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私の恋、あなたの愛
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「送らせた時?」
「送らせた?」
「私が送らせたのよ、あの男なら大丈夫だと思って…ごめんなさい…私の責任もあるじゃない」
「それは自己責任よ、マイニーのせいじゃないわ」
「でも…酔っていないと思っていたけど、あの男、顔に出ないのね」
シエルは番だから、マイニーはルノーなら据え膳食ったのねと思っている。
「一人で育てるなんて大変よ」
「ええ、でもそうしたいの…正直、もう巻き込まれるのは沢山だから」
「そう…」
マイニーもパリム子爵家のことは聞いている。
「マリオス様には話してもいいわ、どうせいずれ分かることだから」
「でも…」
「隠し事は夫婦にはよくないわ」
「分かった…」
マイニーは帰って来たマリオスに話した。マリオスもシエルの過去は知らなかったので驚き、関わりたくないという気持ちもよく分かった。
シエルはルノーにマイニーに会ってしまい、妊娠がバレて、ルノーが父親であること、結婚はしないことを話した。マリオスにも伝わっているということ、番であることは話していないことを文に書いて送った。
だが、読む前にマリオスがルノーに会いに来ていた。
「シエル嬢のことを聞いた、ルノーはそれでいいのか?」
「聞いた?」
「マイニーが偶然会ったんだ」
「そうか…でもこれが最善なんだ」
「シエル嬢の生まれのことは聞いた。巻き込まれたくないというのは、我々ほど理解が出来る者はいないだろうというほど、理解が出来る。パリム子爵も当時は話題になったらしい」
「そうなのか?」
調べようかとも思ったが、知ったところで何か出来るわけではないので、勝手に詮索するのは控えた。
「ああ、祖父母に聞いたが、番に出会う前は、本当に仲のいい家族だったらしい。おそらく子爵は両方欲しかったんだろうな…だが、愛人が乗り込んで来て、母君は実家に戻られたそうだ。侯爵家がよく殺さなかったというくらいの話だったらしい」
「殺す?」
「そりゃそうだろう、亡くなったのは心労のせいだろう」
「亡くなっているのか…」
母親のことは聞いていなかった、まさか既に亡くなっていたとは思わなかった。憎しみは俺たちより強いだろう。
「ああ、シエル嬢によく似た美しい方だったらしい。格上の美しき令嬢を殺したと、子爵家は年々没落に近付いていっているという話だ。息子と娘がいるが、これまた番主義の厄介者らしい」
「知らなかった…」
「番探しのパーティーにもよく出席していたよ、番が見付かれば、どんな人でも愛してくれるからと我儘放題らしい」
番だったら何でも与えてくれるからと、番を求める者もいる。
確かに相手が気に入れば、番だからと愛してくれるかもしれないが、薄まりつつある中で、拒否されるという選択肢を相手が持っていることに気付かない。
まともな価値観を持っていてれば、言わずに離れた方が懸命だろう。
「既に逃げられている可能性もあるな」
「ああ、マイニー曰くシエル嬢と、血の繋がりがあるとは信じられない物体だそうだ。シエル嬢にとっては、口に出すのも嫌だろうからな。マイニーも私にシエル嬢の事情を勝手に話すわけにはいかず、黙っていたが、心苦しいこともあったと言っていた。申し訳ないことをした…だが、子どもは別だろう?いいのか?」
「たまに会わせてもらうことになっている、それでいい」
「いっそ番だったら、良かったんじゃないか」
「は?」
マリオスは何を言っているんだ?番だったら?あんなに苦しみ、今でも苦しめられているというのに、番を持つとそんな言葉が出て来るのか。
「だってそうだろう?シエル嬢が番なら愛せばいいじゃないか」
「本気で言っているのか?」
「送らせた?」
「私が送らせたのよ、あの男なら大丈夫だと思って…ごめんなさい…私の責任もあるじゃない」
「それは自己責任よ、マイニーのせいじゃないわ」
「でも…酔っていないと思っていたけど、あの男、顔に出ないのね」
シエルは番だから、マイニーはルノーなら据え膳食ったのねと思っている。
「一人で育てるなんて大変よ」
「ええ、でもそうしたいの…正直、もう巻き込まれるのは沢山だから」
「そう…」
マイニーもパリム子爵家のことは聞いている。
「マリオス様には話してもいいわ、どうせいずれ分かることだから」
「でも…」
「隠し事は夫婦にはよくないわ」
「分かった…」
マイニーは帰って来たマリオスに話した。マリオスもシエルの過去は知らなかったので驚き、関わりたくないという気持ちもよく分かった。
シエルはルノーにマイニーに会ってしまい、妊娠がバレて、ルノーが父親であること、結婚はしないことを話した。マリオスにも伝わっているということ、番であることは話していないことを文に書いて送った。
だが、読む前にマリオスがルノーに会いに来ていた。
「シエル嬢のことを聞いた、ルノーはそれでいいのか?」
「聞いた?」
「マイニーが偶然会ったんだ」
「そうか…でもこれが最善なんだ」
「シエル嬢の生まれのことは聞いた。巻き込まれたくないというのは、我々ほど理解が出来る者はいないだろうというほど、理解が出来る。パリム子爵も当時は話題になったらしい」
「そうなのか?」
調べようかとも思ったが、知ったところで何か出来るわけではないので、勝手に詮索するのは控えた。
「ああ、祖父母に聞いたが、番に出会う前は、本当に仲のいい家族だったらしい。おそらく子爵は両方欲しかったんだろうな…だが、愛人が乗り込んで来て、母君は実家に戻られたそうだ。侯爵家がよく殺さなかったというくらいの話だったらしい」
「殺す?」
「そりゃそうだろう、亡くなったのは心労のせいだろう」
「亡くなっているのか…」
母親のことは聞いていなかった、まさか既に亡くなっていたとは思わなかった。憎しみは俺たちより強いだろう。
「ああ、シエル嬢によく似た美しい方だったらしい。格上の美しき令嬢を殺したと、子爵家は年々没落に近付いていっているという話だ。息子と娘がいるが、これまた番主義の厄介者らしい」
「知らなかった…」
「番探しのパーティーにもよく出席していたよ、番が見付かれば、どんな人でも愛してくれるからと我儘放題らしい」
番だったら何でも与えてくれるからと、番を求める者もいる。
確かに相手が気に入れば、番だからと愛してくれるかもしれないが、薄まりつつある中で、拒否されるという選択肢を相手が持っていることに気付かない。
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「既に逃げられている可能性もあるな」
「ああ、マイニー曰くシエル嬢と、血の繋がりがあるとは信じられない物体だそうだ。シエル嬢にとっては、口に出すのも嫌だろうからな。マイニーも私にシエル嬢の事情を勝手に話すわけにはいかず、黙っていたが、心苦しいこともあったと言っていた。申し訳ないことをした…だが、子どもは別だろう?いいのか?」
「たまに会わせてもらうことになっている、それでいい」
「いっそ番だったら、良かったんじゃないか」
「は?」
マリオスは何を言っているんだ?番だったら?あんなに苦しみ、今でも苦しめられているというのに、番を持つとそんな言葉が出て来るのか。
「だってそうだろう?シエル嬢が番なら愛せばいいじゃないか」
「本気で言っているのか?」
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