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愛してはいけない人
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「奥様が妊娠されました」
「は?病気だと…」
「本当ですよ、坊ちゃま。父親になれるのですよ」
ミクサーは再び涙を流しており、これでまた家族が出来ると胸が一杯だった。
「レイラは大丈夫なのか」
「驚いてらっしゃったようですが、最後は笑ってらしたと医師が申しておりました」
おめでとうございますと声が上がり、クノルも喜びを抑えきれなかった。
だが、冷静になってみると、産まない可能性もあるのではないかと考えた。レイラは記憶になくても、襲われたようなものだろう。
そのような形で妊娠した子どもを産んでくれるのだろうか。
休んでいると聞いていたので、訪ねることは控え、夕食に現れるレイラを待つことにした。レイラはいつもと変わらなかった。
「子どもが出来たと聞いた。どうか産んでもらえないだろうか」
「ええ、産みます」
「本当か、ありがとう」
クノルもようやくホッとし、その場にいた使用人も、おめでとうございますと、声を上げた。
「ただお願いがありますの」
「ああ、何でも言ってくれ」
「避妊薬が粗悪品だったことは、製造元に伝えて貰えますか」
「え」
「効果がなかったから、妊娠しているのでしょう?これは問題ですよ」
確かに避妊薬を服用させて欲しいと、レイラが言っていることは事前に聞いていた。その後、確認はしていないが、服用させたのだと思っていた。
ゆえに妊娠しているとは思っていなかった。先程まではせめて治る病気であって欲しいと願っていたのだ。
だが、どうして妊娠したのだと思っていることは伝わった。やはりレイラにとっては望んでいなかったことが、当たり前だがショックだった。
「…ああ、そうだな、きちんと伝えておく」
「よろしくお願いいたします。あと、私はこの体ですので、どうなるか分かりません。ですので産み月近くまでは妊娠を黙っておいて欲しいのです」
「それは問題ない」
レイラはいつも通りに食事をして、部屋に戻っていった。
「サイワ、箝口令と、あと避妊薬の製造元を調べてくれ」
「承知しました」
サイワはレイラの妊娠はさらに不安定になる恐れがある、産み月近くまで洩らさないように伝え、使用人も発表すれば、お祝いが届いたりと、奥様の煩わせることになることは容易に想像が出来たため、気を引き締めた。
執事室でサイワが避妊薬の製造元を確認していると、ミクサーが訪ねて来た。
「サイワ様、お話があります」
「ミクサー?どうした?」
「実は、避妊薬を飲ませなかったのです」
「は?服用させたと言ったじゃないか」
あの日、ミクサーが事後の世話をして、避妊薬を服用させた。空の小瓶も確認をしたはずだ。先程調べるように聞いて、白状したのだろう。
「言わないつもりだったのか?」
「いつか言うつもりでした」
「どうして…いや、今となってはどうしてとも言い難いが、クノル様に子どもが出来ればと思ったのか?」
「…はい、奥様のお気持ちはどうにもならないことは、分かっております。でも子どもがいればと、おそらく血の抑制剤を作られると思ったものですから」
確かに血の抑制剤を服用すれば、奥様でなくともいいということになる。もちろん、服用して共に暮らすことも可能ではあったが、これで奥様はレンバー伯爵家にいずれ帰ってしまうと思っていた。
「ああ、どうすればいいのか…」
「罰ならば私がいくらでも受けます」
「クノル様には伝えます。判断を仰いで、奥様にはお伝えするかどうかだな…ああ、怒るに怒れない」
「申し訳ありません」
サイワはミクサーが誰よりもクノル様に、家族を作って欲しいと思っていることは理解していた。ミクサーに任せるべきではなかったという思いと、だからこそ子どもが出来たことと、複雑な心境だった。
ミクサーを連れて、クノル様の元へ向かった。
「は?病気だと…」
「本当ですよ、坊ちゃま。父親になれるのですよ」
ミクサーは再び涙を流しており、これでまた家族が出来ると胸が一杯だった。
「レイラは大丈夫なのか」
「驚いてらっしゃったようですが、最後は笑ってらしたと医師が申しておりました」
おめでとうございますと声が上がり、クノルも喜びを抑えきれなかった。
だが、冷静になってみると、産まない可能性もあるのではないかと考えた。レイラは記憶になくても、襲われたようなものだろう。
そのような形で妊娠した子どもを産んでくれるのだろうか。
休んでいると聞いていたので、訪ねることは控え、夕食に現れるレイラを待つことにした。レイラはいつもと変わらなかった。
「子どもが出来たと聞いた。どうか産んでもらえないだろうか」
「ええ、産みます」
「本当か、ありがとう」
クノルもようやくホッとし、その場にいた使用人も、おめでとうございますと、声を上げた。
「ただお願いがありますの」
「ああ、何でも言ってくれ」
「避妊薬が粗悪品だったことは、製造元に伝えて貰えますか」
「え」
「効果がなかったから、妊娠しているのでしょう?これは問題ですよ」
確かに避妊薬を服用させて欲しいと、レイラが言っていることは事前に聞いていた。その後、確認はしていないが、服用させたのだと思っていた。
ゆえに妊娠しているとは思っていなかった。先程まではせめて治る病気であって欲しいと願っていたのだ。
だが、どうして妊娠したのだと思っていることは伝わった。やはりレイラにとっては望んでいなかったことが、当たり前だがショックだった。
「…ああ、そうだな、きちんと伝えておく」
「よろしくお願いいたします。あと、私はこの体ですので、どうなるか分かりません。ですので産み月近くまでは妊娠を黙っておいて欲しいのです」
「それは問題ない」
レイラはいつも通りに食事をして、部屋に戻っていった。
「サイワ、箝口令と、あと避妊薬の製造元を調べてくれ」
「承知しました」
サイワはレイラの妊娠はさらに不安定になる恐れがある、産み月近くまで洩らさないように伝え、使用人も発表すれば、お祝いが届いたりと、奥様の煩わせることになることは容易に想像が出来たため、気を引き締めた。
執事室でサイワが避妊薬の製造元を確認していると、ミクサーが訪ねて来た。
「サイワ様、お話があります」
「ミクサー?どうした?」
「実は、避妊薬を飲ませなかったのです」
「は?服用させたと言ったじゃないか」
あの日、ミクサーが事後の世話をして、避妊薬を服用させた。空の小瓶も確認をしたはずだ。先程調べるように聞いて、白状したのだろう。
「言わないつもりだったのか?」
「いつか言うつもりでした」
「どうして…いや、今となってはどうしてとも言い難いが、クノル様に子どもが出来ればと思ったのか?」
「…はい、奥様のお気持ちはどうにもならないことは、分かっております。でも子どもがいればと、おそらく血の抑制剤を作られると思ったものですから」
確かに血の抑制剤を服用すれば、奥様でなくともいいということになる。もちろん、服用して共に暮らすことも可能ではあったが、これで奥様はレンバー伯爵家にいずれ帰ってしまうと思っていた。
「ああ、どうすればいいのか…」
「罰ならば私がいくらでも受けます」
「クノル様には伝えます。判断を仰いで、奥様にはお伝えするかどうかだな…ああ、怒るに怒れない」
「申し訳ありません」
サイワはミクサーが誰よりもクノル様に、家族を作って欲しいと思っていることは理解していた。ミクサーに任せるべきではなかったという思いと、だからこそ子どもが出来たことと、複雑な心境だった。
ミクサーを連れて、クノル様の元へ向かった。
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