのはこういうことだったのだな。ルノーと一緒だからいいと思われたのか、ルノー」
ウィロー伯爵はルノーを怒ろうとしたが、制したのはフロランツア侯爵であった。
「いえいえ、ルノーくんのせいではありません。こちらの事情に巻き込んで申し訳ありません」
「いや、番の厄介ごとなら慣れておる」
フロランツア侯爵家にも、ウィロー伯爵家とサンドール侯爵家の事情は結婚の際に話してある。
「ソフィーが一緒に来てくれというものだから、いたに過ぎないが、証言ならするから言ってくれ」
「よろしくお願いいたします。ソフィー夫人もありがとうございました。私がいれば絶対に近付いて来なかったんですけど」
「いえ、実は私、シルフィー様に助けていただいたことがありまして、まさかルノーと結婚する方がお嬢様だとは思わず、何か力になりたいと思っておりました」
ルノーも気にはなっていたが、聞くことはなかった。
「そうでしたか、いつですか?」
「シルフィー様も私も、結婚前のことです。酔っぱらった男性に、番だと抱きしめられたことがありまして」
「え?」
「抑制剤を服用しておりましたし、そんなことはあり得ないと言ったのですが、離してくれませんで、襲われそうになったのです。そこをシルフィー様が、男性を蹴り上げて、助けていただいたのです」
「シルフィーならやるでしょうね」
最期は弱ってしまったシルフィーだったが、前は正義感の強い女性だった。鍛えていたわけではないが、言い寄られることも多かったので、護身術を習っていた。
「ですが、その後にシルフィー様があんなことになられて、何か力になれればと思っていたのですが、何も出来ず…。私も番だと言われて…困惑しました。でも私だけが優生者ではなかったのですが、受け入れることしか出来ませんでした。ですが、サンドール侯爵とは、もう会わない様にしようと思っています」
「え?」「ソフィー?」「母上?」
まさかそんなことを言い出すとは思わず、ルノーもウィロー伯爵夫妻も驚いた。
「ルノーが結婚してずっと考えていたの。でもシエルさんを見て、シルフィー様を思い出して、今さらではあるのですが、年齢も年齢ですから、サンドール侯爵が狂うようなこともないと思います。ルーカンは好きにしたらいいと思っています。シエルさん、ルノー、私も孫たちの世話をさせて貰えないかしら?」
「サンドール侯爵には話したのですか?」
ルノーは母がは思っていても、サンドール侯爵が手放すわけないと思った。
「はっきりとは言っていないけど、少しずつ離れるようにしているから、番だからこそ察していると思うわ」
「子どもは?」
ソフィーとデビット・サンドールには、娘が一人いる。
「寮に入りたいと言っていてね、あの子もやっぱり歪な状態に、嫌な気持ちがあるのだと思うの。既に話してあって、いいと思うと言ってくれているの。一緒に生活をしたいというわけではないわ、助けが必要な時に呼んでくれたらと思うのだけど…」
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「私はルノーが良ければ」
「少し考えさせて欲しい、あと歪な関係に巻き込まれたくはない」
「ええ、きちんと話してから、また会いに行ってもいいかしら」
「ああ…」
「ありがとう、ございます」
ソフィーは涙声で、深く頭を下げ、その場は解散となった。
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