【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ

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私の恋、あなたの愛

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 ルノーを嬉しそうに見つめる両親であるルーカン・ウィローとソフィー・ウィロー、そしてデビット・サンドールとマリア・サンドール。

 ルノーは正直動揺した。人払いをしていたので、シエルと話していた内容は洩れていないはずだが、まさかこっそり聞いていたのか?

 その割には父・ルーカンは断定している言い方ではなく、疑問形だった。冷静に話さなければならないと思った。

「結婚したい相手が出来たのだろう?番じゃないのか?」
「は?どうしてそんな話に?」
「それはお前はずっと色んな女性と交際していたようだが、止めたと聞いている」
「パーティーでは聞いていないけど、別で番が見付かったんじゃない?」

 番探しのパーティーは見付かると家族にも伝えられるようにすることも出来る。だからこそ、ルノーはパーティーには参加していた。

 マリオスとマイニーもすぐさまサンドール侯爵家に伝わっていた。

 ルリアーナは番ではない、幼なじみと何年も前から婚約しており、マリオスよりも先に結婚をしている。それをこの四人はどうして番を見付けないのかと、ルリアーナを責めたという。

「はあ…違うよ」
「違うのか…」
「相手が皆、結婚してしまっただけだよ」

 あの子爵令嬢は例外だったか、ほとんど結婚しているのは事実だ。

「見付かったと思って皆で押し掛けて来たのか」

 気まずそうに番の顔を見合わせている、結婚している相手ではないのが、また気味が悪い。

「お前だって番が見付かれば、気持ちが変わるさ」
「そうだ、マリオスだってそうだろう?あんなに幸せそうにしているんだぞ?」
「それで幼なじみと想い合っているルリアーナ嬢に詰め寄ったのか?」

 番探しのパーティーに参加することもなく、幼なじみと婚約すると言ったルリアーナに、祖父母は賛成したが、両親は番探しをするべきだと、言い出したそうだ。

 爵位はサンドール侯爵家もウィロー伯爵家も、父親を飛ばして、祖父から孫に譲られることになる。そこは四人も今の生活のために理解している。

 ゆえにルノーもそろそろ結婚するように祖父母からは言われている。

「番の方が安心できると思ってだ」
「安心?だったら、もしあなたたち四人ではなく、片方だけに見付かっていたら、どうしていた?」

 シエルのようなこともある、もし父に母にだけ番が見付からなかったら、四人はどうしていたか、今の様に笑えていただろうか。

 同じ条件で依存関係に近い四人だからこそ、勝手に成り立っているだけだ。

「それは…然るべき処置を取ったさ」
「然るべきっていうのは、困らない金銭を渡して別れるっていう意味か?」
「そうだ…」
「番に有利なことだよな…同じ人なのに。捨てられたかもしれないとは思わないから、四人は歪でも伴侶を捨てていないから罪悪感が少ない」
「私たちだって葛藤があったわ」
「でも番を選んだ、そうだろう?選ばない選択も出来たはずだ」

 俺が言っても説得力がないかもしれないが、抑制剤を服用して、今の伴侶と夫婦を続ける選択肢もあったはずだ。

「お前は何が言いたいんだ!」
「俺は番は要らない、もう遊びも止めたからパーティーも行くのを止めるよ」
「っな」
「もし、見付かっても同じことが言えるかしら?」
「言えるさ!もう振られてしまったからな」

 父の番であるマリアの言い方に苛立ち、思わず言ってしまったが、相手が誰かは四人には分かることはないだろう。

「は?」
「見付かっていたというの?」
「ああ、もう何年も前に見付かっている。それで振られている」
「じゃあ、パーティーに行っていたのは…」
「君らが番、番とうるさいからだよ」

 マリアは呆然として、言葉を失っており、溜飲が下がった。
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