24 / 103
私の恋、あなたの愛
1
しおりを挟む
目の前にいるのは、黒髪で青い目をした、柔らかい笑顔をする男性。
選択の授業で隣の席になり、意気投合して友人になった。一緒に食事をしたり、勉強をしたり、同じ時間を過ごす内に、気が付くと好きになってしまっていた。
好きなってはいけない人だったのに。
言わずに友人のまま居続けることも出来たが、さすがに口にはしないけど、女性の元へ向かう彼の背中を見るのは、辛くなっていった。
「あなたを好きになってしまったの…でも、あなたは望まないわよね」
「ごめん…」
「そうよね」
「僕を好きになるなんて、趣味が悪いよ…シエルだって知ってるだろう?割り切った相手になりたいわけじゃないだろう?」
「うん、でも言いたかったの」
「シエルは友人として、付き合いたい人だよ」
「聞いてくれてありがとう」
答えは分かっていた、でも彼の口から聞きたかった。初恋は叶わないと言うけど、二度目の恋も叶わないじゃない。
シエル・フロランツア。ピンクブロンドの髪にアンバーの瞳。
母と叔父が同じ色なので、嫌いだとは言わないが、目立ちたくないのに、とても目立つ。母は既に亡くなっており、ずっと叔父と一緒にいるわけにはいかない。叔父と一緒にいたところでも、多少は分散されるだけで、目立つことに変わりはない。
ルル王国は獣人を先祖に持つ、比較的自由な国である。
王族は絶対ではないが、処女性を求め、処女ではなかった場合は監視が付けられることになる。
王族に相応しい爵位の令嬢たちは純潔であろうとするが、その他の令嬢は恋人を作り、関係を持つことも比較的自由である。
元々は男性が獣人の影響か、性欲が強く奔放なものが多く、女性だけがどうして守り続けなくてはいけないのかと、避妊薬が出来てからは令嬢たちも、恋人と関係を持つことは増えていった。
もはや初夜が初めてという女性は王家だけだろう。
だがそんなルル王国でも、恋人だけではなく、数多の相手と関係を持つ、同時進行で関係を持つことは良くない相手とされる。
シエルが告白をした相手、ルノー・ウィローもその良くない相手だった。
ルノーと友人として過ごしている内に、知らない女性が親しそうにやって来ることがあった。相手は様々で私をじっと見る人もいたが、私に牽制するようなことはなく、邪魔してごめんねという風に去っていく人もいた。
同じ友人だと思っていたら、ある日、友人であるマイニー・ヴィオスから聞かされることになった。
「ルノー・ウィローは関係を持つ相手が何人もいるそうよ。大丈夫?」
「ええっ」
「そんな風には見えないから、そんな人じゃないと思いたいのは分かるけど、好きになっても苦労するだけよ」
「そうよね…」
「やっぱり、好きになりかけていたんでしょう?」
「うん…あの女の人たちはそういうことだったんだ」
ルノーは女好きのプレイボーイ、女の食い散らかすクズ男のような雰囲気ではなく、静かで女性を口説くようなところを想像が出来ないような人だった。
「どんな顔して、誘うんだろう…」
「想像しない!」
「でも、どうせ来年には会うこともなくなるだろうし」
「まあそうよね、それまでって言うのなら」
シエルもマイニーも、医療看護科に進むため、学舎自体が違う。ルノーとは会う約束をしなければ、会うことはなくなることになる。
「ちょっと考えてみる」
そうは言ったものの、結局シエルは口に出してしまった。
親しくなったから、気が合うねって言ってくれたから、もしかしたらという希望も一応持っていたが、あえなく失恋することになった。
「失恋しちゃった」
「言っちゃったのね…」
「でもこれで迷いなく、勉強を頑張るわ!」
「またいい人に出会えるわよ」
それからシエルはルノーと会っても距離を取り、新しい学年を迎えて、学舎が変わって、物理的に会うこともなくなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
新しいお話です。
下書きを書いている番作品が、前の話に近いものばかりだったので、
(多分、すごく好きなタイプなんだと思います…すみません)
近い話が続くのは面白くないだろうと思い、
ほぼ下書きがない作品に着手しています。
せめて1日1話は投稿していきたいです!頑張ります。
どうぞよろしくお願いいたします。
選択の授業で隣の席になり、意気投合して友人になった。一緒に食事をしたり、勉強をしたり、同じ時間を過ごす内に、気が付くと好きになってしまっていた。
好きなってはいけない人だったのに。
言わずに友人のまま居続けることも出来たが、さすがに口にはしないけど、女性の元へ向かう彼の背中を見るのは、辛くなっていった。
「あなたを好きになってしまったの…でも、あなたは望まないわよね」
「ごめん…」
「そうよね」
「僕を好きになるなんて、趣味が悪いよ…シエルだって知ってるだろう?割り切った相手になりたいわけじゃないだろう?」
「うん、でも言いたかったの」
「シエルは友人として、付き合いたい人だよ」
「聞いてくれてありがとう」
答えは分かっていた、でも彼の口から聞きたかった。初恋は叶わないと言うけど、二度目の恋も叶わないじゃない。
シエル・フロランツア。ピンクブロンドの髪にアンバーの瞳。
