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愛してはいけない人

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 もう一通は日常生活のことではなく、愛するお嬢様を思う一方で、どうにか生きて欲しいという精神的な注意事項であった。

 ―――――――――――――――――――――
 メイドの分際がこのような手紙を失礼いたします。

 レイラお嬢様の注意すべきこと、いえ、死なせないための言葉だと思い、婆の遺言だと思い、お読みいただけると幸いです。

 御主人様もお辛かったと思いますが、私は一番関わってしまったのはお嬢様だと思っております。

 現場に遭遇し、弟君を守ろうとし、殴られて踏み付けられて、足を怪我されて、それでも弟君を連れ帰られましたが、母を守れなかったことを悔いて、自分の責任だと、何とか守ろうとしておりましたが、弟君も助けられず、お嬢さまは変わりました。おそらく、怒りの感情以外は全て無くなったように思います。

 楽しい、嬉しい、悲しいもです。涙は本人の感情無く、流れているものです。

 私はレンバー家が大好きでした。あんなことがなければと、思わなかった日はありません。

 お嬢様は私は狂気を飼っていると仰います。私も止めなくてもいいのではないかという気持ちでおりました。

 お嬢様がこれ以上、苦しまぬようにお願いします。

 ・気の乗らないことを、無理やり、何かをさせたりしないこと。自傷もしくは、最悪の場合は自死されます。

(気晴らしと言って連れ出した時に、絶壁から落ちようとなさいました。邸の2階以上の窓は全て鉄格子が付いております)
(刺繍をおすすめした時に、気付くと手にずっと針を刺してらっしゃいました)

 ・嫌だというものには素直に受け入れること。自傷もしくは、最悪の場合は自死されます。

(少しだけでも栄養のあるものをと食事を変えた時に、3日間も腹痛となり、痛い死にたいと喚き、爪で顔や体中をひっかき、結局3日間食事を取れませんでした)
(どうしてもという茶会に参加した時に、皆に慰められる言葉を掛けられ、同じ目に遭ったことがあるのか、死ぬ以外に抜け出す方法はあるのか、どうしたら苦しくなくなるのかと詰め寄りました、帰りの馬車から身を投げようとされました)

 ・ご家族を絶対に知ったように振舞ったり、蔑んだり、咎めた言い方をしないこと。最悪の場合は殺されます。

(ご家族を知りもしない方に言われることをとても嫌います)
(お母様をよく思ってらっしゃらなかった方に、彼女も彼女だと言われて、どこにそんな力があったのかというほど飛び掛かって、仕留めようとしたことがあります。悪いのはあちらなので、罰されることはありませんでした)
 ―――――――――――――――――――――

 キア皇国に着いたレイアに邸を案内し、使用人全員に既にグラウス・オルダックの被害者だと伝えてあった。ロアス王国では悲劇の伯爵家だったが、キア皇国ではグラウス・オルダックの惨劇と呼ばれている。

 非常に精神面が危うい状態だと、何をきっかけに狂うか分からないこと、もし関わりたくない、守れないという者は紹介状を書くから退職するように話した。

 誰も退職しなかったが、番が見付かったことは嬉しいが、お相手にどう接すればいいのか分からなかったが、ほとんど接することはないと告げられ、ホッとした。

 結婚式も皇太子と王女は既に結婚して、大体的に行われたが、レイラは不特定多数の知らない人に会うこと、しかも獣人が多いとなれば、何が起こるか分からない。邸に行く前に教会で署名だけ行い、結婚したということだけが発表された。

「どうだ、様子は」
「おそらく、悪くはない、と思います。注意事項に触れぬように距離を取って接しております」
「使用人たちの言動にも気を付けて、そのまま穏やかに過ごさせてやってくれ」
「は!」
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