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私の恋、あなたの愛

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「っな、なぜ怒られなくてはならない」
「私が一番嫌いなことは、分かったような言い方をされることです。何も分かりもしない、分かって欲しいとも思っていない。だって分かるはずがないもの。私はフロランツア侯爵家の人間ですから、失礼な言葉、許していただけますわよね?」

 マリオスは既にドール伯爵家の当主ではある。だが、シエルもフロランツア侯爵家の人間である。

「番のことで苦しんだのは同じではないか。私だって辛かった」
「分かって欲しいと思うのですか?」
「勿論だ、マイニーには特に理解して貰って、寄り添って貰いたい」
「それがあなたの物差しでしょう?違いますか?」
「子どものことだ!その子から父親を奪っていいのかと言っている」
「都合が悪くなると、話をすり替える方なのですね」

 シエルは軽蔑した眼差しを保ったまま、呆れた。マリオスの中身までは知らなかったが、こんなに感情的で、押しつけがましい相手だとは思わなかった。

「父親には会わせますよ。ルノーにもそう話しています。聞いていませんか?」
「だが、ずっと側にいる訳ではない」
「でもマリオス様も、ルノーも、私も、生きていますよね?」
「何の話をしている?」
「両親が側にいなくても、立派に生きているという話です」

 マリオス、ルノー、シエルは側に両親は途中からいなかった。シエルは母親が亡くなってからは、親と言える存在もいなくなってしまった。

「それはそうだが、二人が結婚しない理由がないだろう?違うか?」
「ですからそれは二人で出した答えだと言ったはずです」
「ああ、そうだ。マリオスには関係ない」

 ルノーもマリオスが納得していないのは分かっていたが、こんなことをするとは思わなかった。お節介にもほどがある。

 番を得てから、分かり易くはなかったが、おそらく妻が心配して、悩んでいるのを解消したいと思ってのことなのだろう。

「私は二人のためを思って、認められないだけで、番なんだろう!!シエル嬢、君はルノーの番なんだ!!」

 マリオスは説得が難しければ、シエルに言ってしまおうと思っていた。ルノーは否定していたが、間違いないと思っている。

 マイニーには隠し事をしているようで辛かったが、敢えて言わなかった。

 ルノーは顔を歪めたが、マイニーは驚いて目を見開き、理解出来ない様子で、マリオスを見つめた。シエルも瞳を動かした程度で、何も言わなかった。

「違うと言っただろう」
「シエル嬢、驚かせてすまない。だがルノーは私以上に、番に抵抗があったんだ。私はマイニーに出会って、そんなことはどうでもいいと思えたが、ルノーは違う。一人で戦って来たんだ、だから寄り添っては貰えないか、君が辛かったことは分かると言ったのは、言い過ぎだとしても、二人はぴったりじゃないか」
「ウィローさん、本当なの?シエルが番?」
「…違う」

 ルノーはいくら言われても、マリオスには認める気はなかった。

「マイニー、ルノーは認めたくないんだ。だから、今日会わせて、聞いて貰おうと思ったんだ」
「そうじゃないわ!」

 マイニーはもしルノーの番だったのならば、シエルの答えは知っていたのだ。

「何を言っているんだ?」
「シエルは番は選ばないわ…そうよね?シエル」
「そうね、番だったら絶対に選ばないわ」
「番を憎んでも、出会ってしまったのならいいことではないか。子どもだっているんだ。私だって両親のことで、自問自答することもあった。二人で幸せになればいいじゃないか、マイニーも安心だろう?」
「そうじゃない、番だったら…」
「私は番に選ばれることがあったら、その方を殺そうと思っています」
「っな」

 これはルノーにも言っていないことだったが、マイニーには言ってあった。
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