母と叔父が同じ色なので、嫌いだとは言わないが、目立ちたくないのに、とても目立つ。母は既に亡くなっており、ずっと叔父と一緒にいるわけにはいかない。叔父と一緒にいたところでも、多少は分散されるだけで、目立つことに変わりはない。
ルル王国は獣人を先祖に持つ、比較的自由な国である。
王族は絶対ではないが、処女性を求め、処女ではなかった場合は監視が付けられることになる。
王族に相応しい爵位の令嬢たちは純潔であろうとするが、その他の令嬢は恋人を作り、関係を持つことも比較的自由である。
元々は男性が獣人の影響か、性欲が強く奔放なものが多く、女性だけがどうして守り続けなくてはいけないのかと、避妊薬が出来てからは令嬢たちも、恋人と関係を持つことは増えていった。
もはや初夜が初めてという女性は王家だけだろう。
だがそんなルル王国でも、恋人だけではなく、数多の相手と関係を持つ、同時進行で関係を持つことは良くない相手とされる。
シエルが告白をした相手、ルノー・ウィローもその良くない相手だった。
ルノーと友人として過ごしている内に、知らない女性が親しそうにやって来ることがあった。相手は様々で私をじっと見る人もいたが、私に牽制するようなことはなく、邪魔してごめんねという風に去っていく人もいた。
同じ友人だと思っていたら、ある日、友人であるマイニー・ヴィオスから聞かされることになった。
「ルノー・ウィローは関係を持つ相手が何人もいるそうよ。大丈夫?」
「ええっ」
「そんな風には見えないから、そんな人じゃないと思いたいのは分かるけど、好きになっても苦労するだけよ」
「そうよね…」
「やっぱり、好きになりかけていたんでしょう?」
「うん…あの女の人たちはそういうことだったんだ」
ルノーは女好きのプレイボーイ、女の食い散らかすクズ男のような雰囲気ではなく、静かで女性を口説くようなところを想像が出来ないような人だった。
「どんな顔して、誘うんだろう…」
「想像しない!」
「でも、どうせ来年には会うこともなくなるだろうし」
「まあそうよね、それまでって言うのなら」
シエルもマイニーも、医療看護科に進むため、学舎自体が違う。ルノーとは会う約束をしなければ、会うことはなくなることになる。
「ちょっと考えてみる」
そうは言ったものの、結局シエルは口に出してしまった。
親しくなったから、気が合うねって言ってくれたから、もしかしたらという希望も一応持っていたが、あえなく失恋することになった。
「失恋しちゃった」
「言っちゃったのね…」
「でもこれで迷いなく、勉強を頑張るわ!」
「またいい人に出会えるわよ」
それからシエルはルノーと会っても距離を取り、新しい学年を迎えて、学舎が変わって、物理的に会うこともなくなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
新しいお話です。
下書きを書いている番作品が、前の話に近いものばかりだったので、
(多分、すごく好きなタイプなんだと思います…すみません)
近い話が続くのは面白くないだろうと思い、
ほぼ下書きがない作品に着手しています。
せめて1日1話は投稿していきたいです!頑張ります。
どうぞよろしくお願いいたします。
393
お気に入りに追加
1,868
あなたにおすすめの小説
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】
青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。
そして気付いてしまったのです。
私が我慢する必要ありますか?
※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定!
コミックシーモア様にて12/25より配信されます。
コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。
リンク先
https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/
だから言ったでしょう?
わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。
その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。
ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~
春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。
6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。
14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します!
前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。
【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる