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私の恋、あなたの愛

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 卒業式で久し振りに見たシエルは誰よりも輝いていた。

 元々、派手で目立ってしまうが、今日はより一段と輝いていた。親しそうに男性と話す姿を見掛けると、怒りで体が震えた。

 だが、大丈夫。さらに会うこともなくなるだろう。

 ルノーは王宮で文官として働き始め、シエルも医院で看護師として働いている。マイニーはやはり働きに行かせてもらえなかった。

 ルノーはまだ番が見付かっていない振りを続けていた。この前の番探しのパーティーは信じられないことが起き、ますます馬鹿馬鹿しくなった。

 一緒に参加していた従兄弟のリリオン・ロットから、この子がルノーの番ではないかと連れてやって来た。彼女は前に関係を持ったことのある女性だった。

「いつも会う時は抑制剤を服用していたから、分からなかったでしょう?」
「違うね」
「っえ」

 あり得ないのに、酷く驚いた顔をしていて、こちらが驚きたいほどであった。可愛い女の子の一人だったはずが、会わなくなっておかしくなったのだろうか。

「どうして?リリオンもなぜ彼女だと?」
「本人がそう言ったからだけど?違うの?」
「違う、なぜそんな風に思ったんだ?君は優生者かい?」

 彼女はメルビアン・トラーソ子爵令嬢。一時期、何度か関係を持ったが、最近は会うこともなかった。

 前から派手ではなく、清楚な雰囲気ではあったが、同じように快楽優先で、遊んでいたようだったが、なぜ今さらそんなことを言い出したのだろうか。

「ええ、そうよ!私はあなたが番だと思ったの」
「優生者なのに抑制剤を服用せずに、ここへ来たのかい?」
「えっと、それは」

 自分が優生者だと公表する必要はないが、番探しのパーティーでは抑制剤を服用していないことは、禁止事項に触れることになる。

 優生者は男女問わず現れるが、男性の方が多いと言われている。優生者は血液検査で確かめ、見合った抑制剤を処方して貰う。優生者でない者は市販薬でも十分だとされているが、貴族は処方してもらうものの方が多い。

 優生者同士の番は、互いに惹かれあうため、絆は強いと言われている。

「詐欺でもしようとしているの?」
「違うわっ!」
「じゃあ何?君は番じゃないし、どうして番だと思えるんだ?」
「だって体の…相性が良かったじゃない」
「それだけで?」
「はあ、あり得ないね。君がルノーの番かもしれないって言うから、連れて来たのに、詐欺師だったの?最悪だよ。ルノー、悪かったね」

 リリオンが彼女を連れて行ってくれたが、おそらく優生者ではないのに、なぜそんなことを言い出したのか。

「悪かったな、どうやら周りが結婚して、焦って参加したけど、ルノーを見付けて咄嗟に言い出したらしい。優生者ではないから、どう感じるのかが全く分かっていなかったらしい。主催者の方に伝えておいたから、もう参加出来ないだろう」
「そうか」
「いや、あれがお前の相手だったら、ちょっとルノーには悪いけど、ざまあないなって思ったんだよ」
「喧嘩を売っているのか?」
「違う違う、番は素晴らしいと言ってさ、あれだったら、これかよって思うだろう?あんなに執着した番が、俺にはこれでしたてさ、言えるじゃん?」
「ああ…そういうことか、確かにそれならざまあないな」

 軽薄そうに見えるリリオンだが、感受性は豊かである。自分は番を求めているが、それはそれだとしっかり思っている。

「複雑なところだけどな、いい相手であって欲しいと同時に、否定したい相手だったらって。マリオス様は幸せを選んだけど、複雑ではあっただろうしな」
「幸せそうだったよ」
「まあ、それもいいと思う」

 マリオスの結婚式で、シエルと半年振りに会うことになるだろう。
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